循環器内科

不整脈

1.概要

正常の刺激電伝導系心臓の「ペースメーカー」である洞結節が、1分間に60-70回のほぼ規則正しい心臓収縮の刺激を生成し、 その興奮波が「刺激伝導系」といわれる伝導路をたどって、心房・心室に到達することにより、順に心房・心室の収縮が起こります。

心臓は一連の心周期を形成して、全身に酸素・血液・栄養などを送っています。

これらの経路のどこかが、正常から逸脱した状態が不整脈です。

2.不整脈の治療について

経皮的心筋焼灼術(カテーテルアブレーション)

カテーテルアブレーションとは、カテーテルという細い管を血管から心臓に入れて、不整脈の原因となる電気回路を遮断する治療法です。

薬物治療が不整脈の症状を抑えることを目的とした治療法であるのに対し、カテーテルアブレーションは不整脈の根治、改善を目指す治療法です。

外科手術と比べて、胸を切り開かなくても良いため、治療に要する時間が短く、体への負担が少ないことも特徴です。低侵襲であるため身体への負担が少なく、状況に合わせて治療することで、多くの場合、動悸、息切れ、疲労などの不快な症状が緩和・消失します。

その結果、生活の質が改善され、薬物治療は不要になる場合もあります。

カテーテルアブレーションで様々な不整脈を治療することができますが、不整脈の種類や患者さんの状態によって、治療による根治率や再発率は異なります。

一回の治療では不十分で、複数回の治療が必要な場合もあります。

当院では, 以下の不整脈に対するカテーテルアブレーションを行っています。

  • 1. 発作性心房細動, 持続性心房細動
  • 2. 発作性上室性頻拍症(房室結節リエントリー性頻拍, 房室回帰性頻拍)
  • 3. 心房頻拍, 心房粗動
  • 4. 心室頻拍, 心室期外収縮

デバイス治療

デバイスとは、体内に植え込むタイプの治療機器のことです。不整脈や心不全の治療では、さまざまな植込み型のデバイスを用います。通常よりも心拍数が少なく、失神やめまい、動悸、息切れ、むくみなどの症状がある場合、ペースメーカというデバイスの植込みを検討します。

1. ペースメーカ植込み

当院では、リードレスペースメーカ植込み、HIS束ペースメーカ植込みを行っております。

※デバイスの植え込みを受けた方は、数ヶ月~1年毎の定期検査(外来)が必要となります。

薬物療法

患者さんの症状や状態に応じ、お薬を組み合わせて治療します。

3.分類(様々な分類様式があります)

刺激発生の異常か、興奮波の伝導異常かにわけます。伝導系異常の生じた部位により、上室性不整脈と心室性不整脈に分けます。

伝導系異常により生じた心拍数により、頻脈性不整脈と徐脈性不整脈 に分けます。他に、伝導障害、その他に分類されます。

A.刺激生成異常と興奮伝導異常

刺激生成異常 1.洞整徐脈
2.洞停止
3.洞性不整脈
4.ペースメーカー移動
5.洞性頻脈
6.期外収縮 上室性期外収縮
心室性期外収縮
7.発作性頻拍 上室性頻拍
心室性頻拍
8.心房細動
9.心房粗動
10.心室細動
11.補充調律・収縮
12.人工ペースメーカー調律
興奮伝導異常 1.不完全房室ブロック
第一度房室ブロック
第二度房室ブロック Ⅰ型 Wenckebach型
Ⅱ型 MobitzⅡ型
  2.完全房室ブロック(第三度房室ブロック)
3.心室内伝導障害
一枝ブロック 右脚ブロック
左脚ブロック
左脚前枝ブロック
左脚後枝ブロック
二枝ブロック
三枝ブロック
その他の心室内伝導障害
4.WPW症候群
(笠貫宏:不整脈総論、高久史麿・尾形悦郎監修:新臨床内科学、第6版、P346、1993による、一部改変)

