外科

肝胆膵疾患

はじめに

肝胆膵領域の悪性腫瘍手術件数が多いのも当科の特徴です。
また日本肝胆膵外科学会より高難度手術を実施する施設(高度技能専門医修練施設A)として西播地区で唯一認定を受けています。(http://www.jshbps.jp/
以下、各疾患別に簡単な疾患説明、治療法を記載しますが、総論的な説明ですので、実際は各個人の状態を詳細に検討し治療法を決定することになります。

種類と治療

肝疾患

外科治療を必要とする疾患として、肝臓がんが挙げられます。肝臓がんは、原発性肝細胞がん、転移性肝がん、肝内胆管がんに分類されます。
疾患別に治療方針が異なりますので、混同しないようにしましょう。

a.原発性肝細胞癌

肝細胞が癌化したものを原発性肝細胞がんと呼びます。
多くは肝炎ウィルス(C型、B型)が原因ですが、アルコール、脂肪肝が原因のものも少数存在します。
治療は、肝切除、局所療法(ラジオ波焼灼療法)、カテーテル治療(肝動脈塞栓術、肝動注化学療法)が3本の柱と考えられていますが、近年では全身化学療法も治療法の一つに加えられました。
癌の進行度、大きさ、個数や肝機能の状況などを十分考慮した上で治療法が選択されます。
当科の特徴はこれらの治療を一貫して取り扱っていることです。

治療方法

肝切除

肝切除は、がんを含めて肝臓の一部を切りとる方法です。最大の利点は、「がんを治す」という効果が一番確実なことです。欠点は、他の治療法と比べ体に与える影響が大きいことでしょう。より安全により低侵襲に手術が行えるよう、日々取り組んでいます。腫瘍の部位によっては腹腔鏡を利用した腹腔鏡下肝切除が可能である場合があります。この場合は比較的小さな切開創で切除を行うことができます。2016年12月までに95例の腹腔鏡下肝切除を行っています。

局所療法

ラジオ波焼灼療法は特殊な針を体外から肝癌へ差し込み、通電することにより病巣を凝固・壊死に陥らせる治療法です。直径2~3cm程度の範囲の組織を完全に熱凝固することができるため,比較的小さな肝細胞癌に対する安全かつ確実な治療法として知られています。
経皮的に穿刺することが一般的ですが、焼灼範囲内に胃、大腸などの臓器がある場合、あるいは肝表面に腫瘍がある場合には、腹腔鏡といって、お腹の中を観察するカメラを使用して腫瘍を焼灼します。人体に与える影響は非常に小さく、入院期間も1~2週間程度です.これらの治療は局所麻酔下で行う施設が多いのですが、当科では全身麻酔下に行なっています。

肝動脈塞栓療法、肝動注化学療法

この治療法は、足のつけね(大腿)から、カテーテルと呼ばれる細いチューブを挿入して行ないます。癌を栄養している血管(肝動脈)を特殊な物質により塞栓させ、癌を死滅させる治療法です。ただし1回の治療で完全壊死がえられることは少なく、繰り返し治療を行って癌を抑え込んでいく必要があります。塞栓物質、投与薬剤の工夫などによる治療成績の向上に努めています。
肝動注化学療法は、血管内に塞栓物質が流せない場合に行う治療法です。通常より高濃度の抗がん剤を動脈経由で投与できるため、副作用を低く抑えながら腫瘍に対する効果が期待できるなどの利点があります。
上記治療に関しては、放射線科の専門医に依頼しています。

全身化学療法

従来、有効な原発性肝細胞癌に対する有効な化学療法はありませんでしたが、本邦においても、分子標的薬(ソラフェニブ:ネクサバール)という薬剤が使用可能となりました。この薬剤は万能ではありませんが、利点を最大限に引き出すため、他の治療法との組み合わせが模索されています。

b.肝内胆管癌

肝内胆管から発生した癌ですので、原発性肝細胞癌とは性格が異なります。リンパ節転移、血行性転移の比率が高く、一般的には原発性肝細胞癌よりも予後不良とされています。

治療方法

化学療法等の効果は望めませんので、外科的切除が唯一の治療法となります。
浸潤傾向の強い腫瘍で、肝門部へ進展した場合は、肝門部胆管癌と同様の術式を要することがあります。

c.転移性肝癌

転移性肝癌とは、他部位から肝臓に転移した癌の総称です。従って、胃癌が肝臓に転移した場合は、胃癌治療の一環として、大腸癌が転移した場合は、大腸癌治療の一環として治療する必要があります。

治療方法

上記のようなことから、転移性肝癌の治療については、原発となる疾患の進行度等を考慮して行う必要があります。 詳細については胃がん、大腸癌の項目を参照して下さい。

肝疾患症例数(過去7年間)

