呼吸器外科

呼吸器外科

肺がんについて

治療方法

病期により治療方法が変わってきます。

  • I,II期:原則手術療法の対象となります。
  • III期:
  • ●手術を行わずに抗がん剤+放射線同時併用療法を行う場合
    ●抗がん剤+放射線同時併用療法を行い手術を行う場合
    ●まず手術を行い術後に抗がん剤を行う場合
    などがあり、症例によって様々な選択肢があります。

  • IV期:
  • 一般的には手術適応がなく抗がん剤を中心に治療を行います。ただ転移巣が1個の場合は(例えば単発性脳転移,単発性骨転移)は,転移巣に根治的な治療(たとえば手術)を行えることを条件に肺の手術を行うことがあります。

その他治療方法の決定に影響を与える因子

年齢、肺機能、体力等も治療方針を決める上で重要です。たとえばI期肺がんで通常では手術を勧めるところですが、肺機能が悪かったり、高齢であったりする場合はあえて手術ではなく放射線治療を選択することもあります。さらに高齢の方の小さな肺がんは治療せず様子を見ることもあります。

肺がんの手術方法

1. 切除する肺の大きさによる分類

肺がんに対する標準的な手術はがんが発生した肺葉ごと切除し,その周囲のリンパ節を郭清するのが一般的です。しかし,最近は画像診断の進歩により,小さい肺がんが発見されるようになり,手術の方法も症例により選択するようになってきています。場合によってはがんの病巣のみを切除 (部分切除) したり,区域切除という肺葉よりも小さな範囲の切除で済む場合もあります。逆にがんが大きいため片肺を全部取る(左肺全摘除など)、肋骨に浸潤していて胸壁を合併切除する拡大手術もあります。

(ア) 肺部分切除(この場合は右の下葉の一部を切除するので右下葉部分切除と呼びます)




(イ) 肺葉切除(この場合は右の上葉を切除するので右上葉切除と呼びます)




(ウ) 肺全摘(左の肺を全部切除するのでこの場合は左肺全摘と呼びます)




2. 傷の大きさで分ける分類
(ア)開胸手術

肺がんの手術は,以前は開胸といって,側胸部に20-30cmの皮膚切開をおいて肋骨の隙間を開いて,外科医の手を直接胸の中に入れて手術を行う方法が採られていました。手術操作は行いやすいのですが,術後の痛みが強い傾向があります。

(イ)胸腔鏡手術
1990年代前半から,医療光学器械の進歩によって胸腔鏡(胸腔鏡:内視鏡の一種)を用いて小さな手術創で肋骨を大きく開くことなく肺がんの手術を行うことが出来るようになってきました。胸腔鏡の手術のメリットは傷が小さいため術後の痛みが少ない、カメラで拡大しながら手術操作ができることなどがあげられます。逆に手が胸の中に入らないため指での触診が使えない(がんの広がりを触診で確認できない)、手術手技が困難な症例は胸腔鏡下には行いにくいなどの欠点があります。 開胸手術、胸腔鏡手術それぞれメリット、デメリットがあり、これらを考慮しながらどちらの方法を選択するかを決めます。

手術のメリット、デメリット

手術は現在の医療レベルでは、一番治る可能性の高い治療方法と考えられます。病期的に手術が可能であれば手術をお勧めします。しかし下記のようなデメリットも存在します。

(ア)術後の痛み

胸腔鏡の手術では傷が開胸と比較して小さいため痛みが少ない傾向にありますが、それでもやはり痛いです。しかしこれらに対しては飲み薬の痛み止めで対処できます。傷の痛みとは別に手術をした側のみぞおちのあたりがピリピリしたり、違和感を感じることがあります。これは胸腔鏡の手術でも起こり、手術中に肋間神経を圧迫することがあり、その支配領域であるみぞおちのあたりに違和感を生じます。これは術後2-3ヶ月ほどで自然に治ります。

(イ)肺活量の減少

肺の手術はがんだけではなく正常肺も含めて切除するため、どうしても手術の前に比べ肺月量が減少します。通常よく行われる肺葉を1個のみ切除する場合、日常生活(買い物、選択、入浴、ゴルフ)にはほとんど影響はありませんが、運動負荷がかかるときたとえば山登り、神社の長い階段を上るときなどは息切れが多くなります。しかし少し休んで呼吸を整えると続けて行えます。

(ウ)合併症

肺がんの手術はやはり危険が伴い、術中術後にいろいろな合併症が起こります。

(1) 肺瘻 (肺からの空気洩れが続く)
(2) 心筋梗塞
(3) 脳梗塞
(4) 肺炎
(5) 気管支断端瘻(縫って閉じた気管支断端が開くこと)
(6) エコノミー症候群
(7) 間質性肺炎の急性増悪

などが頻度の多い合併症です。最悪の場合これらにより死に至る可能性もあります。日本のでは肺がん術後30日以内の死亡率は約0.8%と言われていますがアメリカ、ヨーロッパでは2%前後です。

当院の特徴

迅速

初診から治療決定、手術まで出来るだけ時間がかからないように検査スケジュール等を組んでいます。

正確

気管支カメラ、CTなどの検査を組み合わせて正確な診断を心がけています。

適切

病期の進行度だけではなく、患者さんの年齢、体力、家庭環境等を考慮して最良、最適の治療法を選んでいます。また胸腔鏡を積極的の用い患者さんに優しい治療も心がけています。