B.上室性不整脈と心室性不整脈

脈の起源が正常の洞結節でない不整脈で、上室性(心房)と心室性に分類します。

上室性の不整脈は心電図のQRS幅が狭く、通常の正常伝導とほぼ同じです。

これは異常な刺激でも上室性の刺激の場合は、房室結節(心房と心室をつなぐ「関所」)を経由したあとは、心室内では通常の伝導となるためです。

一方、心室性不整脈の場合には、上室とは全く関係なく、心室内伝導経路と離れたところを起源とするため、幅広のQRS波となります。

ただし、上室性不整脈でも、早めに出ると伝導が変行し、脚ブロックや幅広のQRSとなります。

また、心室性不整脈、房室結節に非常に近い部分の起源だと、心室内の伝導が通常の伝導に近いため、QRSパターンが上室性のものと区別がつきにくい場合があります。

【1】上室性不整脈
【a】上室性期外収縮

上室起源の異所性興奮が、通常の洞調律周期よりも早期に起こるものです。

心電図上は次にくるべきP波より早くP波が現れ、引き続き正常な形のQRS波がこれに続きます。

P波の形状は刺激の生成された起源により異なります。

上室性期外収縮多発の場合は、心房に病的負荷のかかる肺疾患・心臓弁膜症等が原因である場合があり、心房細動への移行の可能性が高いので要注意です。

【b】発作性上室性頻拍

150~200拍/分の規則正しい頻脈が突然出現し、突然消失します。

大部分はリエントリーと呼ばれ、局所的に刺激伝導がぐるぐる回転して、心室に頻回に刺激が伝わる機序で発生します。

動悸・血圧低下・持続時間が長いと失神や心不全を起こす場合もあります。

【c】心房頻拍

a.多源性心房頻拍

P波が100回/分以上みとめられ、P波の形・PQ時間・RR間隔が一定でない頻拍をいう。

興奮の起源が一定でないと考えられ、洞結節機能の低下が疑われる。

b.PAT with block

洞結節の自動能なしに収縮する能力が亢進している状態です。

心房収縮は150~220回/分程度ですが、2:1の房室ブロックを伴っていることが多く、心拍数はその1/2となります。

ジギタリス中毒のときにみられる特徴的な不整脈で、ジギタリス製剤を内服中には、注意が必要です。

【d】心房細動(atrial fibrilation;Af)

心房が無秩序に毎分数百回~千回以上興奮し、その刺激のうちの一部が心室に伝わり、心室が収縮している状態です。

心電図上の特徴は、心房の細かな興奮をあらわるf波(いわゆる基線の揺れ)とRR間隔の不整です。

QRSの形は洞調律のときと同じです。心拍数は心室への刺激の伝わり方で、頻脈となったり、徐脈となったりします。

弁膜症、先天性心疾患等による心房負荷や甲状腺機能亢進症の場合に起こることがあります。

心房細動では、心房の収縮が低下し、血流のうっ滞が生じるために、心房内に血栓を形成し、血栓塞栓症の原因となることがありますので、血栓の予防にはワーファリン等による抗凝固療法が必要で用いられる。

【e】心房粗動

心房の中に大きな刺激伝導が周回する回路があり、周回する度に刺激が心室に伝わるため、頻回に心室収縮が起こります。(但し、房室結節での伝導比率により心拍数が変化します。)

鋸状の規則正しい基線のゆれ(F波)が、特徴です。

心房粗動は、時に伝導比率が1:1となり、心拍数が300程度になることがあるため、注意が必要です。

【2】心室性不整脈
【a】心室性期外収縮(premature ventricular contraction;PVC)

先行P波がなく、幅広のQRSとそれに続くQRSと逆向きの大きなT波が特徴です。

刺激伝導系より離れて刺激が発生するため、心室全体への伝導に時間が要するためQRS幅、QRS軸が変化します。

異なるQRS波形の期外収縮が多発している場合、心室の複数の個所から興奮が発していることを意味しており、心筋が易興奮性で、心筋梗塞の急性期、ジギタリス中毒などの際に認められると、注意が必要です。

また、先行T波の頂点付近に期外収縮が乗っている場合は、「R on T」といって、心室細動を起こしやすいので、特に注意しなければなりません。

心臓に基礎疾患がない場合、心室性期外収縮の大部分は、治療の必要性が低いと言われています。

【b】心室頻拍(ventricular tachycardia)

持続性(sustained)、非持続性(nonsustained)に分類されます。

心室性期外収縮が、連続している状態です。

頻度は、150~200回/分程度で、30秒以上続いているものを持続性といい、30秒以下でとまるものを非持続性心室頻拍と分類しています。

心筋梗塞・心筋症・心不全等に起こると重大です。

また、「健康な心臓」にも突然起こり、致命的な結果に至ることがあり、要注意です。突然動悸を感じる場合、ドキドキと鼓動を強く感じる場合、動悸とともに目の前が暗くなるような症状が生じる場合には、専門医を受診してください。 ※Torsade de point(TdT:トルサド ポアン)

