院長徒然日記

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No.74 人生のシナリオ

人の一生をどのように捉えるか、想いをめぐらせることがあります。一生を自分が主役のドラマであるとすれば、なんだか答えがすっきりします。ドラマの作家・脚本家は、あくまで自分であることは当然のことであります。そこで肝心なのがシナリオです。
序章は親、学校の恩師、身近な人で尊敬する人にゆだねることになります。その環境の中、成長していく段階で、自分なりのシナリオの書き方を学習し、模索することになると思います。
あるときから自分にふさわしいシナリオを創って、主役を演じるようになる。これが本当の意味で親離れを迎えるときであり、おとなになる一歩を踏み出す出発点になります。出発点を迎える時期は人それぞれであり、若い時に出発する人もあれば、かなりの年齢に達してからの人もあるでしょう。ただし最初書き始めたシナリオがそのままその人の一生である必要はなく、局面局面でかわることは当然であり、十分あり得ることです。誰もが最初からきれいなシナリオを持つ事は難しいと考えます。

わたしの序章は、振り返ってみると、小学6年生時、算数が好きであったわたしに、“つるかめ算”の答えを導く時、担任の先生が、「連立方程式により答えを導く方が考え方に発展性があるよ」と指導してくださったことかと思います。当時小学生で連立方程式など習う事柄ではありませんでした。勉強の楽しさが判ると同時に、合理的で応用のきく解決法があると理解した時点でした。そしてわたしの第一歩は、高校進学であったと思います。高校進学にあたり、自分の描く将来のため、大学進学がどうしても必要であることを自覚するようになり、田舎で育ったこともあり、希望の高等学校に進学するには下宿生活が必要でした。当時下宿生活は大変で、覚悟を決めて物語をスタートしました。途中曲折があり、医師への道を歩むことになりました。その後外科医を極めるといった方向性に揺るぎはありませんでしたが、流れを俯瞰的に観察して、時々に訪れるチャンスを自分なりに活かして現在があると思います。残りの人生どれくらい残っているか知る由もありませんが、シナリオを書き上げる時期が来ているのではと考えています。

フランスの微生物学者ルイ・パスツールの言葉に「チャンスの女神は準備を整えた人を好む」があります。
人生のシナリオはもちろんその通りに必ず行くわけではありませんが、想い描く筋道をたどるには、自分の置かれている状態、ものの流れを冷静に観察していれば必ずチャンスはめぐってきます。これを見過ごすことなく捕まえることが重要です。将来は運命が決めるのではなく、自分で戦略を決め自分の進むべき道を選択することが肝心であるとわたしは常日頃から考えています。そのように振る舞うことで人生のシナリオを自分で描くことができるのです。

2016年 2月 29日 姫路赤十字病院 院長 佐藤 四三