内科

膠原病

膠原病患者さんへ

 「膠原病」は患者さんにとって“わかりにくい病院言葉”の代表格です。膠原病は「免疫」の病気で、総称です。免疫は異物から体を守るための正常な生体防御反応であり、本来は自己と異物とを正確に区別しています。しかし、何らかの原因で、自分の体の成分(自己抗原)を異物と認識するリンパ球ができてしまうと、抗体(自己抗体)が産生されます。やがて、体に害を及ぼす持続的な免疫応答を生じるようになれば、病気(自己免疫疾患)として認識されます。免疫応答には強弱さまざまな「炎症」をともなうため、発熱、疼痛(関節、筋肉など)、皮疹、全身倦怠感、食欲不振などの全身症状として自覚されます。さらに問題なことに、炎症は組織を傷害しますが、全身の重要臓器(肺、腎臓、神経、心臓など)に波及した場合、放置すれば不可逆的、致命的な臓器不全に至ります。したがって、膠原病が疑われる場合には、他の病気と同様に、早期診断と早期治療が必要です。しかし、膠原病には、(A)原因が一つではない、(B)症状と臓器障害が多彩である、(C)ゆっくり発症する、という特徴があるため、早期の確実な診断は難しく、専門医への受診が勧められます。


 自己抗体の種類と障害されやすい臓器の組み合わせは膠原病の種類によって異なることを利用して、全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎、顕微鏡的多発血管炎などを区別して診断します(いわゆる診断基準、正確には分類基準)。膠原病には上記のような共通した病態があるため、治療もおおむね共通しています。関節リウマチでは「抗リウマチ薬」が中心となりますが、全身性エリテマトーデスなど多くの膠原病では、炎症と免疫を抑える力の強い「ステロイド薬」を基本として、難治例や再燃例では「免疫抑制剤」を併用してステロイド薬の作用を補助します。症状の改善および重要臓器における炎症を早期、確実に鎮静化させることが短期的な治療目標であり、初期には強力な治療(大量ステロイド薬と免疫抑制剤の併用)を行います。この時期(約1ヶ月)は、入院にて厳重に管理しています。




 病気が完全に鎮静化した、いわゆる「寛解」の状態まで改善しても治療を中止するとほとんどが「再燃」するため、弱い治療を長期に続けます。治療薬には「副作用」も多いため、有効性だけではなく、安全性への配慮も求められます。再燃を防ぎつつ、治療薬の副作用をできるだけ減らすことが長期的な治療目標であり、膠原病患者であっても健康長寿をめざすための条件です。そのためには薬物療法だけではなく、適切な患者教育と信頼関係が欠かせません。ステロイド薬には日和見感染症、骨粗鬆症、大腿骨頭壊死、ステロイド精神病などの重篤な副作用をはじめ、糖尿病、脂質異常症、肥満、ムーンフェイス、高血圧、白内障、緑内障、ざ瘡、不眠、胃潰瘍、筋萎縮など多くの副作用がみられます。これらの副作用には、(A)出やすさに個人差がある、(B)ステロイド量が減ればリスクも減る、(C)一部は予防できる、という特徴があります。副作用が多くても、ステロイド薬は膠原病治療に欠かせないため、副作用をできるかぎり減らす工夫と努力が相互に求められます。当科で実践している指導内容(①ステロイド薬の副作用を軽減するための栄養相談②膠原病の治療効果を高めるための栄養相談)をPDFで添付しますので、是非ご一読ください。