肝臓病学の最新文献抄読
Surviving Sepsis Campaign: International Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock: 2016
が発表されました.そこでRecommendations and Best Practice Statementsについて,勉強会で日本語に訳しました.
Surviving Sepsis Campaign: International Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock: 2016
敗血症国際ガイドライン
Recommendations and Best Practice Statements 推奨とBest Practice Statements
※recommend(推奨)>suggest(提案)>BPSの順に強い.
※Best Practice Statements (BPS)とは「最善の医療行為の提言」という意味である.
gradingして推奨を付与するには
至らない項目,一定の条件下でのみ妥当な項目,
有効性と有害性が拮抗しエビデンスがない項目などが含まれる.
A. 初期蘇生
- 敗血症および敗血症性ショックは医学上の緊急事態である.直ちに治療と蘇生を始めることを推奨する(BPS).
- 敗血症による血圧低下の蘇生において,最初の3時間以内に少なくとも30mL/kgの電解質輸液を投与することを推奨する(強い推奨,低エビデンス).
- 最初の蘇生輸液の後,追加の輸液は血行動態の評価を頻繁に行って調整することを推奨する(BPS).
備考:評価を繰り返す項目は,全身の診察や検査所見,臨床指数の測定(心拍数,血圧,動脈血酸素飽和度,呼吸数,体温,尿量など),更に可能な場合には侵襲的または非侵襲的なモニタリング・データも含める.
- 臨床検査でショックのタイプが明らかにならない場合は,血行力学的評価(心機能など)を行って,ショックのタイプを鑑別することを推奨する(BPS).
- 輸液に対する反応を予測する上で,可能であれば,静的変数よりも動的変数を用いることを提案する(弱い推奨,低エビデンス).
※(訳者注)静的変数とはCVP,右ないし左心室圧やその容量など.動的変数とは下肢挙上や輸液負荷に対する心拍出量や収縮期圧,脈圧の変化,人工換気による胸腔内圧の変化に応じた心拍出量の変化など.
- 昇圧剤を必要とする敗血症性ショックの患者では,平均動脈圧65mmHgを最初の目標にすることが推奨される(強い推奨,中エビデンス).
- 乳酸値が上昇している患者では,乳酸値を組織低灌流の指標と捉え,その値が正常化することを目指して蘇生を行うことを提案する(弱い推奨,低エビデンス).
B.敗血症の早期発見とパフォーマンスの向上
- 病院は敗血症治療の改善プログラムを持つことが推奨される. 例えば,重症患者,高リスク患者に対する敗血症の早期発見等である(BPS).
C.診断
- 敗血症や敗血症ショックの疑いがある患者では,抗菌薬の投与を始める前に,培養検査(血液など)を適切かつルーチンに行うことを推奨する. 抗菌薬の投与開始が不相応に遅れない場合に限る.
備考:ルーチンの適切な培養検査として,必ず少なくとも2セットの血液培養(好気性および嫌気性)を行う.
D. 抗菌薬療法
- 抗菌薬の静脈投与は,感染の確認後できるだけ早く開始する.特に敗血症と敗血症性ショックでは1時間以内に始めることが推奨される(強い推奨,中エビデンス).
- 敗血症や敗血症性ショックの患者に対する抗菌薬のエンピリック治療は,1つまたは複数の抗菌薬を用いて,可能性のある全ての病原体を広域にカバーすることを推奨する(細菌,場合によっては真菌やウイルスもカバーする)(強い推奨,中エビデンス).
- 病原体が同定されて感受性が判明し,臨床的にも相応の改善が認められた場合,エンピリック治療に使用した広域スペクトル抗菌薬を,スペクトルを絞った抗菌薬に変更することを推奨する(BPS).
- 非感染性の重症の炎症性疾患(例えば,重症膵炎,熱傷)の患者に,予防的な抗菌薬の全身投与を続けないことを推奨する(BPS).
- 敗血症や敗血症性ショックの患者に対する抗菌薬の投与量は,薬物動態/薬力学的原則,および個々の薬物の特性に基づいて,最適化することを推奨する(BPS).
- 敗血症性ショックの初期治療において,最も可能性の高い細菌に対するエンピリックな併用療法を提案する(異なるクラスの抗菌薬を少なくとも2剤用いる)(弱い推奨,低エビデンス).
備考:エンピリック(経験的)治療,標的治療/確定治療,広域スペクトル,併用療法,多剤療法の定義について,表6を参照のこと.
