内科

臨床診断学の勉強会

医学論文抄読会

当院内科では、医学雑誌New England Journal of Medicineに毎週掲載されるCase Recordsを丁寧に読み込み、論理的な臨床診断の考え方を学んでいます。詳細に検討された医学論文を毎週読むことで、医学的知識が豊富になるだけでなく、一流と言われる医師の臨床論考の過程をたどることは、日常臨床における論理的思考法を身につける上でも非常に役に立ちます。 特に月はじめに掲載されるClinical Problem-Solvingについては、研修医をpresentor役とdiscussor役、各科専門医をファシリテイターにした、問題解決型のカンファレンスの教材に使用しています。 以下に、New England journal of MedicineのClinical Problem-Solvingを使用した、当院の問題解決型カンファレンスの記事を掲載します。参考にしてください。

Case 18-2020: A 73-Year-Old Man with Hypoxemic Respiratory Failure and Cardiac Dysfunction

N Engl J Med 2020; 382: 2354-64

症例

COVID-19パンデミック中の2020年3月、73歳男性が急性低酸素性呼吸不全のためボストンの大学病院ICUに搬送された。6日前までは通常の健康状態であったが、乾性咳嗽、発熱、倦怠感の増悪が生じた。4日前、地元の病院の救急外来を受診した。体温は38.8℃、血圧94/62 mmHg、心拍数91/分、呼吸数12/分、Sp02 97%、全身状態は良く、呼吸音は清。白血球 5600/μL(Nt 56%、Lym 33%)。SARS-CoV-2 RNAのPCR検査が施行された。CTでは両肺の末梢側優位に1-1.5cmの円形のスリガラス陰影を多数認めた。オセルタミビルが処方され、自宅療養が指示された。その後も症状は持続、呼吸困難を生じたため、救急外来を再度受診。彼は倦怠感、頻呼吸、苦悶様であった38.6℃、血圧158/91 mmHg、心拍数 108/分、呼吸数28/分、Sp02 90%。気管内挿管され、ヘリコプターでボストンの大学病院ICUに搬送された。

COVID-19と心臓障害

急性心筋障害はCOVID-19の重要な予後因子である。一部のCOVID-19患者は急速に状態が悪化するが、心血管系合併症が引き金のことがある。COVID-19における心血管イベントには心筋障害、心筋炎、心拍出量低下性心不全、不整脈、急性冠症候群が挙げられる。COVID-19による急性心筋障害の原因は、冠動脈のプラーク破裂、冠動脈の微小血栓や攣縮、血管内皮細胞の損傷、サイトカインストーム、低酸素血症、酸素の需要と供給の不均衡、呼吸性アシドーシス、陽圧換気による右心室後負荷の増加等、様々な病態が考えられている。


参考文献
  1. Shi S, et al. Association of Cardiac Injury With Mortality in Hospitalized Patients With COVID-19 in Wuhan, China. JAMA Cardiol 2020. doi:10.1001/jamacardio.2020.0950

2020/06/30抄読

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The Game Is Afoot

N Engl J Med 2020; 382: 2249-55.

症例

63歳女性が数ヶ月持続する両足首痛を訴えた。2年前に転倒して、左腔骨プラトー骨折をした。骨折関連痛は理学療法で軽減したが、その後、膝痛が出現し、左大腿骨内顆骨折を新たに指摘された。保存的治療にて痛みは再び軽減した が、その後両足首に痛みが進行し、松葉杖と杖を使用するようになった。既往歴に乳癌があり、乳腺摘出術と5年間のタモキシフェン投与を受け、10年前に治療は完了した。治療後、毎年のマンモグラフィ-と検査には異常はなかった。

腫瘍性骨軟化症

FGF23は骨細胞で産生され、尿細管でリン再吸収とビタミンD活性化を抑制する生理的なリン調節因子である。ところが、腫瘍がFGF23を過剰産生し、低リン血症によって骨痛、偽骨折、骨折、筋力低下などを呈する、腫瘍性骨軟化症tumor induced osteomalacia(TIO)と呼ばれる病態がある。病理学的にはphosphaturic mesenchymal tumorと診断される特異な間葉性腫瘍であり、四肢や頭頸部に好発する比較的小さな良性腫瘍であることが多い。


参考文献
  1. Medieal Practice.34,1852-54, 2017.

