乳腺外科

Triple Negative乳ガンの新しい薬剤

ついに実践開始となったPARP阻害剤

ここを読まれる前に私が書いた記事“PARPとトリプルネガティブ”を読んでいただきたい。なんと薬が作られてから保険適応が取れるまで実に2011.5.26から7年近い時間が必要だったのだ。概念が生まれ、開発が進み、実際に薬ができ、それが効くことが“証明される”までは10年は軽くかかってしまうのだろう。

2017年米国臨床腫瘍学会ASCOで発表されたOlympiAD試験によって、PARP阻害剤“オラパリブ”がTriple negative乳ガン(実はだけではない)に効くことが初めて証明された(私は世界で最初に発表されるその会場で聞いていた医師の一人です。自慢。)。

オラパリブ試験デザイン

ASCO ANNUAL MEETING '17 Mark Robson, MD

上のスライドがその試験のデザインであるが、もしかすると結果よりも重要なスライドになる。何故か。前述のとおりどういう人に効くと証明されたか、によって保険が通る、通らないが変わってしまうからである。

さてその条件は、まず 1 HER2陰性の“転移性”乳ガンであること(ここで重要なのはTriple negativeの方だけではないことである。ホルモンレセプター陽性でもHER2陰性なら適応である) 2 生まれつきBRCA遺伝子に異常があること 3 前もってアンスラサイクリン、タキサン系薬剤で治療がなされていること 4 転移が発見されてから2レジメンより多くの治療は受けていないこと などなど(以下はTriple negative乳ガンに直接関係しないので省略する)。

こうした方に対してオラパリブ(製品名:リムパーザ)は、従来の薬と比較して約3か月間進行を遅らせることに成功した(4.2か月が7.0か月へ)。それが下のグラフである。そしてその効果はTriple negative乳ガンではホルモンレセプター陽性患者さんよりも、より良好な結果だった。

オラパリブと従来の薬の比較グラフ

ASCO ANNUAL MEETING '17 Mark Robson, MD

Triple negative乳ガン患者さんの新しい治療法の道が開けた瞬間である。

そしてここでもう一度コンパニオン診断について読み直していただきたい。

この薬の保険が通る条件は、1 転移再発乳ガンであること 2 HER2陰性であること(Triple negative乳ガンも当然含まれる) 3 前もってアンスラサイクリン、タキサン系薬剤で治療がなされていること(ホルモンレセプター陽性患者さんではホルモン治療もされていること)そして4 遺伝子BRCAに生まれつき異常があること となる。

実は現在 遺伝子BRCAに異常があるかどうかは保険適応ではない。そこで1、2、3を満たす人には遺伝子BRCA異常の検査の保険を通し(コンパニオン診断)、4 異常があった人のみリムパーザを保険適応としたのである。

3.乳ガンにも免疫薬剤