院長徒然日記

院長徒然日記

No.13 慣 れ

 本年4月院長に就任して6カ月が過ぎました。この6ヶ月間は私にとってあっという間でありましたし、またすごく長かったとも感じられる間でもありました。日本の公的病院では、一般企業と異なり管理職の教育を十分受けることなく、組織のトップになることはよく見受けられます。私の場合副院長の期間が短かったこともあり、管理職たるものが何であるかも十分理解しないままでの船出でした。何もかもが新しいことで、一つ一つを勉強し、自分なりに理解し、次のステップに進んでいくことの繰り返しでした。今後もこの繰り返しが続くことには変わりありません。就任挨拶で述べました「働きたい病院造り・治療を受けたい病院造り」を目指し、少しでも理想に近づけるよう日々研鑽していく覚悟です。

 院長になり判断する局面、決断する局面、新たな人との面会、挨拶等々病院の代表として、責任をもって対処することばかりです。これまでの外科医としての生活とは180度異なり、新たな人生が始まった感があります。毎日が新しいことばかりといっても、人間だれしも環境に“慣れ”の状況になります。半年もたてば、慣れてきた部分があり、一部の局面ではパターン化した対処を取るようになっている自分を自覚しています。仕事を行う上でそのことに十分に慣れ、習熟することは大変素晴らしい面があります。しかし繰り返すことによる習熟の反面、慣れにより基本的な事象を省略してしまうという恐ろしい面もみられます。そこで“慣れ”に伴う“飽き”、”マンネリ化”の発生の原因、解消法などについて考えてみたいと思います。

 どの様な刺激でも繰り返し経験するとその新奇性は結果的に失われることになります。いわゆる馴化が生じてきます。馴化は本来、環境への適応であり、生活体の生存を保証するものであります。そのため、これを完全に除去することは困難でありますが、馴化の速度を遅らせることは可能です。このためには、同一の刺激を繰り返すことなく、かつ頻繁に与えず、また、新奇な刺激を与えることが効果的と考えます。さらには最終的に慣れの素晴らしい面を引き出すには、慣れから得られる直接的な効果ではなく、使命感の達成とか仲間との連帯感などの報酬を用意することが必要です。

 次に慣れによる恐ろしい面としてモチベーションの低下があります。仕事を続ける上でモチベーションの維持は大変重要です。モチベーション改善の有効な一つとして、人に応じた適切な高い目標を設定することが考えられます。本人がその目標を受容している限りにおいては、限界点に近い努力が継続される可能性が高いと思われます。このことから、仕事の目的・意義が理解されていれば、より難しい課題の方が高いパフォーマンスが期待できると考えます。あくまでも自らが高い目標を設定することが重要であり、その目標は達成に向けての方略が適切であることが必要です。

 もう一つ忘れてはならない重要な点があります。集団の意思決定は必ずしも優れたものになるわけではありません。ときには考えられないような愚かな決定がなされることがあります。このような集団的浅慮は、団結力の強い集団ほど起こりやすいとされています。それは、問題解決よりも集団の和の維持に多くの力が注がれ、結果的に集団のパフォーマンスが低下します。異なる意見を意図的に持ち込むことにより、集団が偏った一面的な見方に陥ることを阻止し、多面的な討論が期待できます。

 難しいことをあれこれ書きましたが、要は慣れの素晴らしい面、恐ろしい面を忘れることなく、今後も皆様の力を借りながら院長の職を勤めていく所存です。


2013年 10月 10日 姫路赤十字病院 院長 佐藤 四三