院長徒然日記

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No.81 蟻の働き方に教えられ

イソップ童話「アリとキリギリス」では、夏の間、アリは冬の食料を蓄えるため働き続け、キリギリスはバイオリンを弾きながら怠けて過ごします。やがて冬が来てキリギリスは食べ物に困り、アリに食料を分けてもらう代わりに、心を入れ替えて働くようになったという寓話です。キリギリスのように将来の危機への備えを怠ると、危機が訪れた時に非常に困ることになるので、アリのように将来の事を常に考え、行動し、準備をしておくのが良いという話です。教訓はともかく、蟻は働き者で女王蟻に尽くすイメージがあります。

ところが先日、テレビで蟻の行動を観察した内容の番組がありました。それによると長期間の観察により、食料の採取、女王蟻や卵の世話、ゴミ捨てなどイメージ通り働く蟻は8割で、残り2割の蟻は仕事を一切していないとのことでした。
興味深いことは、怠け者の蟻のみを取り出して観察すると、習性は変わることなく、やはり働くことはなく、巣は崩壊してしまいました。また働き者の蟻だけを集めても集団生産性は最大にはなりませんでした。この事実に大変示唆を感じます。怠け者の蟻がいることによって、集団にとって何らかの意味があるかもしれないことが示唆されたのです。ただし、一生働かない蟻の中にチーター(cheater、だます者)が混じっているのですが、これが増えすぎることはあってはなりません。巣が崩壊してしまいます。

ビジネスの世界で2:6:2の法則があるそうです。リーダーとなってバリバリ仕事をするのは2割、6割はリーダーに引っ張られて仕事をして、残り2割は適当にさぼる。大体どんな組織でも当てはまるといわれています。これには続きがあって、仕事をサボる2割にやめてもらえば生産性も上がるのではと考え、サボる2割に辞めてもらったとします。するとバリバリの2割の中から普通になる人が出て、普通の6割の中からサボる人がでてきて、結局2:6:2になるそうです。結果的に組織としての生産性は上がりません。蟻の集団での観察結果に大変似ています。サボる人(cheaterではこまりますが・・・)は組織にとって何らかの意味があると考えるべきです。

どの組織でも勤務評価がありますが、人物を評価する事は微妙な点を含んでいますので、大変難しい作業となります。評価の仕方は、決まりはあるものの、その人の人生もかかっていることでもあり、責任ある事柄です。サボる人と評価したとしても、数方向からのみの評価であり、 全人的に見ているかが保障されているわけではありません。人事面では、環境が変われば、人は良い方向へも、悪い方向へも豹変することもありえます。重要な事は大局的に見て、組織を変化させることが基本であると考えさせられる蟻の働き方でした。

2016年 6月 8日 姫路赤十字病院 院長 佐藤 四三