院長徒然日記

院長徒然日記

No.173 出生数90万人割れへ
日本経済新聞(2019/10/7)より引用
日本経済新聞(2019/10/7)より引用
これから日本は急激な人口減少を迎え、高齢化率は増加を続けると推測されています。このような流れのなかで、医療の内容は徐々に「病気を完治させる医療」から「病気と共存するための医療」へと変容しつつあり、慢性期医療の需要が高まるといわれています。以前は、感染症や外傷などが重篤化しやすかったため「完治させる」ことを目的とした急性期の治療がメインでした。しかし、医療技術が進歩したことで、それらが徐々に克服され、高血圧や糖尿病などの生活習慣病などの治療が注目されるようになりました。多くの生活習慣病は完治することが難しく「病気と共存する」ための治療、つまり慢性期医療が必要となります。
しかしここで大きな問題を含んでいます。2035年には、団塊の世代が85歳以上に到達し、それまで医療ニーズ(特に回復期、慢性期)は右肩上がりに膨らみますが、その先の10年間で徐々に減っていくと予想されています。つまり2035年までの「増えていく医療ニーズ」とそれ以後の「減少していくニーズ」という2つの局面を日本は迎えることになります。

人口構造の変化と医療の関係については様々な講演会で耳にしています。それと言うのも病院の管理者として、人口問題には普段から関心を持っており、病院の長期展望を考える上でどのように舵取りをするかは重要な課題です。つい先日、この様な事を思案している時に「出生数90万人割れへ」、新聞一面の見出しが飛び込んできました。出生数が90万人を下回ることは推計されていましたが、2年早く訪れたことに驚いています。出生率が上がらない理由はいろいろ述べられていますが、それは他に譲り、わたしは医療との関係を少しばかり述べてみます。
労働力の確保が困難であることは予測されていますが、これは医療・介護分野へのインパクトとしては大変大きいものがあります。今でも医療・介護分野にかかる職種は、人手不足の状態が続いています。高齢者の増加によって医療・介護の需要は高まる一方、労働人口が減少すると、医療・介護分野にはより深刻な問題がもたらされ、サービスの供給量が不足することになります。AI(人工知能)やIoTの活用、M字カーブ(女性の労働力率の一時的低下)の抑制、定年退職後の雇用の継続等々考えられています。これらは喫緊の課題です。

取り留めのない内容になりましたが、人口問題と医療は地域の住民にとって大変重要な問題となります。予測よりも一段と早く訪れると覚悟しなければなりません。少なくとも行政、住民、医療・介護関係等が、柔軟に変化して2つの大きな局面を乗り越える策を講じることが、何よりも求められます。しかも今までの工程よりも前倒しで取り組む必要があります。

2019年 10月 9日 姫路赤十字病院 院長 佐藤 四三