電子書籍は眼に悪いのか?
2021.05.06
4月19日に実施した「学校関係者評価会議」という会議の中で「電子教科書」やiPadの利用による学生の視力への影響が話題に挙がりました。
学校関係者評価は、学校が行った自己評価の結果等について、保護者を中心とした学校に関係の深い方々(学校関係者)に評価いただくことを基本とするもので、学校だけでは気づき得ないことに気づき、結果として自己評価そのものの質を高め、教育水準の向上を図るよう次の改善につなげる活動です。
そこで、調べてみました。
「どういった行為が眼に悪いのか」
「眼が悪くなる=近視が進む」という点では、近視が進む原因は数多あげられますが、医学的な根拠のあるものとないものとかなりばらつきがあるようです。その中でも「絶対に悪い」と言われているのが、眼から近い距離での作業(近見作業)というものです。つまり紙の本を読むことも、電子デバイスを使って電子書籍を読むことも、極端なことを言ってしまえば机に向かって勉強をすることも、基本的には近視が進む原因になると言われています。
「紙の本よりも、電子書籍のほうが眼に悪いのではないか」
どちらが目に悪いかといった結論は出せないようです。昨今、スマホが問題視されているのは、例えば、長時間、手元を見続けているとか、電子書籍のように文字を読むだけじゃなく、ゲームのように光の点滅を体験していることが多いことのようです。長時間、手元を見ていることや、光がチカチカするものを見ることは、眼を緊張させ、眼の疲れ方も変わってきます。デジタルデバイスが眼にとってどう影響があるのかは、デジタルデバイスを使って、「何を」「どうやって」見ているかにもよります。デジタルデバイス自体が眼に悪いと結論づけることはできないようです。
「ゲームのほうが眼に悪い?」
光が眼を疲れさせるため、「光の量が多いゲームは眼に悪いのではないか」と思いますが、これも調査自体が難しいので、決めつけることはできないと言われています。たとえば、毎日ゲームを5時間やった人と、毎日電子書籍5時間読んだ人を、1000人、2000人規模で集めて調査するということが難しいですよね。 ですから、医学的根拠をもとにお話しするのは難しい。個人的な見解としては、デジタルデバイスで本を読むことが、紙の本を読むことに比べて、ことさらに眼に悪いということはないようでした。近視自体は仕方ないこと。今の子どもたちは、勉強を頑張ることが求められているわけですが、「勉強を頑張る」ことと「近視にならない」ことは、なかなか両立しないことです。近視にならないために勉強をさせないほうがいいのか、本を読ませないほうがいいのか、というとそんなことはないと思うので、必要であれば紙の本であろうと、電子書籍であろうと読むべきだと話されていました。電子書籍、電子媒体が、今後、主流になることは間違いないと思いますので、それを「眼に悪そう」という先入観で止めるのではなく、「正しく使って欲しい」と締めくくられていました。
米国の眼科学会「デジタルデバイスを使う場合に気をつける5つのポイント」
1.適切な距離を保つ
適切な距離とは、25インチ(60センチ)くらいになります。これは大体大人の腕の長さに保つということです。あまり近すぎたり、遠すぎたりするとピント調節に労力を要し非常に眼が疲れます。
2.グレア(眩しさ)を調節する
モニターが明るすぎたり、暗すぎたりすると眼が疲れます。光の量を調節する事が大切です。
3 .休憩を取る
長時間本を読んだり、モニターを見続けると眼精疲労になります。これ対しては「20-20-20ルール」というものがあり、20分ごとに20フィート(6メートル)先のものを20秒間見るという作業です。遠くのものを見ることによって、眼の緊張が取れます。
4.ドライアイ対策
モニターを見続けると眼が渇き、ドライアイの症状が悪化します。自覚のないドライアイの方も少なくありません。ドライアイ点眼薬をこまめに点し、保湿をしましょう。
5.部屋を明るくする
モニターを見る際に、周囲が暗いと余計に疲れます。周囲の照明を調節することが大切です。
このように5つのポイントを守ることで、モニターによる眼精疲労を防ぎ、延いては眼を守る行動をとることができます。
眼からの距離や、モニターと周囲の明るさの調整、適度な休憩が重要ということですね。
皆さんも実践してみて下さい。
現代の生活習慣を考えたら近視になるのは仕方のないことなのですが、いくつかそれを抑制するようなプログラムも出来ているようです。近視をなくすことはできないので、そういった抑制プログラムを使いながら、近視で悩む人の数や、進行度を抑えていこうというのが、世界的な趨勢なのですね。「可能な範囲で眼に負担をかけないでいきましょう」というスタンスになると思いますというお話でした。
日本近視学会副理事長 生野恭司先生インタビューより抜粋