当科の特徴
耳・喉頭領域の手術について
当院に、2019年秋より最新の手術用顕微鏡システムORBEYEが導入され、耳鼻咽喉科では中耳・咽喉頭疾患の手術に用いています。
これまでの顕微鏡は、術者が主鏡筒、助手が側視鏡を覗き込んで術野を観察し操作する形式でした。今回導入されたORBEYEは顕微鏡部分に主鏡筒や側視鏡がなく、術野が55型の大型モニターに立体映像(3D)として映し出され、そのモニターをみながら手術操作を行います。それによりまず、滅菌ドレープの装着などセットアップが容易となり、無理のない姿勢で手術を行えるになりました。
また、術者と同じ視野を手術室の多職種のスタッフ全員で共有できるようになりました。そして、4K・3Dの高精細デジタル画像により微細な構造がより鮮明に描出されるようになったため、手術の安全性が向上しています。
頭頸部癌の治療について
当嗄声症状が出現しやすい喉頭癌と違って、咽頭癌は症状が乏しいため早期発見が難しく、診断時には進行していることが多い疾患です。
しかし、近年NBI(narrow band imaging)を駆使した内視鏡検査により咽喉頭領域の悪性疾患が早期に発見されるケースが増えてきています。咽喉頭癌の治療においては、生活に直結する嚥下・発声に関与するため、治癒と機能維持を考慮する必要があります。
最近、咽喉頭癌の低侵襲手術として、早期癌に対して経口的切除が普及してきています。そのひとつがELPS(endoscopic laryngo-pharyngeal surgery)で、耳鼻咽喉科の直達喉頭鏡手術と消化器内科の上部消化管内視鏡によるESD(endoscopic submucosal dissection)を組み合わせた手技です。
耳鼻咽喉科の弯曲型喉頭鏡で咽頭病巣の視野を広く展開し、主に上部消化管内視鏡を用いて腫瘍を切除します。切除の途中、耳鼻咽喉科の鉗子で腫瘍を把持してカウンタートラクションをかけ、内視鏡切除をアシストします。
当科でも主に早期の下咽頭癌に対して、消化器内科医と連携し、この手技を用いた治療を積極的に行っています。
副鼻腔の手術について
2012年より副鼻腔手術の一部にナビゲーションシステムを導入して、より正確・安全な手術を行っています。
慢性副鼻腔炎の手術は内視鏡下に副鼻腔に存在する隔壁を取り除き(単洞化)、換気の改善を図ることによって、副鼻腔粘膜の正常化を目的とした手術が行われています。
副鼻腔疾患の中で嚢胞性病変や前頭洞病変の一部に関しては、内視鏡下手術が難しく、現在でも外切開が必要になることがあります。これまでは術中に「指標となる鼻副鼻腔の構造物」と「術前に撮影したCT」を頼りに、術者は解剖を把握し手術を行う必要がありました。そのためサイズや部位により内視鏡下に病巣の正確な把握が難しい場合には安全性を考慮し外切開を選択していました。
ナビゲーションシステムの導入によって、操作している部位がCT上に正確に示されるようになったため、小病変や骨壁が分厚い場合でも内視鏡手術で対応可能なケースが増えてきています。
いずれも眼窩壁や頭蓋底に接する病変や微小な病変に対してナビゲーションシステムを用いています。