- 菌血症や非ショック性敗血症を含む,敗血症性ショック以外のほとんどの重症感染症の治療に,併用療法をルーチンに行うことは提案しない(弱い推奨,低エビデンス).
備考:これは抗菌活性を広げるための多剤療法を排除するものではない.
- 好中球減少性敗血症/菌血症の日常的治療には,併用療法は推奨しない(強い推奨,中エビデンス).
備考:これは抗菌活性を広げるための多剤療法を排除する意味ではない.
- 敗血症性ショックに対して併用療法を始めた場合,臨床兆候や感染兆候が確実に改善すれば,最初の数日以内に併用療法を終了し,デ・エスカレーションすることを推奨する. これは,起炎菌の明らかな場合の治療(培養陽性の感染症)と経験的治療(培養陰性の感染症)の,両方の併用療法に当てはまる(BPS).
- 敗血症および敗血症性ショックを併発したほとんどの重症感染症において,7〜10日間の抗菌薬の投与が適切であると提案する(弱い推奨,低エビデンス).
- 臨床的改善が遅い症例,感染巣のドレナージができない症例,黄色ブドウ球菌による菌血症,特定の真菌およびウイルス感染症,好中球減少症を含む免疫低下例では,抗菌薬の投与期間を延長することを提案する(弱い推奨,低エビデンス).
- 腹腔内や泌尿器に起因する敗血症で,感染病巣の処置が有効に行われて迅速な臨床的改善が得られている場合や,単純性腎盂腎炎(器質的異常がない症例)など,一部の患者では,抗菌薬の投与期間を短縮することを提案する(弱い推奨,低エビデンス).
- 敗血症および敗血症ショックの患者では,抗菌治療のデ・エスカレーションが可能かどうか,毎日評価することを推奨する(BPS).
- プロカルシトニン値は,敗血症患者の抗菌薬の投与期間を短縮する判断に役立つと提案する(弱い推奨,低エビデンス).
- 最初は敗血症が疑われたが,その後に感染症の臨床的証拠が揃わない患者において,プロカルシトニン値を経験的抗生物質治療の中止の判断に使用できることを提案する(弱い推奨,低エビデンス).
E. 感染病巣の処置
- 敗血症や敗血症ショックの患者では,直ちに感染病巣の処置が必要な特定の解剖学的所見を,可能な限り迅速に発見ないし否定することを推奨する. 診断がつき次第,医学的かつ資源的に適用可能なあらゆる方法で,感染病巣の処置を始めることを推奨する(BPS).
- 敗血症や敗血症性ショックの原因となる血管内デバイスについては,他の血管のアクセスが確保されたら,迅速に抜去することを推奨する(BPS).
F. 輸液療法
- 血行力学的指標が改善し続ける限り,チャレンジ法によって輸液投与を継続することを推奨する(BPS).
- 敗血症や敗血症性ショックの患者の初期蘇生輸液,更にその後に血管内容量を保つ目的の輸液製剤として,電解質輸液を推奨する(強い推奨,中エビデンス).
- 敗血症や敗血症ショックの患者の蘇生輸液には,バランス電解質液か生理食塩水のいずれかを使用することを提案する(弱い推奨,低エビデンス).
- 敗血症や敗血症ショックの患者で,かなりの量の電解質輸液が必要な場合には,初期蘇生とその後の血管内容量を保つ目的に,アルブミンを電解質輸液に加えて使用することを提案する(弱い推奨,低エビデンス).
- 敗血症や敗血症ショックの患者では,血管内容量を保つ目的にヒドロキシエチルスターチは使用しないことを推奨する(強い推奨,高エビデンス).
- 敗血症や敗血症性ショックの患者の蘇生には,ゼラチン製剤よりも電解質輸液の使用を提案する(弱い推奨,低エビデンス).
G. 昇圧剤の投与
- 昇圧剤として第一にノルエピネフリンを推奨する(強い推奨,中エビデンス).
- 平均動脈圧を目標値に上げる目的で,ノルエピネフリンにバソプレシン(0. 03U/分まで)(弱い推奨,中エビデンス)かエピネフリン(弱い推奨,低エビデンス)のいずれかを追加するか,ノルエピネフリンの投与量を減らすためにバソプレシン(最大0. 03U/分)(弱い推奨,中エビデンス)を追加することを提案する.
