院長徒然日記

院長徒然日記

No.61 現場に問題意識があってこその洞察力


わたしたち医療に関わるもの、特に患者さんと直接接する職員は毎日毎日いろいろな事象に対して行動しているのが医療の現場です。命を預かる職種であり、行動により、結果により患者さんから評価されますので、ある意味大変な仕事の一つと考えます。患者さん、家族は、病気に関わることですので大変神経質になっていますが、これは当たり前です。特にわたしが勤める急性期病院ではそうであると実感します。

病院では患者との意思疎通が十分でなく、これが原因と考えられる行き違いがたくさん生じています。またどの病院でも“ご意見箱”が置かれており、感謝の気持ちを書かれた中に苦情も多く見受けられます。やはりコミュニケーションができてさえいれば苦情にまで発展しない事例も多くあります。当然病院としても職員教育、マニュアル等整備はしておりますが、すべてがうまくできてはいません。今の日本では様々な事象に対応するためマニュアルが作成され、これに沿うように指導されています。特に医療の現場では数え切れないほどのマニュアルが存在し、新たな問題が発生すればさらに増えるといった現象が生じています。マニュアルの大切さを否定するものでは決してありませんが、別な方法論もあるのではと考えます。それは洞察力です。良い判断・対応をするに欠かせないのが洞察力、つまり物事が秘めている重要な本質を見抜く頭脳力と言えます。

洞察力を辞書で調べると、観察力との違いが書かれています。観察力とは物事の状態や変化などを客観的に幅広く、注意深く見ることができる力であり、洞察力とは物事を観察して、その本質や、奥底にあるものを見通す力のことです。判り易い例えとして、ニュートンがリンゴの落ちるのを見て万有引力を洞察した話は有名です。サイエンスでは新しい仮説を立てるときには当たり前に行われていることと思います。人間関係におけるコミュニケーションを考える時も、これを良好にするには洞察力は大変重要であります。
洞察力や本質を見抜く力を身につけるにはどうしたらできるのであろうか?学校教育の役割も大事とは思いますが、これは教えられて身につく代物ではないようです。特に知識偏重の教育では難しいとされ、やはり個々人が自主的に学ぶことが欠かせない領域です。普段から問題意識をもって常に考える習慣をつけることが大事です。

病院内で生じている苦情を少なくすること、なくすることは患者・家族にとっても、また職員にとってもモチベーションを高く維持するにはとても大切なことです。現場でこの問題を解決するといった問題意識をしっかりと抱いて、苦情につながっている事例を客観的に観察し、その奥にある本質的な事柄を洞察すれば解決策は自ずと見出されます。確かにマニュアルを作ることも大切ですが、並行して洞察力も養うことで、様々な事象、予測しない出来事に柔軟に対応できるのではと考えます。

今回病院での悩みの一つを書いてみました。

2015年 8月 21日 姫路赤十字病院 院長 佐藤 四三