2022年:パレスチナ赤新月社医療支援事業(レバノン共和国)
日本赤十字社は 2018年4月より、パレスチナ難民やその他の脆弱な地域住民に対する医療サービスの質向上を目的として「パレスチナ赤新月社医療支援事業」を実施しています。
2022年4月から12月まで9カ月間、私はパレスチナ赤新月社が運営する「第二期パレスチナ赤新月社医療支援事業」の立ち上げ期にレバノンのサファド病院へ派遣されました。
(出典)外務省海外安全ホームページ:危険・スポット・広域情報
レバノンにはパレスチナ難民が住む難民キャ ンプが12箇所あります。他国に比べても特に過酷な環境にあるパレスチナ難民は、市民権を持てないため教育や保健へのアクセスもなく、厳しい就労制限が課せられている状態です。質の良い医療を受けることが難しい環境にある難民キャンプにおいて、パレスチナ赤新月社レバノン支部の運営する病院では、おもにパレスチナ人に対して低額または無料で医療を提供しています。しかしながら、パレスチナ人の医療者は教育を受ける機会に乏しく、20年以上知識や技術のアップデートがされていないといわれています。このアップデートに寄与するために、日赤では医療支援事業を展開しています。
今回、私はこれから3年間続くプロジェクトの第二期の立ち上げとして、サファド病院での地盤づくりを行いながら、5つの活動の基盤とシステムを作ることに尽力しました。
5つの活動とは
- 医療の質の標準化
- 感染対応の向上
- 多数傷病者に対応できる体制構築
- 診断能力の向上
- 看護実践の質の向上
です。
サファド病院、日赤の医療チームは5人で構成されています。シニアナース/チームリーダーの私、医師、スタッフナース、そして現地で雇用したパレスチナ人のプロジェクトアシスタントと通訳です。活動当初はサファド病院の方から「日赤の人達は何をしているの?」と言われることがありました。しかし、病院幹部を巻き込み、院内で2つのワーキンググループを立ち上げ、もともとあった委員会を活発化できるように働きかけ、また医師や看護師の知識や技術の向上のための研修を開き、さらには現場に行き直接指導をすることを地道に行っていきました。
その結果、様々な困難もありましたが私の派遣が終了するまでに救急外来におけるトリアージシステムの導入や、委員会の定期的な開催、医師への研修、そして看護師への研修などができ、何度も感謝の言葉を頂きました。ただし、そこにはサファド病院で働かれているパレスチナの皆さんの「自分達の病院をよくしたい」という強い思いがあり、さらには、私たち日赤をあたたかく迎えいれてくださったことが大きく影響しています。
私自身は困難な環境が何十年と続いているにも関わらず、決してあきらめることなく遠く東から来た私たち日本人を受け入れ、そこから自分達の医療の質を上げ少しでもよくしようとされているパレスチナの人々に大変感銘を受け多くのことを学ばせていただきました。そんなパレスチナの皆様を取り巻く環境が少しでもよくなることを祈るばかりです。
この第二期日本赤十字社・パレスチナ赤新月社医療支援事業は2025年3月まで継続されます。皆様のご支援をどうぞよろしくお願い致します。