院長徒然日記

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No.195 体力面から高齢者がん治療を考える

 日本人の半数の方が一生のうちに一度はがんを患う時代となっています。高齢社会になって久しいが、この状況は今後ますます進み、2040年に高齢者数はピークに達すといわれています。現在がん患者の7割強を高齢者が占め、治療を考える上で一人ひとりのいわゆる体力を評価する必要性に迫られます。
 今年も敬老の日が近づいていますので、高齢患者のがん治療法の選択について考えて見ます。治療法として手術療法、放射線療法、化学療法の大きく三つに分類され、単独ないしこれらの組み合わせで治療がなされています。身体的、精神的な負荷は治療法によりそれぞれ異なります。多くはガイドラインに従って治療法が選択されますが、実際どの治療を行うかは一人ひとりの健康状態を医師が経験則に沿って判断し、患者さんに説明した後に行っているのが現状です。

 高齢者の健康状態は個人差が大きく、客観的評価ができることを望みますが、これに関しては研究が動き出したばかりでまだまだ一般的ではありません。高齢者の健康状態を評価することは、重要な点ですが、的確に判断することは困難で、外科医としての経験によるところが大です。同じ年齢であっても個人差が大きく、手術に対する対術性、抗がん剤の効き方や副作用の程度は違いが大きく出やすいといえます。そのため体への負担が大きいと思われる手術をするか否かを考える場合、外科医としては大変苦労をしています。手術すればがんは完治する場合でも体力低下があり手術後の生活を考慮し、しない選択をすることもあります。一方体力は大丈夫だから手術をした場合、思いがけず合併症などによりがんは治癒したが、日常生活に負担をかける結果になることもあります。また体力低下あり手術に不安を持ちながら手術を選択した場合予想に反し良い結果を得ることもあります。いろいろなことを考えながら患者も外科医も治療法の選択に苦慮しています。

 こうしたことから体力を客観的に評価することができれば、誰にとっても大変有意義なものになります。健康状態を評価するにはあくまで自分なりの経験による思いつきで書くならば、運動能力、日常生活で身の回りのことを自分でできることが先ず重要と考えます。認知機能、同居する家族の有無と人間関係、うつ傾向などの精神状態、栄養状態などがこれらに続いて重要と考えます。
医学雑誌などを見ると同様な評価項目を掲げて数値化する臨床研究が進んでいます。一日でも早く研究成果を臨床の場で活かすことができ、一人ひとりの患者さんにとって納得のいく治療を行い、満足度の高い日常生活を過ごせる日が来ることを願います。

2020年 9月 8日 姫路赤十字病院 院長 佐藤 四三