院長徒然日記

院長徒然日記

No.27 地域みんなで創り、育てる医療
▲当院の救急外来
▲当院の救急外来
今日本は超高齢社会に向かっており、今後少なくとも10年以上にわたり、救急搬送患者は確実に増加すると考えられています。一方、地方では医師偏在による医師数の減少、救急医療機関の減少が続いており、医療の現場は大変厳しい現状となっています。このため医師数の少ない地方では、救急医療そのものが悪循環に陥っており、基幹病院あるいは救命救急センターへ押し寄せているのが全国的な状況です。私たちの住むここ姫路市でも例外ではありません。現在、休日夜間の救急対応は、姫路市、医師会、医療機関で協力しながら、輪番制で対応していますが、十分機能を発揮しているとは言えません。昨年3月製鉄記念病院のER型救命救急センターが稼働しましたが、まだまだ厳しい現状が続くことに変わりはないと思います。

先日4月27日、医師会主催の「姫路健康フェスティバル」で『みんなで考えましょう 上手な病院のかかり方』で話をする機会がありました。姫路市の医師数は全国平均より下回っており、しかも年々減少している特徴があります。この状況の中でいかに上手に病院へかかるかについて話をいたしました。

救急医療の対策を簡単に述べることは容易ではありませんが、院長になり、少し広い視野で医療現場を見ることができるようになり、患者の立場、そして医療者の立場より観察して、おぼろげながら見えてきた救急医療のあり方の打開策の方向性について、現時点での私なりの考えを述べてみます。

先ず医療はコストと国民の負担のバランスで成り立っている現実を受け入れることが必要です。医療費は毎年1兆円増加しており、いつまでもこの状態が続くとは考えられません。しかしながら最近の社会風潮は医療万能の幻想がまかり通っています。冷静に考えればそうでないことはすぐ理解できるのですが・・・。いつでも専門医が診るべきで、結果が思わしくなければ医療不信につながるといった傾向にあります。昨年3月、社会保障制度改革国民会議では、「いつでも」「誰でも」は守らなければならないが、「どこでも」はもはや困難であると結論付けています。

医療万能の幻想、医療不信に陥る傾向はどこから来るのでしょうか。医師や看護師は教育課程、また日々の診療においても命や病気、医療現場の現実と向き合っています。ところが一般の人はこれらについて系統的に学ぶことは稀で、知る機会もほとんどありません。昨今はメディア、ネットなどでトピック的な知識を得ることが多くなってきており、医療関係者と患者さんの間では、お互い「当たり前」と考えている知識に隔たりが生じてきて、共通の認識の上にコミュニケーションが行われていません。これらのことが大きな要因であると考えます。

では危機を迎えている救急医療を守るためにはどうすればよいのでしょうか。救急医療を担っている現場の医師、看護師は実によく頑張っています。病院も体制を充実することも重要です。ただ患者さんにも医療を受けるうえで大切なこととして理解していただきたいことがあります。それは「医療は不確実性であること。納得の医療を受けるために、自分の病気、身体を知ること。かかりつけ医を持ち、二次、三次医療はかかりつけ医から。地域の医療現状を知る。」です。医療者を守ることは、患者を守ることにつながります。即ち患者の不安や不満が減ることが医療者の負担軽減になり、医療環境を改善することになります。それが結果的に患者自身を守ることにつながります。

医療は誰もがお世話になる大切なものです。医療は医療者が一方通行で行っているものではなくて、「みんなで知って、支えて、守ることが大切」と考えます。「与えてもらうものではなく、ともに創って育てていくもの」です。このような状態になるにはまだまだ時間が必要と思います。医療に携わる一人として実現に向けて役に立てればと思います。

2014年 5月 1日 姫路赤十字病院 院長 佐藤 四三