- 昇圧剤としてノルエピネフリンの代わりにドーパミンを使用するのは,ごく一部の患者に限るべきであると提案する(例えば,頻脈性不整脈のリスクが低い患者,絶対ないし相対的徐脈の患者)(弱い推奨,低エビデンス).
- 腎保護のために低用量のドーパミンを使用することは推奨しない(強い推奨,高エビデンス).
- 十分な輸液負荷や昇圧剤の使用にもかかわらず,低灌流の所見が続く患者には,ドブタミンを使用することを提案する(弱い推奨,低エビデンス).
備考:ドブタミンを開始した場合,組織灌流によって決めた目標量まで投与量を調整し,低血圧や不整脈が悪化した場合には減量か中止する必要がある.
- 昇圧剤を必要とするすべての患者は,可能であれば速やかに動脈カテーテルを留置することを提案する(弱い推奨,非常に低エビデンス).
H. コルチコステロイド
- 十分な蘇生輸液と昇圧療法によって血行力学的な安定が回復できた場合,敗血症性ショックの治療目的でヒドロコルチゾンを静注することは推奨しない. 回復しない場合は,1日200mg量のヒドロコルチゾンの静注を提案する(弱い推奨,低エビデンス).
I. 血液製剤
- 心筋虚血,重度の低酸素血症,急性出血などの所見がない場合,成人の赤血球輸血はHb 7. 0 g/dL未満に低下した場合にのみ行うことを推奨する(強い推奨,高エビデンス).
- 敗血症に関連した貧血の治療にエリスロポエチンは推奨しない(強い推奨,中エビデンス).
- 出血や侵襲的処置の予定がなければ,凝固異常を補正するために新鮮凍結血漿を投与することは提案しない(弱い推奨,非常に低エビデンス).
- 明らかな出血がない場合は血小板数<10,000/mm3,重大な出血のリスクがある場合は血小板数<20,000/mm3(20×109/L)において,予防的な血小板輸血を提案する. 出血の持続,手術,または侵襲的な処置を行う場合は,より高い血小板数≧50,000/mm3が推奨される(弱い推奨,非常に低エビデンス).
J. 免疫グロブリン
- 敗血症や敗血症性ショックの患者に静注の免疫グロブリンの使用は提案しない(弱い推奨,低エビデンス).
K. 血液浄化療法
- 血液浄化技術に関する推奨はない.
L. 抗凝固療法
- 敗血症や敗血症ショックの治療にアンチトロンビンの使用は推奨しない(強い推奨,中エビデンス).
- 敗血症や敗血症性ショックの治療におけるトロンボモジュリンやヘパリンの使用に関する推奨はない.
M. 人工換気
- 敗血症による急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の成人患者では,12mL/kgよりも6mL/kgの換気量を目標にすることを推奨する(強い推奨,高エビデンス).
- 敗血症による重症ARDSの成人患者では,プラトー圧の目標としてより高い圧ではなく30cmH2Oを上限にすることを推奨する(強い推奨,中エビデンス).
- 敗血症による中等症から重症のARDSの成人患者において,低いPEEPよりも高いPEEPを用いることを提案する(弱い推奨,中エビデンス).
- 敗血症による重症ARDSの成人患者において,肺胞リクルートメント法の使用を提案する(弱い推奨,中エビデンス).
- 敗血症によるARDSおよびPaO2/FiO2<150の成人患者では,仰臥位より腹臥位を推奨する(強い推奨,中エビデンス).
- 敗血症によるARDSの成人患者では,高頻度振動換気は推奨しない(強い推奨,中エビデンス).
- 敗血症によるARDS患者において,非侵襲的換気法に関する推奨はない.
- 敗血症によるARDSおよびPaO2/FiO2<150の成人患者において,神経筋遮断剤の使用は48時間以下に留めることを提案する(弱い推奨,中エビデンス).
- 敗血症によるARDSの診断が確定した患者で,組織低灌流の徴候が見られない場合,控えめな輸液戦略を推奨する(強い推奨,中エビデンス).
- 気管支攣縮のない敗血症によるARDS患者の治療にβ2アゴニストを使用することは推奨しない(強い推奨,中エビデンス).
- 敗血症によるARDSの患者に,肺動脈カテーテルを日常的に挿入することは推奨しない(強い推奨,高エビデンス).
- 敗血症による呼吸不全だがARDSではない成人患者において,低い一回換気量を提案する(弱い推奨,低エビデンス).