2020/06/23抄読

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Case 17-2020: A 68-Year-Old Man with Covid-19 and Acute Kidney Injury

N Engl J Med 2020; 382: 2147-2156

症例

68歳男性が発熱、息切れ、急性腎障害で入院となり、SARS-CoV-2陽性であった。患者は糖尿病、高血圧、高脂血症、冠動脈疾患、肥満、睡眠時無呼吸症候群の既往症があった。4日前に悪寒戦慄を伴った39。9℃の発熱を認めた。食欲が無く、糖尿病に対する長時間作用型のインスリン投与を中止した。入院の前日に乾性咳嗽、当日朝に息切れを自覚した。呼吸数40/分、Sp02 94%、中等度の呼吸促迫があり、肺底部にびまん性のcoarse cracklesを聴取し、胸部X線で両肺に多発性の浸潤影を認めた。BMI 37。1、Cr 1。3 mg/dL。入院3時間後Sp02 87%に低下、5時間後が更に酸素化が低下し、ICU入院。その16時間後に挿管・人工呼吸を導入。その24時間後血圧が78/45mmHgまで低下し、ノル工ピネフリンを開始。入院3日目Cr 1。8 mg/dL、8日目Cr 6。9 mg/dL、UN 111 mg/dL、代謝性と呼吸性の混合性アシドーシスを生じた。

COVID-19と急性腎障害(AKI)

COVID-19入院患者5、449名のうち、36。6%の患者にAKIが発生した。AKIはstage-1が46。5%、stage-2が22。4%、stage-3が31。1%で、14。3%は透析を必要とした。AKIは呼吸不全と関係があり、人工呼吸中の患者の89。7%、自発呼吸の患者の21。7%に発生した。逆に、透析患者の96。8%が人工呼吸を必要とした。


参考文献
  1. Hirsch JS, et al. Acute Kidney Injury in Patients Hospitalized With COVID-19. Kidney Int. 2020. doi: 10.1016/j.kint.2020.05.006.

2020/06/16抄読

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Case 15-2020: A 79-Year-Old Man with Hyponatremia and Involuntary Movements of the Arm and Face

N Engl J Med 2020; 382: 1943-50

症例

79歳男性が低Na血症と腕と顔面の不随意運動のために入院した。患者は5週間前までは健康だったが、その後に倦怠感が生じた。3週間前にかかりつけ医で低Na血症が認めら、救急科を受診した。Na 123 mmol/Lであり、生食の点滴とヒドロクロロチアジドの中止を指示された。1週間後、左肘と手首が屈曲する不随意運動が生じた(dystonic seizureと表現)。時間は5秒未満、1日に何度も生じ、持っていた物を落とした。妻は発作時に患者の顔の左側が引きつることに気がついた。頭部MRIにて脳室周囲と皮質下白質に高信号の散在が見られた。

低Na血症と特徴的な不随意運動

低Na血症についてはガイドラインもあり、アルゴリズムに従って診断する。この場合はSIADが示唆される。しかしこの症例では、毎回同様の、短時間の手と顔面のdystonic seizureを認めており、SIADの神経症状と帰すには無理があると考えられた。


参考文献
  1. Spasovski G, et al. Clinical Practice Guideline on Diagnosis and Treatment of Hyponatraemia. Nephrol Dial Transplant. 2014 Suppl 2:i1-i39.
  2. 松本理器, 他. くすぶり型辺縁系脳炎とfaciobrachial dystonic seizure. 神経内科 9: 712-717, 2013.

2020/06/09抄読

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Hiding in the Water

N Engl J Med 2020; 382:1844-1849

症例

59歳女性が3ヶ月続く消化不良と食欲減退を訴えた。上腹部不快感は鋭く、右上腹部に放散し、食事や腸蠕動と関係なく、希に症状のために夜間覚醒した。悪寒を伴った39.9度の発熱と、腕・腰部・臀部に広がる、掻痒感のある紅斑を 認めた。3ヶ月前のイタリア旅行中に、クレソンとケールをブレンドしたグリーンジュースを飲んで約3時間後に嘔吐と数回の失神を認め、その後からこの上腹部症状が出現した。WBC 10、900/μL(好酸球37%)であった。

好酸球増加と寄生虫感染症

好酸球増加で気付かれる、現在の日本に多いと寄生虫感染症は、イヌ(やブタ)回虫症と肺吸虫症である。食肉、ジビエ類、淡水魚類などを、刺身や夕タキなど十分に加熱しないで摂取することによって感染する、食品由来感染症であり、典型的には成人の病気である。  今回の肝蛭症は、頻度は高くないが、ウシ、ヒツジ、ヒトに寄生する人畜共通感染症である。ウシレバ-刺の生食で感染した症例もあるが、今回のCaseのように、クレソンに付着しているメタセルカリアを偶然摂取して感染した症例報告が、わが国からもある。


参考文献
  1. 丸山治彦.好酸球浸潤と寄生虫感染症.成人病と生活習慣病.2015. 45(7); 909-908.
  2. 日本におけるクレソン摂食により感染したヒト肝蛭症の1例.日本病院総合診療医学会雑誌.2013, 5(2),

2020/06/02抄読

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