院長徒然日記

院長徒然日記

No.80 システム造り

機能的なシステムは組織にとって或る意味大変重要なことであり、根幹をなすものの一つであることに疑いはありません。病院内でさえシステムを造り、維持管理することの大変さを日々感じて過ごしています。ましてや組織を超えて地域を巻き込むとなるとその大変さが容易に想像されると思います。このことを如実に垣間見る印象深い出来事があり、2点紹介したいと思います。

その一つは“保育園落ちた 日本死ね”のブログに始まり、国会をも巻き込んで大議論を起こしている社会現象です。これに関連したニュースで、テレビでの特集番組を見る機会がありました。それによると、ある市で行政側が、待機児童の解消、老朽化した幼稚園・保育所施設の解決を目指して、施設を一か所にまとめて“認定こども園”をつくる計画を市議会に提出し、3か月で予算が決定したとありました。実際に現場で働く職員、利用する保護者などから計画があまりにも拙速すぎるとの声が上がり、問題になっていることが紹介されていました。
これに対して別のところでは、 “認定こども園”を待機児童の解決策と評価し、3~4年をかけて計画を練り、実行し、市民から受け入れられている町が紹介されていました。ここでは現場で幼児をあずかっている幼稚園、保育所の施設から幼稚園教諭、保育士がこども園はいかにあるべきかを議論し、シミュレーションを繰り返し行い、これを受けて計画を立案し、議会で予算が決定する過程を放映していました。
ニュース番組の内容から理解する限りでは、計画を実効性あるものにするには現場の意見を如何に活かすべきかを教えられる姿でした。頭では理解できても、なかなか難しいものであります。

二つ目の出来事は当院の看護師による研修発表会を覗いてみたときのことです。この研修発表会はたまたま通りがかって初めて知ったものです。日本は高齢社会に向けて医療・介護は大きく変化していることについて、新聞等にて知られていると思います。変化の目玉になるものとして、これからは“病院完結型”から“地域完結型”に変化しようとしています。住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供される“地域包括ケアシステム”の構築実現を目指しています。このため病院はそれぞれの持つ機能に分化し、お互いが連携することが最も重要といわれています。
しかし声掛けだけではこのシステムは決して機能しません。実際に機能するため、どの地域でも苦労しているのが、医療現場の実際です。この答えの一つのヒントを研修発表会に垣間見ることができた感じです。自院と異なる組織、機能をもつ病院と連携するには、トップ間で取り決めを行っても一歩も前進することはできません。どの社会でも異なる組織が連携するには、相手の組織を知ることが第一歩です。
わたしたちの病院は急性期病院であり、患者さんを早く治すことが主な目的となります。連携する病院は、回復期・慢性期病院であり、患者さんを自宅ないし、施設にスムーズに移行することに主な目的があります。当院の看護師は連携する病院の現場を見て、そしてその病院で数週間研修して、その成果を発表しているのです。自主的にすばらしい研修をしていることに院長として感激しました。 この様な現場の声を活かして、実際に機能するシステム造りが大切であるかを考えさせられました。

2016年 5月 20日 姫路赤十字病院 院長 佐藤 四三