院長徒然日記

院長徒然日記

No.53 鳥の目、虫の目、魚の目
入社式
入社式
節
日本赤十字社病院院長連盟通信に投稿した記事で、日頃院長職として思い悩んでいることを載せます。今年の初めに書いたNo46 「平成27年迎春」と重なるところがありますがご容赦ください。

書写山円教寺摩尼殿で新年を迎えました。円教寺は兵庫県姫路市の書写山にある寺院で、天台宗の別格本山で、西国三十三所第27番になります。大晦日夜10時半に家を出て、ロープウェイに乗り11時前には山上駅に着き、そこから摩尼殿までの参道をゆっくりと歩いていきました。年越しまで時間が早かったのか参拝する人はまばらでした。懐中電灯をたまたま忘れたこともあって所々にある電燈の薄暗い明りの中、また真っ暗な中を進むことになりました。これが幸いして、しかも身の引き締まる寒さも加わり、昨年1年間の出来事などを思い返しては、自讃したり、自省したり、適度な時間と空間でした。途中姫路市内のきれいな夜景も見ることができ、雨上りの澄み切った星空を眺めることもでき心が洗われたような気分でした。
昨年NHK大河ドラマ『軍師官兵衛』により姫路市は賑わいがありました。その黒田官兵衛ゆかりの円教寺では新年への希望を込めた漢字一つを選んで大書する「新春夢の書」が毎年執り行われていますが、この実況中継が今年のNHKゆく年くる年で行われ、私もその場に居合わせることができました。年が替わった瞬間を待って、大樹住職はゆっくりと筆を運び始められ、大きな屏風に表れた今年の漢字は『節』でした。住職が「節目」、「節度」などの熟語をつかわれ新年への願いを込めて法話をされました。いろいろ考えさせられ、これからについてありがたい法話でした。拝殿で参拝を終え、今年についての想いを色々めぐらしながら山を下りました。途中明るく力いっぱい除夜の鐘を撞く多くの人たちも眺めることができ元気をいただきました。山を登るとき眺めた姫路市夜景、澄み切った星空を再び眺めるころには、何となく今年の想いについて弱くではありますが光が射してきました。

2025年を見据えて地域の中での自病院のポジションを早急に具体化できるかどうか、本年は病院経営者の手腕が問われる大事な1年になります。大きな視野で、しっかりと足元を見ることができ、しかも時代の流れを読み取る力、すなわち確かな『鳥の目、虫の目、魚の目』が自分には備わっているのか不安になってくる時があります。
虫の目は経営資源としてヒト、モノ、カネ、情報、組織文化、知識・技術についての自院の正確な状況を把握する力が重要です。特に日々の経営状況、臨床指標、医事統計などの経営の基本的な動向に目を向けることは特に重要と考え、的確に判断して、異常な動向と判断すれば迅速に対応することが求められます。小さな虫の視点で持って、さらに複眼でもっと細かく改善の余地がないか常に考えるといった精緻な観察力を研ぎ澄ますことが大事と考えます。
鳥の目は少し高い位置から組織全体を観察する能力が重要です。個々の組織現象を狭く深く見て、的確な行動をすることは確かに重要ではありますが、当然ですがそれぞれの現象は有機的に繋がっています。組織全体としての目的、目標達成に無駄なく効率的な動きをしているかを俯瞰し、適切な方向へ誘導する能力を備える必要があります。
魚の目は社会の動向など未来への流れを的確にとらえ、組織の方向性を決定する能力であり、最も大切な点と考えます。大切なのは時間軸を意識しながら現在の組織を観察する力です。今年より地域医療ビジョン策定の協議が各地域で本格化しますが、これはどの医療機関に於いても将来を決める最重要な課題です。各医療圏で置かれている立場がそれぞれ異なりますので、今までのように船団方式で対処することはできません。中・西播磨医療圏でも個別の案件、条件が山積しています。特に基幹病院の新築移転問題を抱えており、地域の情勢を適切に見据えて病院のあるべき姿を形づくることが求められます。
これら3つの視点は別々ではなく連動しています。経営資源を中心に個々の現象を精緻に観察し、目標達成のための方向性の正しさを確認し、これが社会、時代の要請にかなっているかを各々評価する、この視点を移動し、常に繰り返し行うことで難関を乗り切る覚悟です。院長として最大の力量を発揮する場面であると認識しています。

夜が明けて元旦には例年のように病院各部署を巡回いたしました。当たり前のことですが、休日にも多くの職員がいつものように働かれています。職員と新年のあいさつを交わすとともに、ねぎらいの言葉をかけて回りました。2015年はすべての団塊の世代が高齢者に突入する年であり、日本の医療界にあっては特記すべき年明けとなります。急速な高齢化、疾病構造の変化、医療技術の進歩、人材の不足・偏在、患者意識の変化、財政収支悪化等大きな問題に対応するため病院は大きく変化を求められる元年になります。中・西播磨医療圏においても地域医療ビジョン策定の協議が今年より本格化しますが、わたしたちの病院は、医療圏における地域包括ケアシステムで必要とされる高度急性期医療を担う医療機関として、地域医療に貢献している姿を職員とともにつくりたいと気持ちを新たにいたしました。

2015年 4月 16日 姫路赤十字病院 院長 佐藤 四三