産科疾患
切迫早産
赤ちゃんが予定日よりもずっと早く生まれそうになる状態を「切迫早産」と呼びます。当センターでは、妊娠22週以降の早産リスクがある妊婦さんを対象に、緊急の受け入れ体制を整えています。
お腹の張りや出血などの症状がある場合、超音波検査や必要な検査を迅速に行い、入院での管理やお薬による治療を行います。できる限り妊娠を継続できるよう、お母さんと赤ちゃんの状態に合わせたきめ細かな対応を心がけています。
当院ではMFICU6床、NICU18床、GCU24床を有しており、赤ちゃんがもし早く生まれても安全に対応できるよう、小児科との連携も整っています。
前期破水
「前期破水」は、陣痛が始まる前に羊水が流れ出てしまう状態です。妊娠週数や感染のリスクによって対応が異なるため、専門的な判断が必要です。
妊娠22週以降の前期破水に対して、感染予防や胎児の健康状態を注意深く見守りながら、最適な分娩時期を見極める管理を行っています。必要に応じて抗生物質やステロイド投与を行い、赤ちゃんがよりよい状態で生まれるようサポートします。
妊娠高血圧症候群(HDP)
「妊娠高血圧症候群(HDP)」は、妊娠中に高血圧を発症する病気で、重症化すると母体の肝機能障害、腎機能障害、けいれん(子癇)などを引き起こすことがあり、母児ともに命に関わることもあります。
血圧管理や尿蛋白の評価、胎児の発育や血流の状態を評価しながら、母児双方の状態に応じて分娩時期を判断しています。重症例では母体管理と胎児救命のバランスが重要であり、入院管理を行いながら経過を慎重に見守ります。
妊娠糖尿病(GDM)
「妊娠糖尿病(GDM)」は、妊娠中に初めて糖代謝異常が明らかになる病気で、母体には妊娠高血圧症候群や帝王切開率の増加、胎児には巨大児や低血糖などのリスクがあります。
当院では糖尿病内科や管理栄養士と連携し、食事療法や必要に応じてインスリン治療も行いながら、血糖コントロールと胎児の発育の両方を管理します。定期的な胎児超音波検査や分娩前後の血糖管理も重要です。
前置胎盤
胎盤が子宮口を覆ってしまう「前置胎盤」は、妊娠中や分娩時に大量出血を起こす可能性があり、慎重な管理が必要です。
経腟超音波やMRIなどで出血リスクの評価を行い、適切な分娩時期や方法を決定します。癒着胎盤が想定される場合は、麻酔科・放射線科とも協力し、すぐに血管内カテーテル治療が行えるようにハイブリッド手術室で手術を行います。
胎児発育不全
赤ちゃんが週数に比して小さい状態を「胎児発育不全」といいます。原因として、母体因子、胎児因子、胎盤・臍帯因子などがあり、慎重な管理が必要です。
超音波検査で胎児発育や血流を測定し、赤ちゃんの状態を定期的に評価しています。胎児心拍モニタリングや分娩時期の判断も含めて、母体と胎児の両方の安全を最優先に考えた管理を行います。
常位胎盤早期剥離
本来は出産後に剥がれる胎盤が、赤ちゃんが生まれる前に剥がれてしまう状態を「常位胎盤早期剥離」といいます。突然の腹痛や出血、胎児心拍異常などを伴い、緊急の対応が求められることがあります。
診断から緊急帝王切開、母体救命処置まで迅速に行える体制を整えています。定期的に麻酔科・小児科・産婦人科で緊急時のシミュレーションを行っており、超緊急帝王切開は安定して15分以内で娩出できています。
双胎妊娠
双子の妊娠(双胎妊娠)は、単胎妊娠に比べて早産や胎児間の発育差、胎盤や臍帯の異常、妊娠高血圧症候群など、さまざまなリスクが高くなります。
妊娠22週以降の双胎妊娠を対象に、胎児の発育や羊水量、血流などを定期的に評価しながら慎重に管理しています。特に一つの胎盤を共有する一絨毛膜双胎では、胎児間輸血症候群(TTTS)などの特有の合併症にも注意が必要です。
出産は早産となることも多く、NICUと連携した設備を整えています。
三つ子(品胎妊娠)についても同様に管理を行っています。
頸管無力症
「頸管無力症」とは、痛みや張りを感じることなく子宮の入り口(子宮頸管)が開いてしまい、流産や早産の原因となる状態です。
過去の妊娠歴や子宮の手術歴が関係することもあり、超音波で頸管の長さを測定することで診断します。必要に応じて子宮頸管を縛る「頸管縫縮術」や安静・薬物療法を行い、妊娠継続をめざします。
合併症妊娠
妊娠中に高血圧、糖尿病、心疾患、膠原病、甲状腺疾患などの持病を持つ方や、妊娠をきっかけに合併症を発症する方も少なくありません。
各診療科と密に連携しながら、母体と胎児双方にとって安全な妊娠・出産が行えるようサポートしています。重症妊娠高血圧症候群(HDP)や妊娠糖尿病などへの対応も行っており、入院管理や分娩タイミングの見極めも重要です。
無痛分娩
出産の痛みをやわらげる方法の一つが「無痛分娩」です。当センターでは、希望される方に対し、麻酔科医による硬膜外麻酔あるいは脊髄くも膜下麻酔を用いた分娩管理を行っています。
痛みの軽減によって、出産がより安心して迎えられるようサポートするとともに、異常分娩への早期対応も可能な体制を整えています。
NIPT
「NIPT(新型出生前検査)」は、母体の血液から胎児の染色体異常の可能性を調べる検査です。妊婦さんの不安を軽減し、必要な支援につなげるために、正確な情報提供とカウンセリングが重要です。
当センターでは、専門の認定を受けた医師が対応し、希望される方には丁寧な説明と同意のうえで検査を行います。異常が見つかった場合には、臨床遺伝専門医や小児科と連携しながら、今後の方針を一緒に考えます。