循環器内科

虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)

動脈硬化や血栓などで心臓の血管(冠動脈)が狭くなり、血流の流れが悪くなると、心臓の筋肉に必要な酸素や栄養がいきわたりにくくなります(虚血状態)。 運動や強いストレスで心臓の筋肉への血液需給のアンバランス(需要>供給)で主に前胸部、時に左腕や背中に痛み、圧迫感を生じます。

Ⅰ.心筋梗塞症

1.概念

冠状動脈が完全につまって、心臓の筋肉への酸素と栄養が途絶えることにより、その部分の筋肉の活動性がなくなってしまう病気です。心臓の筋肉の動きが悪くなると、全身に血液を駆出するポンプとしての力が落ちてしまいます。

2.症状

激しい胸の痛み、呼吸困難、冷汗、嘔気、嘔吐など。 梗塞に陥ると、直後は心臓の筋肉がもろくなっていますが、日がたつにつれて少しずつ硬くなり1ヵ月程して固まっていきます。完全に固まるのは3ヵ月かかります。発症直後の約1週間は、このもろい部分が破れることがありますし、また、不整脈の起源となることがありますので、安静かつ慎重な観察が必要です。

Ⅱ.狭心症

1.概念

冠状動脈が、動脈硬化や血栓などで狭くなり、血液の流れが悪くなり、心臓の筋肉に必要な酸素や栄養がいきわたりにくくなることによって起こる一連の症状を言います。運動やストレスで、心臓の筋肉は一時的に血液(酸素、栄養)不足となり、安静にしたり、ニトログリセリン投与で症状が緩和します。

2.症状

主に前胸部、時に左腕や背中に痛み、圧迫感など。 持続時間は数~15分前後で、ニトログリセリンが良く効くことが特徴です。

診断

心電図、運動負荷心電図、心筋シンチ、血液検査(心筋逸脱酵素測定)などの非侵襲的診断及び冠動脈造影

治療

冠動脈造影を行い、薬物、冠動脈形成術(いわゆる風船療法、金網療法など)、外科手術(バイパス手術)などを適切に選択します。

患者さんへ

安静時(特に早朝、夜間)突然に、あるいは、坂道歩行、階段昇降などの労作によって上記のような前胸部圧迫感等の症状が生じた際には、必ず循環器専門医を受診してください。 なお、狭心症の場合、症状消失後には、心電図が正常化することがありますので、可能な範囲で症状のあるときに心電図を取ることが肝要です。

狭心症と心筋梗塞の違い

冠動脈への血液灌流が、一時的に途絶えた場合が狭心症であり、恒常的に途絶えたために心筋が崩壊した場合が心筋梗塞です。

【A】狭心症

冠動脈に有意狭窄が存在し、坂道歩行、階段昇降などの労作によって前胸部圧迫感などの狭心症症状が出現する労作性狭心症と、とくに安静時(早朝、夜間など)に冠動脈攣縮によって心筋虚血が生じ、狭心症症状が出現する冠攣縮性狭心症に分けられます。

【1】労作性狭心症

労作により狭心症症状が出現します。

a.典型的な狭心症症状の訴え方

胸が重苦しい、圧迫される、押さえつけられる、締め付けられる

b.非典型的な狭心症症状の訴え方

顎が痛い、じんじんする、肩や腕が重だるくなる、背中が痛い ※狭心症症状出現時、心筋に虚血がある限り、基本的には心電図でのST変化を呈しており、診断をつけやすいですが、虚血が回復した状態、症状の無いときは、心電図変化が乏しく、診断困難なことがあります。上記症状があれば、出来るだけ心電図を受けてください。また、症状出現時にニトログリセリンで数分のうちに改善する場合も診断の助けになります。

【2】安静狭心症

安静時に上記狭心症状が出現する場合を言います。 多くは、冠攣縮性ですが、動脈硬化による狭心症(労作性狭心症)で、労作と関係なく安静時に生じた場合には、重症化の兆しがありますので、早急に専門医を受診してください。

