令和6年度卒業式 学校長式辞
2025.03.07
3年生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。また、今日まで支えて来られたご家族の皆様にもお慶びを申し上げます。
そして、ご多忙のところ、御臨席を賜りました、ご来賓の方々には誠に有難うございます。
さて、卒業生の皆さんは3年前に私が郷里の姫路に戻ってきて本校の学校長と姫路赤十字病院院長に就任した時に入学して来られました。言ってみれば姫路日赤の同期として一緒に歩んできた間柄とも言えますので感慨深いものがございます。
この3年間には色々なことがありました。皆さんが1年生の時はまだまだコロナ禍の影響で実習や集団活動も制限を受けていましたが、秋ごろからはイベントなどの活動もできるようになり、手柄山での球技大会、皆さんと一緒にドッジボールをしたのも楽しい思い出です。そして昨年は龍野市の体育館での球技大会ではバドミントンに参加させていただき楽しい時間を過ごせました。
2年生になってからは、ようやくコロナ禍も治まってきて感染症2類から5類に変わったことで、数々の規制も緩和されました。その年の記念すべきこととしては本校の卒業生で現在、姫路赤十字病院の看護副部長である高原美貴さんがナイチンゲール記章を受章されたことです。2年に一度世界中の看護師さんの中から約30人の方が選ばれる国際的な賞です。東京での受章式に当時2年生の皆さんほぼ全員が参加し雅子皇后陛下御臨席のもとでキャンドルサービスの大役を果たしました。非常に厳かな式典でしたが、皆さんのキャンドルサービスも素晴らしく感動的でした。皆さんにとっても一生の大切な思い出になったことと思います。
一方で痛ましい出来事も起こりました。昨年元旦に能登半島地震が発災し、多くの方がお亡くなりになりました。被災された方々も多数いらっしゃいました。
姫路赤十字病院からも医師、看護師、薬剤師、技師、事務職員など多職種からなる救護チームを順次派遣しました。皆さんも赤十字の看護師の卵として特別な思いを持ってニュースに釘付けになったのではないかと思います。
3年生ではコロナ前とほぼ同様の学生生活が行えたのではないかと思います。
11月には初めての学校祭を行い、天候が悪い中多数の方々に来ていただき、
ハートラちゃんも登場して一役かってくれ大盛況でした。また一昨日、卒業を祝う会では、津軽のナイチンゲール花田みきさんの映画「じょっぱり」を観た後、各種ゲームで教職員の皆さんと学生とが世代を越えて一体感を持って楽しんでおられたのが印象的でした。
そして今日の卒業を迎えることになりました。それは皆さんご自身の努力はもちろんのこと、温かく見守って下さったご家族の愛情、また厳しくもやさしさを持って熱心に指導してくださった副学校長はじめ教職員のみなさんの支えによるものです。この点に敬意、感謝を表していただきたいと思います。
卒業生の皆さんは3年間、医療、看護の学習だけでなく、赤十字の人道・博愛の精神も学んできたと思います。そして多職種連携してそれぞれの強みを発揮して診療を行うチーム医療が大事であり、そのためにもスタッフ間のコミュニケーションが必要であることも学びました。また患者さんとのコミュニケーションが重要ということはいうまでもありません。
その患者さんとのコミュニケーションについて大事なことを皆さんにお話ししておきたいと思います。患者さんは看護師と初めて接するとき当然ながら医療従事者であるプロフェッショナルな看護師として見ると思います。一方で皆さんは看護師として初めての患者さんと接する時、一患者としてコミュニケーションをスタートさせますか?
アメリカの看護学者であるジョイス・トラベルビー先生は、看護師が患者さんと初めて接する時、一患者としてみるか一人の人間として見てコミュニケーションをスタートするかでは、その後の関係性に大きな違いが出てくると述べておられます。
すなわち看護師が患者さんと接する時のコミュニケーションのスタートは患者さんを一人の人間としてみて接していくことが、その後の良い関係性のためには非常に大事だということです。そしてそのように接していくうちに患者さんも看護師を医療スタッフの看護師としてだけでなく一人の人間として認識するようになる。そこにお互いの人間対人間としての信頼関係が生まれると記しておられます。
患者さんの個性も様々です。話好きな人もいれば、あまり誰とも接したくない方もいらっしゃいます。ましてや病気を患っていらっしゃるわけですからそっとしておいて欲しいという方もいらっしゃいます。
病気のケアをすることは看護師としてもちろん大事ですが、病気を患っていらっしゃる一人の人間としてその方の個性に応じたコミュニケーションをとっていくことがプロフェッショナルである看護師には必要と考えます。
よく患者さんに寄り添う看護という言葉を聞きますが、患者さんごとに寄り添い方が違うということを認識しておくべきだと考えます。
ただ、コミュニケーション、寄り添うだけでは医療・看護は成立しません。しっかりとした医療・看護を実践するためには自分自身の技量、スキルを上げることが必要です。そのためには学び続けること、日々前進することを心掛けておいてください。
そして健康には十分注意してください。自分が健康でないと患者さんの健康を守ることにも支障をきたします。また、心の健康も大事にしてください。心が折れそうになったとき、そんな時に支えになるのはご家族はもちろんですが、友人、先輩そして師匠とよべる人ではないかと思います。これまでの友情をさらに育み、また新たな出会いを見つける努力をしてください。
みなさんの4月からの新生活にエールを送りたいと思います。
みんなはまだまだ若い。将来の大きな夢を抱いて元気で楽しく頑張ってください。
本日はおめでとうございました。
令和7年3月5日
学校長 岡田 裕之
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