呼吸器外科

呼吸器外科

診療内容

2016年4月より呼吸器外科が開設いたしました。呼吸器外科は、

  • 肺腫瘍性疾患:肺がん、転移性肺腫瘍、肺良性腫瘍
  • 縦隔の疾患:縦隔腫瘍、重症筋無力症、神経原性腫瘍
  • 胸壁・胸膜の疾患:胸膜中皮腫、胸壁腫瘍
  • 気胸、膿胸(のうきょう)、肺化のう症、胸部外傷

などの手術を受け持っています。 現在呼吸器外科専門医の2名を中心にこれらの手術を行っています。
2016年4月~12月間で手術数は、

  • 肺悪性腫瘍 54例
  • 気胸 11例
  • 縦隔腫瘍 7例
  • その他 3例

で、だいたい月11~12例のペースで手術を行っています。

診療方針

呼吸器内科医、呼吸器外科医、放射線診断医、放射線治療医からなる呼吸器カンファレンスで多角的に検討し、最新の知見に基づいて治療法を決めています。 治療ガイドラインで推奨される治療法を基本にしていますが、年齢、体力など患者さんの因子、家族状況など患者さんを取り巻く因子、患者さんの希望等を考慮してそれぞれの患者さんにとって最良の治療法を選ぶようにしています。 また胸腔鏡(カメラ)の手術を積極的に行い病気の根治性も考えながらも患者さんに優しい手術を心がけています。

当科の特徴

肺がんは高齢者に多い病気であり、肺がん以外にも高血圧、糖尿病、狭心症など他疾患を持っている患者さんが多く、手術に際しこれらの疾患の治療が必要な場合も多くあります。また手術の麻酔は特殊な技術を必要とし肺がんの麻酔は通常の手術より危険を伴います。このように肺がんの手術は担当外科医の能力だけではなく循環器科、麻酔科など他科の助けが必須であり病院の総合力が大きくものを言う分野です。当院は総合病院であり、麻酔科、循環器内科その他の科のサポート体制は完璧であり、この長所を生かし手術を行っています。

スタッフ紹介

澤田 茂樹

第一呼吸器外科部長
卒業年

H2

専門領域

呼吸器外科・肺癌

認定医・専門等資格名

呼吸器外科専門医
日本外科学会専門医・指導医
日本呼吸器外科学会評議員
日本内視鏡外科学会評議員
がん治療認定医機構がん治療認定医
肺がんCT検診認定医師
岡山大学医学部臨床准教授

     
  • 水谷 尚雄

    第二呼吸器外科部長
    卒業年

    H3

    専門領域

    呼吸器外科

    認定医・専門等資格名

    呼吸器外科専門医
    日本外科学会専門医・指導医
    日本呼吸器外科学会評議員
    日本胸部外科学会胸部外科認定医(呼吸器)
    日本呼吸器学会呼吸器専門医
    肺がんCT検診認定医師
    インフェクションコントロールドクター(ICD)
    日本医師会認定産業医

 

肺がんについて

肺がんは、日本において罹患数・死亡数ともに増加傾向にあり、男女合計の死亡数は1998年以降、がん死亡原因の第一位を占めます。肺がんによる死亡者数は、2011年には7万人に達し、2012年では71518人でした。60歳代から70歳代が好発年齢であり、この2つの年代で約70%を占めます。 肺がん発生の危険因子としては、喫煙、大気汚染、高齢、アスベスト暴露などがあげられます。しかし近年非喫煙者の肺がん、特に腺がんが増加していることが特徴であり、喫煙による肺がんと、非喫煙による肺がんでは、発生学的遺伝子背景が異なることが示唆されます。

肺の解剖

レントゲン写真で見ると肺は右左一つずつのように見えますが、実際は右が上葉、中葉、下葉、左が上葉、下葉の合計5つの肺葉に分かれています。




肺がんの特徴

初期はなかなか症状が出ないことが多く、発見されたときには進行がんで見つかることが多いがんです。いろいろな臓器に遠隔転移(がん細胞が血液に入って流れて行き、離れた臓器に転移をつくること)をおこしやすいです。肺がんが遠隔転移をおこしやすい臓器としては肺、脳、骨、肝臓、副腎などが代表的です。

肺がんの組織型

肺がんは大きく「非小細胞肺がん」と「小細胞肺がん」に分けることが出来ます。非小細胞肺がんはさらに「腺がん」、「扁平上皮がん」、「大細胞がん」、「腺扁平上皮がん」などに分けることが出来ます

