院長徒然日記

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No.143 老朽化したインフラ

イタリアで高架橋崩落事故がおこり、41名の犠牲者が出ました。このニュースを見て直ぐに2012年の笹子トンネル崩落事故を思い起こしました。この時は9名の犠牲者を出しています。イタリアでは2013年当時橋は崩落の危険が指摘されていましたが、政府は「橋はまだ100年大丈夫」という調査結果を出しており、工事より環境やコストへの配慮を優先するよう訴えていた様です。笹子トンネル崩落事故では、開通後一度も補修だけではなく点検さえもされていなかったと言われています。どちらの事故も起こるべくして起こったものと残念です。

産業や生活の基盤として整備される社会インフラは、長期にわたって快適な生活を支え、地域の経済活動を活発にする役割を果たしております。日本では戦後巨額の資金を投じて整備してきましたが、長引く不景気、少子高齢社会化等により政府はインフラ整備のための資金投入を縮小せざるを得なくなっています。
新たな設備をつくることは華やかであり産業も潤うこともあり予算が付きやすい面がります。一方、設備の維持管理は地味ですが、極めて大切なことにもかかわらず予算が後回しになる傾向にあります。民間活用や「選択と集中」により、維持管理コストを軽減するなどの努力がなされてはいます。しかしながら最近気候の急激な変化などが重なり合い、道路、鉄道、上下水道、ダムなど老朽化が原因と考えられる災害が目立つようになっています。
インフラの整備をする時、地域全体を俯瞰してどんなコンセプトを持って施設が必要か、経費も含めた維持管理コストを考慮して企画する必要があります。古代ローマ人は街道、橋、水道、浴場、闘技場などを多くつくり、街道や水道などは2000年経た今でも使用されています。この文化を持ちながら今回イタリアで高架橋崩落事故が生じたことは残念です。インフラは100年、200年単位で先を見据えて考えなければならない時期が到来しています。

ところでインフラと言えば施設や設備を指しますが、これらと同様にこれらを運営するためのシステムも老朽化しているのではと危惧しています。ガバナンスとかコンプライアンスなどの基本的な在り方が時代の変化・要請に日本社会が相応しておらず、これらに関係した事件が最近目立つようになっています。省庁の公文書問題、大手鉄鋼業・自動車製造業などの不正データ問題、アマチュアスポーツ界の不祥事などが明らかになるにつれ、かつての日本の良さが失われているようです。

病院組織でもこれに類したことが少なからず生じているのではと心配しています。少子高齢社会を控えて医療の世界は変革期を迎えて劇的に変化をしています。自院を見ると創立110年の歴史があり組織文化、システムを構築していることは確かであると自負しています。しかし伝統に安住していたのでは激変している社会の要請に応えることはできません。時代の流れを的確に読み取り、変化に対応できるよう柔軟に頭・考え方を切り替えることが重要であり、これを職員一人一人が自覚することが大切なのではと思います。
ダーウィンの言葉に「変化するものだけが生き残る」があります。管理者としては時代の要請を的確に察知して組織を10年、20年先を見越し、制度設計から見直すべくリーダーシップを発揮する能力が求められていると自覚する今日この頃です。

2018年 8月 30日 姫路赤十字病院 院長 佐藤 四三