QT延長症候時に認められる特徴的な波形。QRS軸が周期的にねじれるように変更する波形です。

心室細動に移行する危険性の極めて高い悪性不整脈です。

【c】心室細動(ventricular fibrilation)

心電図は、基線が不規則にゆれているだけの状態です。

心室が細かく震えているだけで、全く心拍出がなく、血行動態的には心臓が停止しているのと同じ状態です。急性心筋梗塞・血清電解質(特にカリウム)異常等が原因となる最重症の不整脈です。

C.頻脈性不整脈と徐脈性不整脈

【1】頻脈性不整脈:1分間に100回以上の脈を頻脈という
【a】洞性頻脈(sinus tachycardia)

洞調律で、心拍数100以上のものを言います。

多くは運動・精神的緊張・発熱などの生理的要因により、交感神経が緊張している状態のときにおきます。

また、貧血・呼吸機能不全・心不全、甲状腺機能亢進症等でも出現することがあります。

【b】洞機能不全(sick sinus syndrome;SSS)

洞結節の機能障害のため、秩序だった洞結節の刺激が失われ、徐脈・高度の不整、停止をきたし、時に発作性心房細動・発作性心房頻拍なども起こします。

意識障害・めまいなどの自覚症状に関係する場合は、永久式ペースメーカー植え込みが必要となります。 ※Rubenstein分類が用いられます。

Ⅰ型:持続性の洞徐脈

Ⅱ型:洞停止(sinus arrest)または洞房ブロック(SA block)

Ⅲ型:徐脈ー頻脈症候群(bradycardia-tachycardia syndrome)

心房細動等の頻脈と高度の徐脈が混ざった不整脈です。

頻脈から徐脈への移行時に、長い心停止がおき、失神を起こすことがあります。(Adams-Stokes発作といいます。) これは、洞結節細胞の自分で脈を発生する能力(自動能)が、頻回の刺激で、低下することにより起こる洞停止状態です。

一時的に体外ペースメーカー療法を導入する必要があります。

【c】発作性上室性頻脈
【d】心房頻脈
【e】心房細動
【f】心房粗動
【g】心室頻脈
【h】心室細動
【2】徐脈性不整脈:1分間に50回以下の脈を徐脈という
【a】洞徐脈(sinus bradycardia)

睡眠中など迷走神経緊張状態のときに、徐脈となることがあります。

特に、加齢により、その傾向は強くなります。

【b】洞機能不全症候群(sick sinus syndrome;SSS)

D.伝導障害

【1】房室ブロック

心房と心室間の刺激伝導に障害が生じている状態であります。加齢とともに、伝導が延長する傾向があります。

Ⅰ度房室ブロック
房室伝導時間延長のみが認められます。心房から心室への伝導が脱落せず、保たれている状態です。
Ⅱ度房室ブロック

房室伝導が不安定で、時々断たれている状態です。

ブロックには2種類があります。

MobitzⅠ型(Wenckebach型)
房室伝導時間が次第に延長しながら、伝導が脱落します。予後は比較的良好である。
MobitzⅡ型
房室伝導時間は一定でありながら、突然QRSが脱落します。伝導の脱落が1個だけから数個脱落して心停止状態が続く場合もあります。ペースメーカーの適応となります。
Ⅲ度房室ブロック
房室伝導が完全に断たれている状態です。心房と心室が、全く無関係に収縮しています
【2】心停止

心室が収縮を停止し、補充収縮もおきない状態です。

ほとんどが、完全房室ブロックに伴う高度の徐脈です。

【3】伝導障害
【a】心室内変行伝導(aberrant ventricular conduction)

機能的に脚ブロックが生じています。

伝導系の不応期と刺激が重なったために、一時的に伝導障害を起こします。

【4】脚ブロック

房室結節(ヒス束)以下の心室内伝導障害です。

右脚ブロック
右心室への伝導障害が生じた状態です。比較的よく認められます。心房中隔欠損・右室肥大を起こす心疾患・冠動脈疾患に伴い認められる場合があります。大部分は治療の必要がありません。
左脚ブロック
左心室への伝導路は前枝・後枝と2本あり、そのいずれか、または両方が障害された状態です。左脚自体は、比較的太く、そのため頻度は少ないながらも、器質的心疾患を有する場合がほとんどです。精密検査が必要です。
二枝ブロック
右脚+左脚前枝ブロック、右脚+左脚後枝ブロック
三枝ブロック
脚すべてに伝導障害を認め、房室ブロックとなるので、ペースメーカーが必要となります。