【3】狭心症状が、コントロール出来ているか否かで、安定・不安定と分類します。
a.安定狭心症

狭心症症状が出現せず、十分コントロール出来ている状態。

b.不安定狭心症

狭心症症状が出現する労作閾値の低下、頻度の増加、症状の程度の増強を示す狭心症。急性心筋梗塞の前兆であり、早急に循環器専門医を受診してください。

【4】冠攣縮性狭心症

冠動脈が攣縮することにより、心筋血流の低下が生じ、狭心症症状を呈します。誘因として精神的ストレス、寒冷刺激、喫煙、心身の疲労、過換気などがあり、多くは、夜間睡眠中や早朝に起こります。欧米人に比べ、日本人に高頻度に見られます。攣縮する部位は大体同じで、動脈硬化により血管の反応性が変化することにより起こりやすくなっています。労作誘発性の冠動脈攣縮もまれに存在します。Ca拮抗薬、亜硝酸製剤等に、攣縮予防効果があります。

【B】心筋梗塞

冠動脈の高度狭窄あるいは完全閉塞により、支配灌流域の心筋が壊死に陥る状態です。心室細動、房室ブロックなどの不整脈、心破裂、急性心不全、心原性ショックなど致命的な急性期合併症があります。また、梗塞後の回復時に、心室リモデリング進行による慢性心不全、心室瘤、心原性の血栓塞栓症といった慢性期合併症を併発します。 発症早期から、冠動脈再灌流療法や心保護療法を開始することが、生死・残存心機能を規定します。症状があれば、我慢することなく、早急に救急車を要請し、循環器専門病院を受診してください。

【1】急性心筋梗塞

腰痛、胸部圧迫感などの胸部症状の訴え+心電図上のST上昇及び心エコーでの心臓壁運動異常で診断します。トロポニンT、CK、CKMB等の心筋逸脱酵素の上昇が診断の助けとなります。(発症後数時間たって、酵素の異常上昇が認められるので、超急性期に認めない場合が非常に多いので注意を要する) 診断後、早期に冠動脈再灌流療法が必要であり、至急、循環器専門医へ連絡する。

●急性心筋梗塞と診断後の治療の流れ
  1. 酸素投与(胸痛患者にはほぼ全員が基本)
  2. アスピリンをかみ砕いて内服してもらう、ニトロ舌下
  3. 末梢よりヘパリン3000単位静注 ※血圧をNitroglycerin注射製剤でコントロール
  4. インターベンション前にt-PA半量静注の先行投与
  5. (右冠動脈関連では血栓閉塞が多いため、少しでも早く再灌流を促す意味と インターベンション治療中に次から次と形成される血栓形成予防も含め)
  6. 緊急冠動脈造影して、必要に応じてインターベンション治療(再灌流療法)
再灌流後の治療
  1. CCUにて血行動態の観察、緊急時に備える
  2. 出来るだけ早期に、心臓リハビリテーションを開始(スケジュール表)
  3. 急性期離脱後、チーム医療として、栄養士による食事療法、理学療法士による運動療法の重要性を指導し、基礎疾患としての高血圧、糖尿病、高脂血症のコントロールを糖尿病、代謝内分泌科と連携し、禁煙外来で禁煙指導を行っている。冠動脈リスクファクターの管理が最重要であることを繰り返し、専門指導している。
  4. 治療   
    抗血小板薬(アスピリン、チクロピヂン、シロスタゾールなど)   
    ACE阻害薬、ARB   
    β遮断薬   
    HMG-GoA阻害薬   
    他、リスクファクターに対する薬剤
【2】陳旧性心筋梗塞

既に完成された心筋梗塞で、再発、慢性期合併症の予防・改善が主目標

慢性心不全
心室リモデリング抑制(ACE阻害薬、ARB、β遮断薬)
心室瘤 → 壁在性血栓予防(ワーファリン)
抗不整脈薬