  2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016

肝切除数

81 87 99 84 69 75 88

胆嚢疾患

a.胆石症、胆嚢ポリープ、胆嚢腺筋症

胆嚢疾患の中で手術を要する疾患のほとんどは胆石症です。また胆嚢ポリープ、胆嚢腺筋症も切除の対象となることがあります。

治療方法

胆嚢摘出術が基本術式となりますが、現在この領域に関しては、腹腔鏡下手術が主流となっています。 腹腔鏡下胆嚢摘出術と呼び、当科では現在までに3000例以上同手術を行いました。また一昨年より、単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術を導入しています。

b.胆嚢がん

胆嚢がんは進行度により予後に大きな差があり、進行したものは“治す”ことが困難となってきます。進行度に応じて柔軟な対応が求められる疾患です。正確な術前の進行度診断による術式の立案が重要となります。当科では2001年から2016年までに80例の切除術を行いました。

治療方法

胆嚢がんの根治的治療法は手術です。手術方法は進行度に応じて異なります。胆嚢摘出術のみで治るものから、肝切除、胆管切除、さらには膵切除が必要なものまであります。

胆管疾患

胆管がん

胆管がんの治療は外科療法、放射線療法、化学療法がありますが、今のところ放射線療法や化学療法では治癒は望めません。根治的治療法は外科療法(切除)です。胆管は肝門部胆管、上部胆管、中部胆管、下部胆管に分けられ部位によって手術法が異なります。術前診断が治療方針決定の前提となりますので、診断の正確性が求められる疾患でもあります。

治療方法

肝門部~上部胆管がん
非常に狭い範囲に動脈、門脈、胆管が走行していますのでこの部位の手術は困難とされ、高度の手技が必要とされます。扇のかなめのような位置にあるため、根治的手術のためには肝切除を必要とすることが多く、胆道再建が必要となります。正確な診断に基づく術式選択が必要となりますので充分な知識、経験を持った専門医が対応する必要があります。

中~下部胆管がん
この部位の胆管がんは、膵頭部に位置するため通常膵頭十二指腸切除術(膵がんの項目を参照して下さい)が必要となります。 当科では、2001年から2016年までに肝門部~上部胆管がん:37例、中~下部胆管がん:85例の切除術を行いました。

膵疾患

膵臓がん

膵臓がんの治療には外科療法、放射線療法、化学療法があり、腫瘍の進行程度と全身状態などを考慮して治療が行われます。外科療法(切除)が治療の柱ですので、少し詳しく話しましょう。

治療方法

手術法は腫瘍の部位によって異なります。膵臓の周囲には重要な血管が走行しており、場合によっては、これらの血管を合併切除、再建(=元通りにつなぎ直す)しなければならないこともあります。当科では2001年から2016年までに204例の切除術を行っています。

膵頭部がん
膵頭十二指腸切除術といって膵臓の頭部から体部にかけて、十二指腸とともに切除します。

膵体尾部がん
膵臓の体尾部を切除します。

しかし、あらゆる手技を駆使しても、切除不能の膵がんとして発見されることも多く、切除の対症とならないこともあります。 膵臓がんの治療成績は不良です。
しかし、この難治性の膵臓がんの予後も、化学療法の発展とともに除々に改善されてきました.癌の進行による黄疸、消化管閉塞に対しては、バイパス手術を行うことにより、長期間化学療法を継続することが出来るようになりました。

当科では2012年より、SMA周囲のMesopancreas領域の徹底郭清を目的に、Left posterior approachを導入しました。本法導入より5年経過しましたので、2012年〜2015年の膵癌に対する膵頭十二指腸切除術の現時点での術後成績を示します。1,2,5年生存率:79.5%,75.3%,68.4%(図1)、1,4年無再発生存率(図2):74.4%,57.3%です。病理学的な再発危険因子は、癌遺残とリンパ節転移陽性でした。これらが予測される症例に対しては、術前化学療法を導入しています。

累積生存率 無再発生存率

胆嚢・胆管がん・膵臓がんの領域は外科的治療が唯一の根治的治療法です。
胆管がんと診断されたら手術の可能性について専門医に必ず相談するようにして下さい。
ある施設では手術可能な場合が別の施設では手術の対象とならないとされることもめずらしくありません。 正確な診断とそれを実施する高度な手技が求められます。

胆膵症例数(過去10年間)

  2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016

胆嚢癌

5 6 3 8 7 10 5 1 3 4

肝門部~上部胆管癌

4 1 3 3 4 2 0 0 3 1

中~下部胆管癌

1 12 6 3 7 5 10 5 8 9

膵癌

10 14 15 18 20 11 15 15 12 9