外科

肝胆膵疾患

はじめに

 肝胆膵領域の悪性腫瘍に対する手術件数が多いのも当科の特徴の一つであり、日本肝胆膵外科学会より肝胆膵高難度手術を実施する高度技能専門医修練施設Aの認定を受けています。中播磨・西播磨医療圏で唯一のA認定施設(兵庫県 A認定 7施設、B認定 4施設) (http://www.jshbps.jp/)であり、肝臓内科や消化器内科、放射線科、病理診断科と連携して診療にあたっています。以下に代表的な疾患及び治療法について概説します。


肝疾患

1.肝悪性腫瘍

a. 肝細胞癌

 肝細胞癌の多くはウイルス性肝炎やアルコール性肝炎、脂肪肝炎をベースに発生しますが、近年背景疾患のない正常肝に発生する肝細胞癌も散見されます。肝細胞癌に対する治療法としては、肝切除、局所療法(ラジオ波焼灼術/マイクロ波凝固術)、カテーテル治療(肝動脈化学塞栓療法/肝動注療法)が三本柱となりますが、近年これらに分子標的薬による全身化学療法が加わりました。当科ではこのうち主に肝切除による治療を担当しています。

b.転移性肝癌

 他臓器の癌から肝臓に転移したものを転移性肝癌といい、どの臓器の癌からの転移かにより治療方針が異なります。

c.肝内胆管癌

 肝内の胆管から癌化したものが肝内胆管癌であり、肝細胞から癌化した肝細胞癌とは性質が異なり、一般的に予後不良と言われています。治療法の第一選択は肝切除であり、切除不能な場合は化学療法の適応となります。

2. 肝切除

 年次別肝切除症例数は表の通りですが、年々腹腔鏡下肝切除の割合が増えています(2020 腹腔鏡下肝切除割合 54.1%)。ただし開腹肝切除か腹腔鏡下肝切除かは腫瘍の個数や大きさ、位置によって決まりますので担当医とご相談ください。

肝疾患症例数

  2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020

肝細胞癌

56 74 53 48 52 54 44 46 45 36

肝内胆管癌

6 2 3 3 7 5 5 4 3 3

転移性肝癌

12 21 27 15 12 25 21 22 27 20

その他

5 2 2 3 4 4 2 2 0 2

87 99 85 69 75 88 72 74 75 61

胆道疾患

1.肝悪性腫瘍

a.胆嚢癌

 胆嚢癌は比較的確定診断がえられにくい疾患の一つです。更に進行が速く、また進行度により予後に大きな差があるのもこの疾患の特徴とも言えます。確定診断に至っていない疑診例、つまり胆嚢癌の疑いの段階でも画像所見により手術適応となるケースもあります。手術方法としては進行度により胆嚢摘出のみの場合から肝切除や胆管切除、更に膵切除を追加する場合まであります。

b.肝門部~近位胆管癌

 肝門部は非常に複雑な構造となっており、癌の進展範囲や進行度を正確に判断するためには高度な専門知識と豊富な経験を必要とします。当科では放射線科により正確な読影、消化器内科による経口胆道鏡(POCS)や超音波内視鏡(EUS/IDUS)、これらに基づき手術適応を判断し術式を決定しています。特殊な領域であるが故に、より専門性の求められる領域と言えます。

c.遠位胆管癌・乳頭部癌

 遠位胆管癌(中下部胆管癌)及び十二指腸乳頭部癌は膵頭部に位置しているため、膵頭十二指腸切除(膵癌の項参照)が必要となります。

2.胆道良性疾患

 胆嚢結石や胆嚢ポリープ、胆嚢腺筋症に対する腹腔鏡下胆嚢摘出術を行っています。ただし腹部手術の既往のある場合や高度な胆嚢炎を併発している場合は開腹による胆嚢摘出術となるケースもあります。

3.胆道領域の手術

 手術症例数(胆嚢結石/腺筋症に対する腹腔鏡下胆嚢摘出術は除く)は表の通りです。2020年の胆道領域の手術症例数の内訳は胆嚢腫瘍 7例(胆嚢癌 4例)、肝門部領域胆管癌 6例、遠位胆管癌 3例、乳頭部癌 5例でした。

膵疾患

1.膵悪性腫瘍

 膵癌の治療は外科手術、化学療法、放射線治療がありますが、根治を目指す治療としては外科手術が中心となります。一般的に膵癌は予後不良な癌として知られていますが、手術単独での治療成績には限界があり、術後補助化学療法、更には術前化学療法を組み合わせることで膵癌の予後向上に向けた取り組みを行っています。

a.膵頭部癌

 膵頭部癌に対する手術は主に膵頭十二指腸切除が行われます。膵頭部を切除するためには胆管・胆嚢、十二指腸も切除する必要があり、広範囲に及ぶ切除となります。また再建も膵臓と小腸、胆管と小腸、胃と小腸、小腸同士の4ケ所つなぐ(吻合)必要があります。当科では2012年より上腸間膜動脈(SMA)周囲の組織(Mesopancreas領域)の徹底郭清を行うために、左後方アプローチ(Left posterior approach)を行っています。本法導入により5年経過しましたので、2012~2015年の膵癌に対する膵頭十二指腸切除術の現時点での術後成績を示します。1,2,5年生存率は79.5%,75.3%,68.4%、1,4年無再発生存率は74.4%,57.3%でした。病理学的な危険因子は癌遺残とリンパ節転移陽性でした。

b.膵体尾部癌

 膵体尾部癌に対する手術は膵体尾部切除(脾臓合併切除)となります。膵頭十二指腸切除のような切除後の再建はありません。腫瘍の位置や進行度によっては腹腔鏡で行うことも可能です。

2.膵良性腫瘍

 膵臓には膵臓癌以外にも様々な腫瘍が発生します。特に嚢胞性腫瘍は良性から境界悪性まで多種多様であり、慎重に手術適応を判断する必要があります。また良性腫瘍であっても経過中に悪性化(癌化)するケースもあり、そのリスクも各疾患各症例により様々です。詳しくは担当医にご相談ください。

3.膵切除症例数

 膵切除症例数は以下の通りです。膵頭十二指腸切除や膵体尾部切除は膵腫瘍のみに対してではなく、遠位胆管や乳頭部の腫瘍、あるいは十二指腸腫瘍、一部の胃癌や大腸癌などの他臓器癌に対する合併切除として行うこともあり、膵疾患の症例数と膵切除症例数には相違があります。2020年の膵疾患手術症例数は43例(膵癌 31例)で、膵切除症例数は52例(膵頭十二指腸切除 31例、膵体尾部切除 21例)でした。

手術症例数 年次推移 (胆石/胆嚢腺筋症等に対する腹腔鏡下胆嚢摘出術を除く)

  2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020

肝臓

99 85 69 75 88 72 74 75 61

胆道

17 17 8 14 19 8 25 31 21

19 26 23 20 29 23 33 43 43

肝胆膵領域 合計

135 128 100 109 136 103 132 149 125

肝胆膵高難度手術

77 86 67 71 80 67 72 74 74