- 人工換気中の敗血症患者は,誤嚥のリスクを減らして人工呼吸器関連肺炎の発症を防ぐため,ベッドの頭側を30〜45度挙上して維持することを推奨する(強い推奨,低エビデンス).
- 人工換気中の敗血症の患者で抜管の準備ができている場合,自発呼吸試験を行うことを推奨する(強い推奨,高エビデンス).
- 人工換気中の敗血症による呼吸不全の患者で抜管に耐えられる場合,ウィーニング・プロトコルを開始することを推奨する(強い推奨,中エビデンス).
N. 鎮静と麻酔
- 人工換気中の敗血症患者において,連続的または間欠的な鎮静は,一定の目標値を定めて最小限にすることを推奨する(BPS).
O. 血糖管理
- 敗血症のICU患者の血糖管理では,プロトコル化されたアプローチを推奨する. 2回連続して血糖値>180mg/dLの場合,インスリン投与を開始する. このアプローチにおいて血糖値の上限目標は≦180mg/dLに設定するべきであり,≦110mg/dLではない(強い推奨,高エビデンス).
- インスリン投与中の患者では,血糖値とインスリン注入速度が安定するまで1〜2時間ごとに血糖値を測定し,その後は4時間ごとに測定することを推奨する(BPS).
- ベッドサイドで検査した毛細管血の血糖値は,動脈血や血漿のグルコース値を正確には反映しないため,慎重に解釈することを推奨する(BPS).
- 動脈カテーテルが留置されている患者では,ベッドサイドで毛細管血の血糖を測定するより,動脈血による血糖測定を提案する(弱い推奨,低エビデンス).
P. 透析療法(腎機能代替療法)
- 敗血症や急性腎障害の患者では,持続的或いは間欠的,いずれの透析療法も使用できることを提案する(弱い推奨,中エビデンス).
- 血行動態の不安定な敗血症患者の体液バランスの管理を行う場合,持続的透析療法を提案する(弱い推奨,非常に低エビデンス).
- 敗血症や急性腎障害患者では,クレアチニンや乏尿の他に確実な透析療法の適応がない場合,透析療法はしないことを提案する(弱い推奨,低エビデンス).
Q. 重炭酸療法
- 組織低灌流によって誘発されたpH≧7. 15の高乳酸血症の患者において,血行動態を改善する目的や昇圧剤の必要量を減らす目的で重炭酸ナトリウムを投与することは提案しない(弱い推奨,中エビデンス).
R. 静脈血栓塞栓症の予防
- これらの薬剤に対する禁忌がない場合,静脈血栓塞栓症に対する薬理学的予防を推奨する(未分画ヘパリンまたは低分子量ヘパリン)(強い推奨,中エビデンス).
- 低分子量ヘパリンに対する禁忌がない場合,静脈血栓塞栓症の予防のために未分画ヘパリンではなく低分子量ヘパリンを推奨する(強い推奨,中エビデンス).
- 可能であれば,静脈血栓塞栓症の予防において薬理的方法と機械的方法を併用することを推奨する(弱い推奨,低エビデンス).
- 静脈血栓塞栓症の薬理学的予防法が禁忌である場合,機械的な予防法を推奨する(弱い推奨,低エビデンス).
S. ストレス性潰瘍の予防
- 消化管出血の危険因子を有する,敗血症または敗血症ショックの患者では,ストレス潰瘍の予防を行うことが推奨される(強い推奨,低エビデンス).
- ストレス潰瘍の予防において,プロトンポンプ阻害薬またはH2受容体拮抗薬のいずれかを使用することを提案する(弱い推奨,低エビデンス).
- 消化管出血の危険因子がない患者では,ストレス潰瘍の予防は推奨しない(BPS).
T. 栄養療法
- 敗血症や敗血症性ショックの重症患者で経口摂取が可能な場合,早期から非経口栄養剤単独,或いは非経口栄養剤を経腸栄養と組み合わせて投与することは,推奨しない(強い推奨,中エビデンス).
- 敗血症や敗血症性ショックの患者で,早期の経口摂取が不可能な場合でも,最初の7日の間から非経口栄養を単独または経腸栄養と組み合わせて開始することは推奨しない(むしろブドウ糖の点滴投与を開始して,可能になったなら経腸栄養を始める方を推奨する)(強い推奨,中エビデンス).
- 敗血症や敗血症性ショックの重症患者で,経口摂取が可能な場合,絶食やブドウ糖の点滴投与よりも,早期に経腸栄養を開始することを提案する(弱い推奨,低エビデンス).
