今月のドクター

 私は平成元年(1989年)4月1日に当院へ赴任しました。34歳でした。 今年は令和と改元され、二つの時代を当院で30年以上消化器疾患を中心に勤務してきました 。
 内視鏡や超音波検査の世界では、昭和の終わりから平成初期の移行期はファイバースコープからビデオ内視鏡・超音波内視鏡が普及し始めた頃でした。 赴任時はファイバースコープの時代でした。2年後、初期のビデオ内視鏡システム・超音波内視鏡が当院へ導入されました。ファイバースコープではリアルタイム画像は検査する医師(またはレクチャースコープでもう一人の医療スタッフ)にしか確認できませんでした。
 画像はアナログフィルムに撮影し現像後に内視鏡カンファレンスで読影していました。患者さんが画像を見られるのは検査の1-2週間後でした。 今では若い研修医・看護師さんなど医療スタッフともに、場合によっては患者さんの目の前でリアルタイム画像を提示して説明や治療ができる時代になりました。内視鏡画像はファイリングシステムにデジタル保存され、電子カルテで医療スタッフが院内どこでも確認でき、患者さんやご家族に説明が出来ます。 
 カルテも手書きの紙カルテから電子カルテとなってかれこれ10年以上なります。 昔は紙カルテをめくったりレントゲン写真を棚や倉庫からフィルムを出して一枚一枚確認したり、紙カルテに貼り付けられた採血データを探し出していました。 今では液晶画面で採血の結果も、内視鏡・CT・超音波などの画像、他科の診療記録、コメディカルの記録などすべて確認できます。電子カルテの発明により昔から考えると非常に便利な時代になったと思います。
 便利になった反面、最近では自分を含めて患者さんから寄せられる苦情は、医師が電子カルテの画面ばかり見て、自分の顔をみてもくれない、腹が痛いのに触りもしないし、聴診器も当ててくれないということです。
忙しいとつい電子カルテの画面だけをみて、患者さんの顔も見ずに、問診や現症もほどほどにして検査ばかり指示している自分に気づいて、反省することもあります。 ヒトが発明したコンピュータシステムで採血結果、画像検査はすべてデジタル化され画面に表示されます。それだけでは冷たく無機的なものです。それを暖かみのある有機的な活用するのが医師としての自分の仕事だと反省を繰り返す今日この頃です。
 電子カルテの画面の向こうとこちらに患者さんの「いのち、生命」があるはずです。みようとしても見えないものかもしれませんが、見ようとしなければ見えないだろうと思います。
 数字でも画像でもないのが「いのち、生命」のはずです。いのちを見つめ続けることが仕事を続けることだと心がけています。  今後も当院で仕事を続けさせていただく予定です。先生方には引き続き宜しくお願い申し上げます。

姫路赤十字病院 第一消化器部長 森下 博文

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