看護学校からのお知らせ

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令和5年度卒業式 学校長式辞

皆さん、ご卒業おめでとうございます。また、今日まで支えて来られた保護者の皆様にもお慶びを申し上げます。そして、ご多忙のところ、お足元の悪い中、御臨席を賜りました、姫路市長 清元秀泰先生はじめご来賓の方々には誠に有難うございます。

さて、卒業生皆さんの本校での学生生活はコロナに始まりましたが、3年生になってからは、ようやくコロナ禍も治まってきて感染症2類から5類に変わったことで、数々の規制も緩和されて、ほぼ通常の学生生活に戻れたのではないかと思います。

 そして今日の卒業を迎えることができたのも、皆さんご自身の努力はもちろんのこと、温かく見守って下さったご家族の愛情、また厳しくもやさしさを持って熱心に指導してくださった先生方の支えによるものです。まずこの点に敬意、感謝を表していただきたいと思います。

3年生の1年間にはいろいろなことがありました。まずはこの元旦に起こった能登半島地震、多くの方がお亡くなりになりましたし、今なお不自由な生活を強いられている被災者の方々も多数いらっしゃいます。

姫路赤十字病院も今まで医師、看護師、薬剤師、技師、事務職員など多職種からなる救護チームを順次派遣しています。また、看護師も自ら志願して現地の病院で看護業務にあたっています。皆さん使命感を持って現地に赴いてくれています。

卒業生の皆さんは3年間、医療、看護の学習だけでなく、赤十字の人道・博愛の精神も学んできたと思います。そして国内外の災害救援についても学び、実習の体験もしたと思います。今回の地震災害、そして災害救護のニュースを見て特別な思いにかられた方も多いのではないかと思います。

一方でおめでたいこともありました。本校の卒業生で姫路赤十字病院の看護副部長である高原美貴さんがナイチンゲール記章を受章されたことです。2年に一度世界中の看護師さんの中から選ばれる国際的な記章で、昨年は世界で34人の方が選ばれ日本からは3人の方が選ばれました。大正時代から始まる記章ですが、本校卒業生では8人目の快挙です。雅子皇后陛下ご臨席のもと行われた授与式は厳粛で素晴らしいものでした。日本人3人の中で現役の看護師さんは高原さんだけで、10数回に及ぶ国内外での災害救援活動、そしてそのリーダー的働きが評価されたものです。現在もシリアで支援活動を行なっています。皆さんの中にも国際救援活動に関心がある方もいらっしゃいますが、非常に身近でこれ以上ないロールモデル、お手本かと思います。

 

さて、皆さんは4月から多くの方は念願の看護師として医療現場での第一歩を踏み出すことになります。そして進学される方もいらっしゃいます。それぞれの医療人としての目標に向かって、急ぐことなく一歩ずつ歩んでいってほしいと思います。

 

その中でひとつ覚えておいてほしい言葉があります。「ホリスティックな医療」という言葉をご存じでしょうか。「ホリスティック」とは全体とか包括といった意味です。そして「ホリスティックな医療」、それは身体、精神そして環境が程よく調和した健康を目指すものです。患っている臓器を治す、すなわちcureするだけでなく、不自由なところを介助したりし、患者さんを慰めたり、精神的なサポートにも努める、臓器ではなく人間のcareが必要であり、また病気の人が安心して生活できる社会環境も必要だということです。

我々医療者はこのような「ホリスティックな医療」を目指すべきであり、その中で多くの看護師さんは主としてcareの部分を担当することになるかと思います。

care の現場において看護師さんはどのようなことに努めれば良いかということについて19世紀の終わりにジョンズ・ホプキンス大学に医学部を作ったウイリアム・オスラー先生が次のようにおっしゃっています。今日の医学教育の基礎を築いた先生です。

ナースは7つの徳を持たなくてはいけない。明るさ、凛々しさ、優しさ、微笑み、暖かさ、清潔、そして寡黙、はじめの6つは大体その通りと理解できると思いますが、7つめの寡黙というのは、患者さんのお話しをしっかりと聴き、会話の中では「言葉の間も大事である」ということかと考えます。ただ、その7つの徳だけでは医療・看護は成立しません。しっかりとした医療・看護を実践するためには自分自身の技量、スキルを上げることが必要です。そのためには学び続けること、日々前進することを心掛けておいてください。

そして健康には十分注意してください。自分が健康でないと患者さんの健康を守ることにも支障をきたします。また、心の健康も大事にしてください。心が折れそうになったとき、そんな時に支えになるのはご家族はもちろんですが、友人、先輩そして師匠とよべる人ではないかと思います。これまでの友情をさらに育み、また新たな出会いを見つける努力をしてください。みなさんの4月からの新生活にエールを送りたいと思います。元気で楽しく頑張ってください。

本日はおめでとうございました。

    令和6年3月5日                                                         

                         学校長 岡田 裕之