1.非小細胞肺がん
(ア)

腺がん
腺がんは肺の末梢に発生するがんの代表的なもので、非喫煙者の女性もかかるがんです。肺がん全体の60%を占め、肺がんの中では最も発生頻度の高いがんで、近年非常に増加してきています。

(イ)

扁平上皮がん
扁平上皮がんは喫煙と関連の深いがんです。圧倒的に男性に多く、肺がん全体の約20%を占めます。

(ウ)

その他
大細胞がん、腺扁平上皮がんなどがあります。


2.小細胞肺がん

小細胞がんは生物学的な悪性度が高く、発見時には進行がんであることが多いため、よほどの早期で発見されない限り手術の対象になることはありません。その代わり、小細胞がんは抗がん剤と放射線治療が非常によく効きますので、これらを併用するのが一般的です。

治療上の組織分類

小細胞肺がんは他の肺がんとは治療方針が大きく異なるために別扱いをします。それに対して腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんなどは、それぞれの中で微妙な違いはあるものの基本的には同じ治療方針のため、これらを小細胞肺がんに対して非小細胞肺がんとまとめて扱うこともあります。

診断方法

肺がんの確定診断のためには組織学的にがん細胞を証明することが必要です。このために下記のような検査を行います。

(ア)

喀痰細胞診
喀痰を採取しその中にがん細胞がいるかを検査する方法です。

(イ)

気管支カメラ
気管支カメラ下に病変をブラシなどでこすってきたり、あるいは鉗子で組織を採取しがん細胞の有無を検査します。気管支カメラの正診率は約70%と言われています(がんよりがん細胞を採取できる確率が70%、逆に言うと、がんがあるのにがんの診断が出来ないことが約30%あります)



当院では気管支カメラの診断率を上げるために胸部CT画像をコンピューターで再処理しその再構成画像を参考にしながら気管支カメラを行うバーチャル気管支カメラナビゲーションを行っています。これにより肺の端にある小さな病変まで組織診断が出来るように工夫しています。また気管、気管支周囲のリンパ節転移の診断のために超音波ガイド下リンパ節生検(EBUS-TBNA)を行い正確な病期診断に努めています。 よく気管支鏡検査は非常に苦しいといわれますが、当院は喉に局所麻酔剤をよく効かせてさらに薬で寝てもらって検査を行いますので、楽に検査ができます。

(ウ)

経皮肺生検(けいひはいせいけん)
気管支カメラで診断できない部位にある腫瘍の場合はレントゲンやCTで確認しながら、皮膚の上から細い針を病変へ突き刺し、細胞を採取することもあります。




がんの組織学的診断が出来ない場合

最近CT検診などで多く発見されるようになった、肺の端の小さな病変の場合はこれらの検査を組み合わせても組織診が出来ない場合が多くあります。そのような場合はCT等の画像診断で治療方針(手術をするかどうか)を決めないといけません。しかし近年CTの進歩により画像診断だけで約97%の正確性でがんが診断できます。

肺がんの病期診断

上記の検査で肺がんが組織学的に証明された後は、病期診断(がんの進行度)を行います。 I,II,III,IVの4つの時期に分け数字が大きくなるほど進行しています。
病期は、
●T因子:原発巣の大きさや周囲の組織との関係
●N因子胸部のリンパ節転移の程度
●M因子:原発巣以外の肺転移や胸水、その他の臓器への遠隔転移の有無
の組み合わせよって決定されます。 大まかに言えばI期は血行性、リンパ行性いずれの転移もなくがんが肺のみにとどまっている時期、IV期はすでに血行性転移を来している時期です。II,III期とは血行性転移はないもののリンパ節転移がある時期で、小範囲のリンパ節転移をII期、広範囲なリンパ節転移や隣接臓器浸潤をIII期とします。




治療方法

病期により治療方法が変わってきます。

  • I,II期:原則手術療法の対象となります。
  • III期:
  • ●手術を行わずに抗がん剤+放射線同時併用療法を行う場合
    ●抗がん剤+放射線同時併用療法を行い手術を行う場合
    ●まず手術を行い術後に抗がん剤を行う場合
     などがあり、症例によって様々な選択肢があります。