E.その他

【1】異所性上室調律

洞結節以外の場所が刺激発生源となっている状態です。心電図では、P波がⅡⅢaVF誘導で逆転している場合が多く、逆行性に心房内を伝わっていると考えられています。機能的なもので、病的な意義はほとんどありません。

【2】補充収縮(逸脱収縮)(escape beat)

洞結節からの刺激発生がない場合に、房室接合部以下から刺激が発生し、心室筋に伝導します。心停止に対する緊急避難的な発生です。洞結節以下の刺激発生部位を下位中枢と呼び、通常は、洞結節が心臓収縮を統御していますが、洞結節が休止した場合に、この下位中枢が刺激を発生します。

【3】QT延長症候群

QT延長を認め、失神発作を繰り返す状態をいいます。

先天性と後天性に原因が判明している場合があります。心電図上で、T波の頂点付近は期外収縮波が重なると、致死的不整脈を起こしやすい状況となります(受攻期)ので、特にQT延長がある場合には、心室性期外収縮に注意を要します。

先天性

異常イオンチャンネルが原因で、心室内に不均等に分布するために、

心臓交感神経支配の不均衡で発生した不整脈により、回帰性の不整脈が起きやすくなります。

後天性

電解質異常、薬剤、その他の原因でQT延長を来す場合があります

【4】WPW症候群(Wolff,Parkinson and White)

心電図上PQ時間の短縮・デルタ波(QRS波の始まり部分の緩やかなカーブ)認められる場合を特別な名称で呼んでいます。

房室結節以外に心房ー心室を連結する回路(副伝導路)があるために、この回路と房室結節で作られる「ループ」で刺激がグルグル回転することにより、心室興奮波伝導が増加する頻拍が生じます。

デルタ波は、副伝導路経由の刺激の方が早く心室に到達するためにスラーとして抽出されます。

※WPW症候群に生じる注意すべき頻拍発作には二種類あります。

【a】発作性上室性頻拍

房室結節と副伝導路の不応期の違いで、ループを形成し、興奮波がこのループを回転しながら、心室へ伝導され、一定のR-R間隔で心室収縮が生じます。

多くは、刺激が房室結節を順行し、副伝導路を逆行するループを形成します。

心室内伝導は、通常の刺激伝導系を経由しますので、直接心室細動へ移行することはない。

ただ、心拍数は150-200前後となり、長時間続くと、動悸・胸痛・心不全などを起こします。

【b】心房細動発作による偽性心室頻拍

心房細動発作により、刺激が副電導路を経由して心室へと伝わります。

心電図では、デルタ波及びPR間隔不整なQRS幅広の頻拍を示します。

心拍は、300回/分以上に達し、心室細動に移行する危険があります。

QRS幅が広く、一見心室頻拍のように見えることから偽性心室頻拍(pseudo VT)と呼んでいます。

心室細動に移行する危険性が高いため、心室頻拍と同様の扱いをし、的確な判断の下、緊急治療が必要です。ワソランやジギタリス製剤は、副伝導路の不応期を短くし、頻拍を増強するため使用禁忌です。

【C】陳旧性心筋梗塞

既に完成された心筋梗塞で、再発、慢性期合併症の予防・改善が主目標

慢性心不全

心室リモデリング抑制(ACE阻害薬、ARB、β遮断薬)

心室瘤 → 壁在性血栓予防(ワーファリン)

抗不整脈薬

【5】Brugada症候群

突然に致死性不整脈を生じるケースから、Brugadaらが、特徴的な心電図所見との関連を指摘しました。 非発作時心電図所見

(1)V1,V2のST上昇(2)右脚ブロック(3)正常QTc間隔心筋細胞のNaチャンネル異常によるもので、(1)のST波形変化が特徴的です。

失神や心室細動の既往がある場合、有効な治療薬がないので、埋め込み型除細動機の適応となります。

【6】Adams-Stokes症候群

不整脈が原因で心拍出量が減少したことにより、脳虚血発作・意識消失発作を繰り返す場合をいいます。 房室ブロック・洞不全症候群・250/分以上の頻拍発作・心室細動などが、原因に挙げられます。

24時間心電図(ホルター心電図)が、診断に有効です。