2015-2016年:中東地域紛争犠牲者支援事業(ヨルダン・ハシェミット王国)
日本赤十字社では「苦しんでいる人を救いたい」という思いを9つのかたちにして事業を展開しています。その中には皆様もご存じの、赤十字病院/血液事業/救急法等の講習/国内災害救護が含まれますが、国際活動もその1つです。
国際活動は、190か国に広がる赤十字社・赤新月社の世界的ネットワークを生かし、
- 「命と健康を守る」
- 「苦痛を軽減する」
- 「人間の尊厳を守る」
という目的のために幅広い活動を行っています。
被災者への医療や衣食住の支援といった緊急救援だけでなく、その後の復興支援や防災・保健衛生分野の活動を通じた地域の基盤づくりなど、包括的な支援にも取り組んでいます。
そのような取り組みの一環として、1年3か月間にわたって ヨルダン・ハシミテ王国に派遣され、国際赤十字赤新月社連盟(IFRC)ヨルダン代表部のCBHFA(地域住民参加型保健;Community-Based Health and First Aidの略称)要員として中東地域紛争 犠牲者支援事業に従事しました。
シリア内戦は今だ終息の兆しを見せておらず、隣国であるヨルダンでは、約66万人のシリア避難民が登録されています。ヨルダン政府によると、このほかに100万人以上のシリア人が国内で居住しており、これには紛争が勃発する前の移住者や、避難民登録ができていない人々も含まれます。他にも、ヨルダンにはシリア紛争以前から220万人以上のパレスチナ難民や5万5000人のイラク避難民が身を寄せ、世界最大の「避難民ホスト国」とも呼ばれます。
アブドラ国王は、「避難民流入のためヨルダン国民は苦しんでいる。国家予算の約4分の1が避難民支援に使われており、教育や医療制度に負担がかかっている」 として危機感を強めています。学校や診療所などの地元の公的機関だけではヨルダン人、シリア人の両方に社会サービスを届けきれず。避難民を受け入れるホストコミュニティーの中で、地元住民との緊張状態が高まってきています。そのような状況下で、シリア人を孤立化させないために、地域のコミュニティーを包括的に支援していくことが重要になってきています。
IFRCは2011年当初から、シリア避難民への支援をヨルダン赤新月社を通じて行ってきました 私の担当はCBHFA(地域住民参加型保健)です。研修を受けたヨルダン赤新月社の地域保健ボランティアが担当地域のシリア人や地元住人に対して病気の予防・早期対応などの情報提供と支援をすることによって、少しでも健康な生活を送っていただこうと、今も頑張っています。
シリア避難民の皆さんは大切な故郷や家族から引き離され、働く機会を得られず、収入がなく、子供たちは学校に行くことも困難で、病気になっても病院に行くことも難しい厳しい状況の中、悲惨な記憶と未来への不安を抱えて暮らしています。
「シリアは世界で一番美しいところなのよ、早く帰りたい」と言う話をよく聞きます。
その言葉が現実になる日まで、前を向いて生きていけるように保健ボランティアたちや、ヨルダン赤新月社が常に困っている人たちに手を差し伸べられる組織になるように日本赤十字社は引き続き支援を続けております。これからも皆様の関心と支援をいただければうれしく思います。
シリアなどをはじめとする中東地域での紛争犠牲者はいまなお多く、また、支援を必要とする地域もシリア周辺国やパレスチナにとどまらず、ヨーロッパ諸国まで広域に及ぶことから、下記のとおり救援金を受け付けています。
http://www.jrc.or.jp/contribute/help/cat751/
皆さまの温かいご支援をよろしくお願いいたします。