院長徒然日記

院長徒然日記

No.202 駆け抜けた1年

 今年も残りわずかとなりました。この一年を振り返ると新型コロナウイルス感染症にまつわること以外何もなかった感があります。まさにコロナで始まり、コロナが終わらなかった一年と言えます。感染症騒ぎは中国武漢で始まりましたが、まだ他人事でした。しかし1月の終わりにプリンセス・ダイヤモンド号が横浜港に入港すると心が騒ぎ始めました。2月に入ると病院でも感染症対策を再確認するようになりましたが、正直まだ緊迫感はありませんでした。しかし3月6日、県の健康福祉課から一本の電話が入ってからは様相がガラリと変わりました。今でも正確に覚えています。「本日夕刻に県の記者会見があります。それまでに感染患者の入院お願いします。」この日以来感染病棟には、6、7月を除いて毎日患者さんが入院されている状態が本日まで続いています。わたしは3月以来今まで病院にいる時は必ず感染病棟を見回りしています。最前線で仕事をしている職員、特に看護師の仕事、考え、そして病棟の雰囲気が刻々と変化している様相を見てきました。

 当院の役割は中等症までの患者であり、重症化すると重症患者を受ける病院へ転院することになっていましたので、緊張感はあるものの比較的粛々と仕事をされているように見受けられました。しかし11月半ばを過ぎたあたりから雰囲気はそれまでと全く異なり、厳しさが数倍増しました。高齢者、介護度の高い患者さんが入院され、重症化する患者さんも多くなりました。特に厳しさを増したのは、重症化しても、重症患者を受ける病院への転院が困難となり、当院で加療せざるを得ない状況となった頃からです。人工呼吸器を装着する患者も治療せざるを得なくなりました。

 感染病棟での看護師さんの仕事のごく一部を紹介します。実務をしていないわたしに資格はありませんが、実態の一部でも知っていただき、何かを感じ取ってくださることを願い、今年最後になる日記に記します。病棟で行う通常の病状観察,点滴などの業務は当たり前に行っています。食事の配膳、食事介助、排便介助、ベッド、室内、トイレ、シャワールーム、使用した器具やごみの収集・廃棄、患者さんの日常生活に必要な物品の受け渡し、これ以外にも細々としたあらゆることを一手に引き受けて行っています。本来ですとこれらは他の職種と連携して行っています。患者さんが重篤化すると、喀痰の輩出を促すための頻回の体位交換や吸痰、排便介助など看護のみならず本来ではない介護業務が主な作業となっています。このような業務を感染防御のために防護具を付けて汗だくで行っています。作業の様子をテレビモニターで見ることがありますが、心のそこから頭の下がる想いです。涙が出てきます・・・。

 看護師さんには家族があります。子供がいます。親がいます。感染症から本人も当然ですが、家族も守らなくてはなりません。さらに追い討ちをかけるのが世間からの誹謗中傷です。 看護師には目の前の命を守る使命感で仕事をされています。使命感だけに頼る医療でよいのでしょうか・・・・。豊かな日本であるためにこれでよいのでしょうか・・・・。

 今年はコロナであっという間に駆け抜けた一年でした。医療のあり方を考えさせられた一年でした。
 来年こそは良い一年でありますように。

2020年 12月 28日 姫路赤十字病院 院長 佐藤 四三