  • IV期:
  • 一般的には手術適応がなく抗がん剤を中心に治療を行います。ただ転移巣が1個の場合は(例えば単発性脳転移,単発性骨転移)は,転移巣に根治的な治療(たとえば手術)を行えることを条件に肺の手術を行うことがあります。

その他治療方法の決定に影響を与える因子

年齢、肺機能、体力等も治療方針を決める上で重要です。たとえばI期肺がんで通常では手術を勧めるところですが、肺機能が悪かったり、高齢であったりする場合はあえて手術ではなく放射線治療を選択することもあります。さらに高齢の方の小さな肺がんは治療せず様子を見ることもあります。

肺がんの手術方法

1. 切除する肺の大きさによる分類

肺がんに対する標準的な手術はがんが発生した肺葉ごと切除し,その周囲のリンパ節を郭清するのが一般的です。しかし,最近は画像診断の進歩により,小さい肺がんが発見されるようになり,手術の方法も症例により選択するようになってきています。場合によってはがんの病巣のみを切除 (部分切除) したり,区域切除という肺葉よりも小さな範囲の切除で済む場合もあります。逆にがんが大きいため片肺を全部取る(左肺全摘除など)、肋骨に浸潤していて胸壁を合併切除する拡大手術もあります。

(ア) 肺部分切除(この場合は右の下葉の一部を切除するので右下葉部分切除と呼びます)




(イ) 肺葉切除(この場合は右の上葉を切除するので右上葉切除と呼びます)




(ウ) 肺全摘(左の肺を全部切除するのでこの場合は左肺全摘と呼びます)




2. 傷の大きさで分ける分類
(ア)

開胸手術
肺がんの手術は,以前は開胸といって,側胸部に20-30cmの皮膚切開をおいて肋骨の隙間を開いて,外科医の手を直接胸の中に入れて手術を行う方法が採られていました。手術操作は行いやすいのですが,術後の痛みが強い傾向があります。

(イ)
胸腔鏡手術
1990年代前半から,医療光学器械の進歩によって胸腔鏡(胸腔鏡:内視鏡の一種)を用いて小さな手術創で肋骨を大きく開くことなく肺がんの手術を行うことが出来るようになってきました。胸腔鏡の手術のメリットは傷が小さいため術後の痛みが少ない、カメラで拡大しながら手術操作ができることなどがあげられます。逆に手が胸の中に入らないため指での触診が使えない(がんの広がりを触診で確認できない)、手術手技が困難な症例は胸腔鏡下には行いにくいなどの欠点があります。 開胸手術、胸腔鏡手術それぞれメリット、デメリットがあり、これらを考慮しながらどちらの方法を選択するかを決めます。

手術のメリット、デメリット

手術は現在の医療レベルでは、一番治る可能性の高い治療方法と考えられます。病期的に手術が可能であれば手術をお勧めします。しかし下記のようなデメリットも存在します。

(ア)

術後の痛み
胸腔鏡の手術では傷が開胸と比較して小さいため痛みが少ない傾向にありますが、それでもやはり痛いです。しかしこれらに対しては飲み薬の痛み止めで対処できます。傷の痛みとは別に手術をした側のみぞおちのあたりがピリピリしたり、違和感を感じることがあります。これは胸腔鏡の手術でも起こり、手術中に肋間神経を圧迫することがあり、その支配領域であるみぞおちのあたりに違和感を生じます。これは術後2-3ヶ月ほどで自然に治ります。

(イ)

肺活量の減少
肺の手術はがんだけではなく正常肺も含めて切除するため、どうしても手術の前に比べ肺月量が減少します。通常よく行われる肺葉を1個のみ切除する場合、日常生活(買い物、選択、入浴、ゴルフ)にはほとんど影響はありませんが、運動負荷がかかるときたとえば山登り、神社の長い階段を上るときなどは息切れが多くなります。しかし少し休んで呼吸を整えると続けて行えます。

(ウ)

合併症
肺がんの手術はやはり危険が伴い、術中術後にいろいろな合併症が起こります。

(1) 肺瘻 (肺からの空気洩れが続く)
(2) 心筋梗塞
(3) 脳梗塞
(4) 肺炎
(5) 気管支断端瘻(縫って閉じた気管支断端が開くこと)
(6) エコノミー症候群
(7) 間質性肺炎の急性増悪

などが頻度の多い合併症です。最悪の場合これらにより死に至る可能性もあります。日本のでは肺がん術後30日以内の死亡率は約0.8%と言われていますがアメリカ、ヨーロッパでは2%前後です。