包括的かつ高度の肺がん治療:手術以外の治療においても薬物療法専門医、放射線治療専門医による高度な総合的な肺がんの治療を提供できます。呼吸器内科、呼吸器外科、放射線科、病理科によるカンファレンスですべての患者さんの病状を検討し、多角的総合的に治療を決定しています。当院は総合病院であり肺がん以外のあらゆる病気にも同時に対応可能です。特に経験豊かな麻酔の先生が多数おられ、狭心症、肺気腫、喘息その他併存疾患のある患者さんも安心して手術を受けることが出来ます。

肺がんに対して肺葉切除以上を行った患者さんの平均在院日数は全国平均13日ですが当科は9.2日で全国平均に比べ非常に短いです。一般的に高齢で併存疾患を多く持っている患者さんの手術は在院日数が長くなるのですが、適切な術前評価を行いリハビリ科、循環器内科等と連携を取り、適切な準備を行い胸腔鏡手術も含めて低侵襲な手術を高い精度で行っていることで術後合併症がすくなく、これにより在院日数が短くなっていると考えられます。今後もこの様にすべてにおいて高いレベルの手術を行っていきたいと考えています。

DPCコード DPC名称 年齢中央値 平均在院日数
(自院)
平均在院日数
(全国)
040040xx97x0xx 肺の悪性腫瘍手術あり 手術・処置等2 なし 71歳 9.4 13.0

CT上すりガラス陰影を呈する肺がんについて

近年CT技術の進歩、CT検診の普及に伴いすりガラス陰影((ground-glass opacity: GGO)を呈する小さな病変が多く発見されています。すりガラス陰影とはCT画像上、ガラスの「すりガラス」の様に(雲のように?)淡く白く見える病変を指します。
この様なGGOを示す病変は小さなことが多く、従来の検査方法である気管支カメラ、CTガイド下針生検では組織診を得ることが困難なことがおおいです。しかしこの様なすりガラスを呈する病変は高率に肺がんであることが経験的にわかっています(約98%で肺がんです)。

CT画像上の分類

GGOを含む病変はその含まれる割合で下記の様に分類しています。

Pure GGO Part solid Solid

全体が淡いすりガラス陰影のPure GGOタイプ、すりガラス陰影の中に濃度の高い部分(high density部分)があるPart solid タイプ、腫瘍全体の濃度が高いSolidタイプに分類します。

CT画像と病理との関係

CT画像の特徴と病理組織がよく相関することがわかっています。たとえばPure GGOタイプはがん細胞が肺胞上皮を置換しながら非常にゆっくり増殖する上皮内腺がんや微少浸潤性腺がんがおおく、Part solid~Solidタイプはがん細胞が肺胞腔を埋め尽くすように増殖する腺房型腺がん、乳頭状増殖優位型腺がんなどが多いです。

がん細胞が細胞上皮を置換しながら増殖する がん細胞が肺胞腔を埋め尽くすように増殖する
上皮内腺がん(AIS)
微笑湿潤性がん(MIA)
腺房型線がん、乳頭状増殖優位型腺がんなど

手術成績

これら画像上の特徴は組織型と相関があり、その治療成績とも密接に関係しています。Pure GGOタイプを示す上皮内腺がんや微少浸潤性腺がんは手術をすればほぼ100%治癒し、きわめて予後がよく、これに対してPart solid~Solidタイプは手術しても再発例があることがわかってきました。

それぞれの組織型の術後生存期間

手術以外の治療法

薬でどうにかなりませんか?と質問をよく受けますが残念ながら効果のある抗がん剤はありません。食べ物に気をつけることはありませんか?ともよく聞かれますが肺がんと食べ物には基本的に関係はありません。ただ禁煙は強くお勧めします!
放射線治療(特に定位放射線)はかなりの効果(治癒)が期待できますが、現状では一般的に第一選択にはなりません。治療をするなら現状では、より確実性のある手術をおすすめします。

すりガラス陰影が見つかったときに

以前はこの様なすりガラス陰影を呈する小病変も全例手術していました。しかしCT上GGOを呈する小病変はその手術成績はきわめてよいことがわかってきました。となると考えることは、
「GGO病変とくにpure GGO病変に手術が必要なのか?できたら手術を避けれないか?」
です!
実際手術をせずに経過を見ている患者さんの中には十数年CTで変化がなく無治療で経過している患者さんも多くいます。また現在手術はかなり安全に行えますがそれでもやはり危険が伴うこと、術後の疼痛(胸腔鏡で手術しても術後それなりに痛いです!)など手術のデメリットもあります。手術せずにすむのなら済ましたいと我々も思っています。

日本CT検診学会が出している「低線量CTによる肺がん検診の肺結節の判定基準と経過観察の考え方第4班」でも
Pure GGO:
最大径が15mm未満では経過観察を行い増大傾向が見られて場合確定診断を行う、
Part solid
最大径が15mm以上の場合、確定診断を行う。
最大径が15mm未満の場合は、充実成分の最大径が肺野城乾で5mmより大きい場合は確定診断を行い、充実成分の最大径が5mm以下の場合は経過観察を原則とする。 となっています。

この様に経過を見ることをあり、これで手術を先送りにしたり、運がよければ手術をせずにすむこともあります。

最後に

検診などでCTを撮るとGGOを呈する小病変を持った患者さんが多く見つかります。GGOを示す病変は肺がんの可能性が高いですが肺がんと言ってもみなさんがイメージしている進行が早く予後の悪い肺がんではなく、ゆっくりとした進行で非常に予後のよいものがほとんどです。運がよければ一生無治療で放置しても命に影響のない場合もあります。この様な病変が見つかりましたとお医者さんに言われてもそんなに心配しないでください。
CT画像の特徴、大きさ、患者さんの年齢、体力、患者さんおよび家族の希望などをお医者さんと相談しながらどうするかを決めていってくださればよいと思います。