院長徒然日記

院長徒然日記

No.60 何をもとめて
村松静子先生
村松静子先生
厚生労働省は2015年7月30日、2014年における日本の平均寿命は、男性が80.50歳、女性が86.83歳であったと発表しました。
男性も80の大台に乗り、長く生きるのだなと思うとともに、私も60歳を超え、最期の4半期を過ごしているとあらためて実感させられました。60歳まで臨床外科医一筋で突っ走ってきましたが、何を求めてそれまで過ごしたのであろうかと回顧する間もなく、今は病院長・管理職としての駆け出しをスタートしている段階です。病院は今後どの方向に進むことが良いのか、地域の中で受け入れられ続けるとはどのようなものか、明確な答えをもって日々を過ごすことがとても大切であり、使命であるとひしひしと感じています。いまはまだその答えを模索中ですが、その答えが私個人の求める答えと一致するよう心の中を整理することもまた大事であります。

先日、当院で村松静子氏の講演会がありました。彼女は日本赤十字社医療センターの初代ICU看護師長を務められ、その中で在宅看護の必要性を実感し、日本で初めて訪問看護を専門とする看護師集団の在宅看護組織を設立されました。今日も素晴らしい仕事をつづけられています。これらの功績が認められ、2011年フローレンス・ナイチンゲール記章を受章されています。
講演の中で、『「助けてください!」この一言が私を在宅看護の道へ導いた』と話されました。医療センターという高度急性期病院のICU看護師長(ある意味看護師の中ではあこがれの的)を務められている最中、これからの医療は在宅看護であると自分の中で確固たる方向性、自分に与えられた使命を見出されたのです。患者個々人をしっかりと観察し、最高の看護を実践する場は在宅であると確信を抱かれたのでしょう。実践するための様々な障壁―周囲からの非難、法の壁、経営の壁―これらの障壁を一つ一つ乗り越え、患者・患者家族のために現在も活動を続けられていることを知り感銘いたしました。これだけの事業を立ち上げられたにもかかわらず、飽くことなく次の目標に向かって進まれていることは素晴らしいことです。エールを送りたいと思います。

大阪大学総長 平野俊夫先生の言葉に「目の前の山を登りきることが大事。研究は、どこが頂上かわからないが、登り切ると、新しい世界が見える。夢は実現が難しいから夢。夢に向かっていく一つひとつのプロセスが、私たちの人生を豊かにしてくれる。」とあります。わたしもいち肝臓外科臨床医としては、周囲を見渡せる山には登り切ることができたと自負しています。肝臓外科医としての新たな山への挑戦は後輩に託しました。院長になったいま、登りきった山から見えた景色を評価し、これを土台として、大きく変化している医療環境の中で、病院のあるべき新たな山の頂上に向かって舵を取り続けることができれば、自分の人生を豊かにできると信じています。

2015年 8月 7日 姫路赤十字病院 院長 佐藤 四三