院長徒然日記

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No.83 What構築能力

今医療界は大変革を求められています。その2大要因の一つは、急激に進む少子高齢社会であり、他の一つは国民医療費の増大に伴う保健財政の悪化です。このことは最近のニュースなどでたびたび取り上げられており、周知されていることと思います。これからの時代、市民、そしてわれわれ医療・介護・福祉関係者も、否応なく大きな変化が生じていることを実感されることと思います。そのような時代、医療界に必要な能力はいかなるものであるか考えてみます。

一般企業も医療機関も組織のライフサイクルは“発展成長期”“安定期”“衰退・変革(再生)期”と3つのステージに分類できるそうです。ヒトのライフサイクルによく例えられます。しかしヒトには老年期がありますが、それに対し、企業、病院は衰退を感じると、変化し再生に向けてベクトルを変えようとする点が大きく異なります。安定期には強い組織運営力が求められますが、衰退・変革期には、大胆な発想の転換をしなければ生き残ることができません。 医療機関が存在する本質的な意味の一つは、医療サービスの受給者、つまり患者や地域社会住民の健康を最大化することが、最大目的でありますので、生き残る必要があります。生き残るにはイノベーションが求められ、過去へのこだわりを捨て、新たな発想や、推進力が欠かせません。組織にはこれを可能にする能力が求められます。正に医療界はその中に入り込んでいる時代であるとわたしは考えています。

ところでHow能力とWhat構築能力といった言葉があります。既に構築されたルーティンワークを素早く正確にスムーズに遂行できる能力がHow能力であり、これに対し、自分で課題を見つけ、その改善策を考え、具体的に推進することができる能力をWhat構築能力であると言われています。変革期にはこのWhat構築能力が求められます。How能力は経験や知識で身につきますが、What構築能力は知識・経験だけでは不十分で、常に考える思考の癖が必要とされています。

医療界が大変革している今、継続的に安定期であり続けていく病院は一つもないのが実態で、生き残りをかけてイノベーションに努めています。この時代では、病院の体制、現行の医療政策などに常に課題意識を持ち、大局的視点で解決策を探る、この様な能力が求められます。この能力なくして病院は生き残れない時代となっています。自分自身もこの能力を発揮したいと思いますし、そのような人材を育てたいと思います。ただしWhat構築能力の人材ばかりでは組織は成り立ちません。同じく強い組織運営力のあるHow能力を備えた人材も、組織の存続には必要不可欠であることは言うまでもありません。

医療の今後の方向性、病院経営の厳しさなどの新聞記事を見ると、頭の隅のどこかにあるのでしょうか、この様なことをつい連想してしまいます。

2016年 6月 30日 姫路赤十字病院 院長 佐藤 四三