- 敗血症や敗血症性ショックの重症患者では,初期経腸栄養剤/低カロリー製剤か完全経腸栄養を,早期に開始することを提案する. 初期経腸栄養剤/低カロリー製剤で開始する場合,患者の耐性を見ながら内容を向上させるべきである(弱い推奨,中エビデンス).
- 敗血症や敗血症ショックの重症患者に,オメガ3脂肪酸を免疫補助剤として使用することは推奨しない(強い推奨,低エビデンス).
- 敗血症や敗血症性ショックの重症患者において,胃残留量を日常的にモニターすることは提案しない(弱い推奨,低エビデンス). しかし,摂食不耐性や誤嚥のリスクが高いと考えられる患者では,胃残留量のモニターを提案する(弱い推奨,非常に低エビデンス).
備考:この推奨は,非外科系の敗血症,敗血症性ショックの重症患者を 対象とする.
- 敗血症や敗血症性ショックの重症患者において,摂食不耐性が見られる場合,胃運動調節剤の使用を提案する(弱い推奨,低エビデンス).
- 敗血症や敗血症性ショックの重症患者において,摂食不耐性または誤嚥の危険性が高いと考えられる場合,空腸栄養チューブの留置を提案する(弱い推奨,低エビデンス).
- 敗血症や敗血症ショックの治療目的に静注セレンを投与することは推奨しない(強い推奨,中エビデンス).
- 敗血症や敗血症ショックの治療目的にアルギニンを投与することは提案しない(弱い推奨,低エビデンス).
- 敗血症や敗血症ショックの治療目的にグルタミンを投与することは推奨しない(強い推奨,中エビデンス).
- 敗血症や敗血症ショックの治療目的にカルニチンを投与することに関する推奨はない.
U. ケアの終点の設定
- ケアの終点と予後について,患者や家族と話し合うことを推奨する(BPS).
- 治療計画と終末期ケア計画にケアの終点を組み込むことを推奨する. 適切な場合には緩和ケアも利用する(強い推奨,中エビデンス).
- 可能な限り早く,遅くともICU入室後72時間以内にケアの終点を設定することを提案する(弱い推奨,低エビデンス).
表6. 抗菌役に関する重要な用語
- A. Empiric therapy:経験的治療
病原微生物が同定されていない状態で開始する最初の治療.経験的治療は単剤,併用,広域スペクトル,多剤療法のいずれもあり得る.
- B. Targeted/definitive therapy:標的治療/確定治療
特定の病原微生物を標的とする治療(普通はその同定後に行われる). 標的/確定治療は単剤,併用のどりらもあるが,広域スペクトルであることを意図するものではない.
- C. Broad-spectrum therapy:広域スペクトル療法
可能性のある病原微生物の範囲をカバーする特別な目的のために,スペクトルを広くして行う単剤ないし複数薬剤による抗菌剤療法.普通は経験的治療において採用される(例えば,ピペラシリン/タゾバクタム+バンコマイシン+アニドラファンギン.各々は異なる群の病原体をカバーするために使用する). 広域スペクトル療法の従来の目的は,病原体が同定されていない時に,可能性のある範囲の病原体に対する抗菌活性を最低でも1つの薬剤が持つことを保証することにある.従って広域スペクトル療法は通常,経験的治療である.複数の病原体が分離された場合など,時には広域スペクトル療法を標的治療/確定治療に移行して継続することもある.
- D. Multidrug therapy:多剤療法
-
経験的治療において広い抗菌スペクトルを得るために複数の抗菌剤で行う治療(病原体が未知の場合),或いは,同定ないし疑われている特定の病原体の駆除を早めるために行う複数の抗菌剤治療(併用療法)(標的治療と経験的治療の両方の場合がある). したがってこの用語は併用療法の概念を包括する.
- E. Combination therapy:併用療法
-
同定ないし疑われている特定の病原体をカバーする複数の抗生物質(通常は異なるクラス)を使用するが,病原体の駆除を早めるのが目的であり,抗菌スペクトルを広げるためではない.(例えば,グラム陰性菌に対するピペラシリン/タゾバクタム+アミノグリコシドorフルオロキノロンなど).併用療法は他にも,細菌の毒素産生の抑制(例えば,連鎖球性菌毒性ショック症候群に対するβ-ラクタム+クリンダマイシン),免疫調節効果の可能性(肺炎球菌性肺炎に対してβ-ラクタム+マクロライド)などを意図して行う.