院長徒然日記

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No.49 高齢社会の医療と進歩する医療技術

最近のニュースでは毎日のように新しい医療技術の進歩について情報が流れています。実際に医療現場で仕事をしていますと、例えば10年前と比べ明らかに技術の進歩がみられ、めまぐるしい変化を実感することができますし、今後この変化はますます加速されることが容易に想像できます。

今、日本の医療界では2025年問題といわれている世界に類を見ない高齢社会に向けて、対応すべく変化をはじめています。地域に置き換えてみると医療提供をいかにすべきか地域ごとに協議が始まっており、医療機関には医療関係者も含めて大きな意識改革が求められています。
それと同時に、地域住民もわたしたち医療関係者とともに意識を大きく変えることこそが、2025年問題を上手に乗り越えることになります。この社会変化の真っただ中でめまぐるしく進歩している医療技術をわたしたちはどのようにとらえれば良いのでしょうか。

新しい技術を現場に取り入れる場合、問題点を私なりに整理すると、①その技術は倫理的に問題ないか、②健康寿命に貢献するか、③社会全体として、また個人として費用対効果は十分あるか に集約することができます。
倫理に関しては医療界、日本社会全体で公の場で十分議論を尽くして合意を取り付けることは当然です。これを基本とするならば、その技術は定着し、多くの患者さんにとり易があります。
2013年の日本人の平均寿命は女性が86.61歳、男性が80.21歳で、男女ともに80歳を超える状況でした。普通私たちは日常生活の中で健康でありたいと願っていますし、またそうであることが日本社会の活力につながる本質であると考えます。このためには平均寿命を指標にするのではなく、健康寿命、すなわち日常的に介護を必要としないで、自立した生活ができる生存期間を指標としてとらえることがより重要と考えます。できるだけ健康寿命を平均寿命に近づけることが求められます。新しい技術がこれに貢献するものであれば、より素晴らしいこととして歓迎したいと思います。 わたしは消化器外科医でありますので、がん患者さんの治療に関わることが多いのですが、最近の化学療法に対する医療費が一昔前より明らかに高くなっています。最近では治療法について説明することは当然ですが、それと同時に高額な治療法に関しては患者さんが負担する治療費についても説明するようにしています。時に治療費の点で新しい治療を選択されない患者さんを見受けます。このときはわたしとしても複雑な気持ちにさせられます。しかしこれは必然なことであり、当然日本社会として考慮すべき内容と考えます。一般的に新しい技術は医療費が高い傾向にあります。そこで最近「費用対効果」の議論がされはじめています。その議論を見守りたいと思います。

医療と進歩する医療技術の関係を考えるとき、医療の原点に返り、医療とは何かを考えることが大事です。人々にはそれぞれの考え、生き方があって良い。最新医療技術をよく理解したうえで、人間本来の姿として、受け入れるべきこと、受け入れべかざることを自分なりに区別し、ときには近代文明から少し離れて自らの態度を決めるというのも、また一つの生き方と考えます。

2015年 2月 16日 姫路赤十字病院 院長 佐藤 四三