院長徒然日記

院長徒然日記

No.26 残 心
▲心ある対応が大切です
▲心ある対応が大切です
日本の武道は現在では一般の市民にはスポーツ競技として理解はしているものの、いわゆる本来の武道としての側面はほとんど理解していないのが本当のところと思います。私も実際はほとんど知りません。柔道は今ではオリンピックの競技になっていますが、最近の柔道の試合をテレビで見ますと、なんだかレスリングに近いように思われます。ロサンゼルスオリンピックでの山下泰裕氏が足を負傷しながらの決勝戦の姿を思い出しますが、実に堂々として美しささえ感じられました。

先日テレビで弓道の試合をたまたま見る機会がありました。団体戦の試合でしたが、矢を射た後の落着きはらった姿に美しさを見ることができました。優勝を決めた瞬間であるにもかかわらず、静寂の時間が流れているのです。これこそが本来の日本の武道に通じる何かを表していると直感しました。『品』を垣間見ることができました。辞書を調べるとこの状態を『残心』と表現するようです。射法八節といって射の基本動作を8つの節に分けています。足踏み・胴造り・弓構え・打起し・引分け・会・離れ・残心の8つです。当然若い女性たちの試合ですから弓道場を退出してからは皆で喜び合っていました。

数年前にある横綱が優勝した瞬間にガッツポーズをしたことがありますが、バッシングを受けていたことを思いだします。日本の武道にはルールとか決まりはなく、どの様な行動をすべきかといった常識があり、日本人はこれを自然に身につけていると思われます。この様なことは教育するとか、教えるといった内容ではなく、日常生活の中から学ぶものと考えます。

私は病院に努めていますが、病院は病を持たれた患者さんに対して医療を実践しています。人は誰しも自分の弱みを他人に見せたくはありません。しかし患者さんは私たち医療人に対してある意味弱みを見せた上で良質な医療を求められています。良質な医療の中には技術は当然であり、それに加えて心のある対応が含められています。心のある対応をなすには接遇教育も重要ですが、それ以上に日本人が自然に身につけている常識が不可欠なのではないでしょうか。それは日本の武道の中に見出されるのではと思います。

2014年 4月 21日 姫路赤十字病院 院長 佐藤 四三