令和3年度戴帽式 学校長式辞
2021.10.29
第123回生の皆様、戴帽式を迎えたこと、誠におめでとうございます。
本日、県支部から事務局長様が来賓としてご列席いただいております。例年ですと、保護者の方々、行政、医師会、看護協会、自治会、民生委員、赤十字関係各位の方々、先輩の学生、看護師、そして教職員が一同に会して晴れやかに皆様を祝福する会となります。しかし昨年に続き、今年も新型コロナウイルス感染症が未だ収束したとはいえない状況が続いています。そのため普段どおりに開催することはできません。このため教職員が工夫を凝らして祝福する式典にしてくれています。
式典の様子をビデオ画像に納めて、これを保護者の皆様に後日観ていただく予定です。ご子息・ご息女の成長された姿を観られるとお喜びになられることと思います。
学生達は、つい先日入学したばかりと思っていました。それがもう戴帽式を迎えるまでになり、成長は早いものと感慨深く、また嬉しく思っております。戴帽式は、看護師にふさわしいと認められた学生に、看護師のいわばシンボルであるナースキャップを授ける儀式です。最近では戴帽式を簡略化したり、行わない施設も増えていると聞き及びますが、看護師になるに当たり、とても大切な通過点の一つであると私は考えます。少なくとも私たちの学校ではいつまでも続けていきたいと考えており、コロナ禍の中でも欠かすことなく開催を決めました。更に現場の看護師も日常では着用していないキャップを本日は特別に着用して学生達を祝福してくれています。
さて、日本社会に目を向けますと、皆様もご存じのように、日本は世界のどの国も経験したことのない少子高齢社会へとすでに向かっています。今後社会の構造も想像をはるかに超えるものに変化するであろうと考えます。医療・介護を取り巻く環境も同様にめまぐるしく変化しております。この変化はコロナ禍を経験し、さらに一層早まると考えます。
ところで人類は、コロナ禍をどうにか克服しようと模索しています。日本も例外ではありません。人類がきっとこれを克服する日が来ると確信しています。感染症を経験したことにより、パンデミック時代の危機管理、デジタル革新の加速、産業の競争力・リスク耐性の強化、分散型社会への転換、社会の絆の再生に取り組み、これまでの社会とはまるで変わった社会を形成するものと思います。元の世界には戻らないということです。医療も元には戻りません。
殆ど経験することのない状況の中にわたし達は今生きています。貴重な経験のさなかにあります。コロナ禍で起こっていることをよく観察し、記憶にとどめ、将来の糧にしていただきたい。
しかし変わらないもの、変えてはならないものもあります。「患者に寄り添う」この看護師の精神はこの先変わることのないものの一つと考えます。先端技術を臆することなく取り込み、コロナ禍を乗り越えるとともに、愛するにたる社会の人と人との絆を大事にし、人間性を高めることであります。誰も見捨てない社会への信頼と安全安心があって初めて人々は憩うことができます。この意味において看護師としての役割は深いものがあります。
戴帽式にあたり、皆様に言葉を送りたいと思います。
あるエッセイの中で述べられていることを紹介します。皆様ご存知のようにAI時代は既に始まっており、今後さらに発達してきます。エッセイの中で、AI時代、医療スタッフに求められる2つの『力』があります。その力とは『共感する力』と『考える力』です。その2つはAIには取って代われないからです。共感する力とは、人の機微を感じ、相手の身になってものを見る力で、これから看護師になる基本教育の中で身につけることが出来、今後君たちが得意とする能力になると思います。この共感する力を磨くには、既に発揮している先輩たちの中で共に働き、吸収し、お互いに切磋琢磨することにより自然に磨かれます。君たちの環境は恵まれております。
もう一つの力、考える力についてです。これからの時代、先人たちが築いたレール(言い換えるとマニュアル)の上を歩くことは大切ですが、物事を主体的に考える能力が求められます。これは難しい事ではなく、看護師は普段から患者さんに寄り添っています。患者さんが
困っていることを、どのようにすれば喜んでもらえるか、安心していただけるか、満足していただけるか常に考え行動しています。看護師の得意とする能力といえます。
この2つの力『共感する力』と『考える力』は君たちが今後の成長過程で獲得する能力です。極端に言えば、医療従事者の中で将来生き残るのは医師よりも看護師と言えるかもしれません。なぜなら、臨床医が行う分析はAIに代わられる可能性があるけれど、看護師の人に寄り添う気遣いはAIのロボットには絶対できないからです。
研鑽してください。
さて戴帽式が終わると、いよいよ現場での実地研修が始まります。これからは、まず「あるがままに見る」ということから「見える世界」を認識しなければなりません。そこから様々なことが見えてくるといいます。個人個人が抱く理想的な看護師像に向かって励んでください。本日の戴帽式は皆様にとって良き思い出に残ると思います。これからの看護師としての長い人生において、様々な困難に突き当たることもあるでしょう。その時には、今日のこの日の誓いと感動を思い起こして戴きたいと思います。
本日は第123回生の皆様、誠におめでとうございます。また会場の皆様方には学生たちに対して、どうか温かいご支援をお願いいたします。
2021年10月29日
姫路赤十字看護専門学校
学校長 佐藤四三