ヘリコバクター・ピロリ感染
-
ヘリコバクター・ピロリ菌とは
ピロリ菌は、胃の粘膜に生息しているらせん形をした細菌です。子供の頃に経口感染し、一度感染すると多くの場合胃の中に棲みつづけます。ピロリ菌に感染すると、その酵素や毒素により胃粘膜に炎症が起こり、潰瘍ができやすい状態になります。そこへストレス・食べ過ぎ・薬剤などの負荷がかかると潰瘍を発症します。ピロリ菌は胃・十二指腸潰瘍以外にも、以下のような疾患と関連していると言われており、除菌治療が推奨されています。
A:ピロリ菌除菌治療が勧められる疾患
胃潰瘍、十二指腸潰瘍 胃MALT リンパ腫
B:ピロリ菌除菌治療が望ましい疾患
早期胃癌に対する内視鏡的粘膜切除術(EMR)後胃 萎縮性胃炎 胃過形成性ポリープ
C:ピロリ菌除菌治療の意義が検討されている疾患
機能性胃腸症(FD)胃食道逆流症(GERD)消化管以外の疾患(特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、鉄欠乏性貧血、慢性蕁麻疹、レイノー現象、虚血性心疾患、偏頭痛、ギランバレー症候群など)
-
感染状況と感染経路
ピロリ菌には日本人の約60%が感染しているといわれていますが、感染は衛生環境と関連しています。すなわち、衛生環境が悪いと排泄物中のピロリ菌が井戸水など介して飲み水や食べ物を汚染して感染してしまいます。ただし、唾液中のピロリ菌は極めて少ないか存在しないので、食器の共用やキスでの感染は報告されていません。感染する時期は、幼少時のみで成人ではほとんど感染しません。したがって日本では最近の衛生環境の改善で若年者では感染率が低率であり、30歳未満では保菌率は20%以下と推測されます。
-
診断
- 血液や尿で測定する抗体測定法
- 尿素を内服してその前後で吐いた息を採取して調べる呼気試験法
- 便中のピロリ抗原測定法
-
内視鏡で採取した組織をもちいる方法
顕微鏡で検鏡
組織培養
ピロリ菌のもつ酵素反応を利用する迅速ウレアーゼ法
-
治療と効果判定
治療はプロトンポンプ阻害薬と抗菌剤2剤(アモキシシリン、クラリスロマイシン)を1週間内服します。その成功率は約70~80%と言われています。効果判定は1~2か月後に尿素呼気試験で行います。除菌治療が不成功であった例には、抗菌剤を変更して再治療を行うことで多くの例で除菌に成功します。