院長徒然日記

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No.164 三大死因に「老衰」

わたしは仕事柄厚生労働省から発表される統計などをチェックしているのですが、今月発表されました2018年の人口動態統計月報年計(概数)の結果を見る機会がありました。それによると昨年に比し、出生数は92万人弱と減少し、死亡数は136万人強と増加していました。人口減少、多死社会をデータで実感させられました。それよりも驚かされたのは、死因順位ですが、「老衰」が死因の3番目であったことです。わたしの今までの常識では日本人の死因は1番目が悪性新生物(腫瘍)、2番目が心疾患、3番目が脳血管疾患、そして4番目が肺炎と思っていました。老衰が徐々に増加していることは認識していましたが、この様になっているとは思いもしませんでした。

死亡統計における死因の変化には大きな要因として2つが考えられます。その一つは誤嚥性肺炎とされていた死因病名が、これが直接の死因ではなく、加齢性変化による衰弱などにより死亡していることは医師の間ではよく知られていることでした。2017年に死因の国際統計分類で原因死選択ルールの明確化がなされ、死因病名に「老衰」と記載する医師が増えてきたと推測されます。二つ目は同年発表された『成人肺炎診療ガイドライン2017』の影響が大であると考えられます。診療ガイドラインとは、医療現場において適切な診断と治療を補助することを目的として、診療の根拠や手順についての最新の情報を専門家の手で分かりやすくまとめた指針のことですが、その中に「易反復性の誤嚥性肺炎のリスクあり、または疾患終末期や老衰の状態」の場合には、「個人の意思やQOLを重視した治療・ケア」を行うこととし、患者背景を考慮した上で積極的な治療を行わないことを推奨しています。このような内容は一般的なガイドラインには記載されていません。わかり易くわたしなりの解釈を述べますと(誤解を招かぬよう詳しくは専門家に聞いてください)、「繰り返す誤嚥性肺炎や終末期の肺炎などに対して、一定の条件があれば、個人の意思やQOLを尊重した治療・ケアを行う選択肢もありますよ。」を意味しています。QOLを重視する方針もあるのだという考え方をガイドラインで示してくれたことは、一般の人々や医療者が老衰が原因の肺炎をどの様に考えるかのきっかけになればよいと思います。また日本も徐々にQOLを重視した医療に変化していることでもあります。

愛称名「人生会議」の日記の中で書きましたが、高齢社会が進み、老衰による肺炎になることは今後多く経験することになると考えられます。人は必ず死を迎える時が来ます。普段から人生の最期を迎えるに当たりどのようにすればよいか、看取られる側、看取る側双方にとって、自分らしく生きぬくことが出来る成熟した社会を見たいものです。

2019年 6月 14日 姫路赤十字病院 院長 佐藤 四三