当院の特徴

迅速

初診から治療決定、手術まで出来るだけ時間がかからないように検査スケジュール等を組んでいます。

正確

気管支カメラ、CTなどの検査を組み合わせて正確な診断を心がけています。

適切

病期の進行度だけではなく、患者さんの年齢、体力、家庭環境等を考慮して最良、最適の治療法を選んでいます。また胸腔鏡を積極的の用い患者さんに優しい治療も心がけています。

包括的かつ高度の肺がん治療:手術以外の治療においても薬物療法専門医、放射線治療専門医による高度な総合的な肺がんの治療を提供できます。呼吸器内科、呼吸器外科、放射線科、病理科によるカンファレンスですべての患者さんの病状を検討し、多角的総合的に治療を決定しています。当院は総合病院であり肺がん以外のあらゆる病気にも同時に対応可能です。特に経験豊かな麻酔の先生が多数おられ、狭心症、肺気腫、喘息その他併存疾患のある患者さんも安心して手術を受けることが出来ます。

肺がん術後のかかりつけ医と当院の連携(地域連携)

当院では肺がんの手術後、当院と地域の医療機関(かかりつけ医)での治療計画を共有し、お互いに連携しあいながら患者さんの医療にあたっています。手術の後、日常の困ったこと、たとえば風邪等の診察、定期の血液検査等はかかりつけ医で行い、大きな検査(CT、MRIなど)は当院で行います。この様な地域連携のメリットとして、

  • ご自宅近くの医療機関を受診していただくことで、通院時間の短縮や通院費用の軽減、診察の待ち時間の短縮ができます。
  • 複数の主治医のもとで診察を受けていただくことで、がん以外の病気や、すでにかかっている病気に対しても、身近に相談することができます。
  • 治療計画や経過の把握がしやすくなります。
  • 重複した検査・投薬を避けることができます。

たとえば高血圧、糖尿病等でかかりつけ医をお持ちの患者さんが当院で肺がんの手術をされる場合、手術後にかかりつけ医と当院の、いわゆる2人の主治医が連携し、術後の経過観察、治療を行っていきます。かかりつけ医をもたれていない患者さんの場合は、当院から適切な近くの病院を紹介させて頂き、かかりつけ医となっていただいています。
肺がんの手術後退院時にこの様な地域連携をこちらからご相談をさせて頂いています。また患者さん側でも地域連携の希望がありましたら是非スタッフにお声をかけてください。

自然気胸について

若い長身の男性に多く、ブラ・ブレブの破裂による肺の虚脱ブラ・ブレブが破裂し胸腔内に空気の貯留した病態で、肺が虚脱した為に胸痛、呼吸困難、咳嗽などの症状が出現します。

気胸の重傷度

  • 軽度:肺尖が鎖骨レベルまたはそれより頭側にある。またはこれに準ずる程度。
  • 中等度:軽度と高度の中間程度。
  • 高度:全虚脱またはこれに近いもの



治療方法

目的:虚脱した肺を再膨張させる。

保存的治療

a)安静
b)胸腔穿刺(脱気)
c)胸腔ドレナージ

肺虚脱が軽度であり呼吸困難などの臨床所見が乏しい場合、安静もしくは脱気のみ(外来も可)。肺虚脱が中等度以上であれば、胸腔ドレナージが望ましい。

手術治療

保存的治療を行っても再発する症例、初発であってもCTでブラを認める症例、手術を希望される患者さんには手術を行っています。 手術は、
a)肺縫縮術
b)ブラ切除肺縫縮術
c)肺部分切除術

などを行いますが、これらの手技はほとんど胸腔鏡下で、小さな傷で低侵襲に行えます。
手術を行っても約3%に再発が起こることが報告されていますが、当院は術中に縫縮部もしくは切除した断端に人工の布を貼り付け補強し再発防止の工夫を行っています。

自然気胸の症例を提示します。
16才、男性の初発の左自然気胸。


胸部レントゲン写真で高度の気胸を認めています。




CTで左肺尖部に2cm大のブラを認めています。


この症例に対し胸腔鏡下ブラ切除術を行いました。


胸腔鏡下に自動縫合器で気胸の原因であるブラを切離。


手術翌日にドレーンを抜去し退院、その後も気胸の再発を認めていません。