呼吸器外科

診療内容

当科の代表的な手術方法

(※以下の術式は病気の進行度によっては全ての症例で行えるものではなく、個々の適応については診察時にご相談の上ご確認ください)

  • 2016年4月 当科開設。肺がんに対する胸腔鏡補助下手術(hybrid VATS)を開始。
  • 2017年7月 自然気胸などに同一肋間2孔式VATS(two-ports SIC VATS)を開始。
  • 2018年4月 完全鏡視下胸腔鏡手術(complete VATS)による肺がん手術を開始。呼吸器センター化による気胸・膿胸などの準緊急的疾患への早期外科的介入。
  • 2018年7月 剣状突起下アプローチによる縦隔腫瘍摘出術を開始。
  • 2019年7月 ロボット支援胸腔鏡下手術(RATS)を開始。
1.小さな創で行う完全鏡視下胸腔鏡手術(complete VATS)による肺がん手術

肺がんに対する内視鏡手術である胸腔鏡を用いた手術は世界的に拡大しましたが、当院ではその中でも骨も切らず2〜3センチの穴3か所で行う「完全鏡視下胸腔鏡手術」が行えます。ほとんどの症例(進行がんや3㎝の穴からは取り出せないような大きな肺がん以外)で内視鏡が映し出す映像を高解像度のモニターに拡大してこの手術を行っています。

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 呼吸器・乳腺内分泌外科 HPより。 http://www.nigeka-okayama-u.jp/chest/medical/medical002/

術者と助手がそれぞれのモニターを見ながら手術をしています

2.ロボット支援胸腔鏡下手術(RATS)

2018年4月から肺がんや縦隔腫瘍に対するロボット支援胸腔鏡下手術(Robot-assisted Toracic Surgery: RATS(ラッツ))が保険適用になりました。当科はこの手術の実施要件を満たして、中播磨・西播磨地域で最初にRATSを開始しました。

RATSの特徴は3D画像とロボットのち密な動きにあり、以前は胸を大きく開けて行った操作を、4-5か所の孔(あな)からロボットのアームを胸の中に入れて行うイメージです。

RATSはロボットを操作する術者と、患者側の助手、また麻酔医、看護師、臨床工学士との高度なチーム医療です。当院は既に泌尿器科などでたくさんのロボット支援手術が実施されており、院内のロボット支援手術の実施体制が確立されています。さらに手術ロボットも2018年に最新のダビンチXiに更新されています。

一方で肺がんに対しては始まって間もない手術方法であり、従来の手術と比較して患者さんの利点などを慎重に検討している段階でもあります。現時点では医学的な条件が合う一部の症例のみRATSを行っています。詳しくは診察時にお問い合わせください。

ロボット支援胸腔鏡下手術

患者さんに4本のロボットのアームを挿入し,助手がアシストします

コンソールからアームを操作

術者は同じ手術内の“コンソール(操作卓)”でロボットのアームを操作します

ロボット手術はチームで行います

呼吸器外科医,麻酔医,看護師,臨床工学士のロボット支援手術チーム

3.肺がんの手術はどれくらい肺をとるのでしょう:3-Dシミュレーターを用いた肺を温存する手術

上記の胸腔鏡やロボット支援の手術は身体を傷つける負担を減らす手術です。一方で具体的にどれくらい肺をとる(切除)かはまた別の問題です。

肺は右肺が3つ、左肺が2つの「肺葉」に分かれています。肺がんの「根治的手術」はがんが出来た肺葉をまるごと切り取る「葉切除」が基本です。

しかし高齢の患者さんやCOPD(肺気腫)などで肺の働きが弱った患者さんでは、正常な肺も失う手術は術後の生活に負担になる場合もあります。またCTで見つかったごく早期の肺がんや小型の肺がんの場合は「葉切除」を行わなくても根治性が保てる場合もあります。このような患者さんに対しては葉切除よりも小さな単位で肺を切除する「区域切除」を行います。

一方で区域切除は肺葉の中を切り進んでいくために、上手に行わないと残すべき肺や血管を傷つけかねない難しい手術です。当院では撮影したCT画像から肺の動脈、静脈、気管支を立体的に色分けして映し出す3-Dシミュレーターを使って、肺の中の様子を手術の前に確認して安全で正確な区域切除が行っています。

小型腫瘍に対する区域切除のシミュレーションの図

4.痛みとキズの少ない自然気胸の手術

まわりを 肋骨 ろっこつ (あばら骨)で囲まれている肺の手術は、肋骨のすき間= 肋間 ろっかん にあけた小さな穴から道具を入れて行います。しかし、いくら小さな穴でも痛みに敏感な肋間神経がそばを走っているため、特に若い患者さんは痛みを強く感じます。この痛みとの戦いは呼吸器外科医にとって大きな問題です。そこで当科では通常3つの穴で行う手術を2つに減らす「同一肋間2孔式手術」を考案し、さらに傍脊椎神経ブロックという痛み止めを使うことで、自然気胸の手術の品質も落とすことなく、直後の痛みが従来より軽く済む結果を得ていることを報告しています。また術後に抜糸のために来院いただくことも不要です。この手術方法は肺部分切除や膿胸の手術にも応用しています。

肋骨が斜めになっていることを利用して、同じ肋間から操作することで痛みを減らします。

5.縦隔腫瘍に対する痛みが少なくキズが目立たない剣状突起下アプローチ胸腔鏡手術

左右の肺の間は「 縦隔 じゅうかく 」と呼ばれる部分です。正確には縦隔という臓器はありませんが、この部分には若い人も含めて腫瘍ができることがあります。転移をしない良性腫瘍が多いものの、手術で摘出する必要があることが多いです。胸腺腫に代表されるような縦隔の前側にできた腫瘍は、昔から心臓の手術のように「胸骨」を縦に切って腫瘍を取り出すのが基本ですが、胸腔鏡の進歩により左右の肋間からカメラを入れて手術をすることも増えてキズが小さく目立たなくなってきました。さらに当院では胸骨の下の端にある「 剣状 けんじょう 突起 とっき 」の下から胸腔鏡を入れて、胸骨を切らず、また痛みが出やすい肋間のキズを少なめにする剣状突起 アプローチを行っています。

剣状突起下アプローチを用いたデュアルポート胸腺摘出術“Dual-port thymectomy using subxiphoid approach” S Takashi et al。 (Division of Cardiothoracic Surgery、 Fujita Health University School of Medicine)、 General Thoracic and Cardiovascular Surgery 62巻9号 Page570-572より引用

手術実績

手術実績 (National Clinical Database登録症例及び日本胸部外科学会学術調査に基づく)

当科開設:2016年4月

呼吸器外科専門医合同委員会修練施設認定:2018年より

呼吸器外科年手術総数

2016年 2017年 2018年 2019年(1-8月)
原発性肺がん 39 50 69 61
転移性肺腫瘍 16 28 20 10
縦隔腫瘍 6 6 6 4
肺良性腫瘍 2 4 5 9
自然気胸 10 23 21 19
膿胸 1 2 11 1
その他 1 5 9 17
合計 75 117 141 121

原発性肺がんに対する術式

2016年 2017年 2018年 2019年(1-8月)
手術総数 39 50 69 61
肺葉切除以上 34 27 42 47
区域切除 2 7 15 7
部分切除、その他 3 16 12 7