院長徒然日記

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No.167 『できることは全部やる』

 7月11日探査機「はやぶさ2」が小惑星リュウグウへの再着陸に成功したとのニュースに国民の多くが感動しています。わたしもその一人です。今年2月に1回目の着陸で地表の砂や石の採取に成功、4月には人工クレーターを作ることにも成功し、今回2回目の着陸で地下の岩石採取に成功といった快挙を成し遂げ、プロジェクトマネージャーは喜びをあらわにしていました。あとは貴重な岩石を持ち帰ることを祈るばかりです。

 その後プロジェクトチームのことについて紹介されている記事にいくつか触れることがありました。その中でチームには初代のはやぶさチームから受け継いだ『できることは全部やる』という精神があることを紹介されていました。
 1回目の着陸の際にはやぶさ2のカメラが砂で汚れ、再着陸のための目印が見つからない恐れがあり、JAXAの上層部では「再着陸は断念して地球に帰還すべきだ」との慎重な意見が多くあったそうです。最初の着陸で地表の砂や石を採取できているにもかかわらず、再着陸で機体が損傷し地球に帰還できないことになれば、貴重な資料が水の泡と消えてしまう危惧がありますので一理あります。しかしプロジェクトチームには『できることは全部やる』という精神があり、はやぶさ2の機体状況やリュウグウの地表状態など条件を何通りにも変えて組み合わせ、着陸シミュレーションを10万回実施し、そのいずれにも成功するという成果を得ています。確かな技術があるなら着陸しない選択肢はないとの結果快挙につながっています。プロジェクトマネージャーは2回目の着地を前に『はやぶさ2のミッション自体が、積み上げた技術による挑戦であり、やらないという選択肢はなかった』と語っています。

 今回の記事で新たなプロジェクトを成功させるための気概について改めて強烈に再認識させられました。ミッションを計画するとき、いきなり浮かび上がるものではなく、ある程度の基盤があり、始めて起草されるものです。正に積み上げた技術の挑戦の上に計画するものです。わたしたちも程度こそ異なりますが、それまで培ってきたパーツを組み合わせながら、目標に向かって物事を進めています。経過中不都合な点が表面化し、計画を進めるか中断するかの局面に立たされることもままあります。推し進めたために失敗した時はダメージが大きくなり、中断すればダメージは少ないが何も変わらないばかりか進展も得られなくなると言った状況でリーダーは選択を迫られることになります。
 はやぶさ2チームの素晴らしいことは、「できることは全てやるの精神で、シミュレーションを10万回も行い全て成功した成果をもって再着陸に挑戦成功した。」と言ったプロセスであり、これは学ぶことの多い教材と言えます。

2019年 7月 24日 姫路赤十字病院 院長 佐藤 四三