院長徒然日記

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No.120 「目的」と「目標」、自己への戒め

神戸製鋼所の品質データ改ざん、日産自動車やスバルの無資格検査問題など、日本が強みとしてきたものづくりの信頼を揺るがす不祥事が大問題となっています。日本の将来に多くの日本人が不安を抱いていますが、わたしもその一人です。
戦前・戦後の一時期日本製品は“安かろう悪かろう”と評判の悪かった時代がありました。もともと日本人は手先が器用で、ものづくりで昔から誇れるものがありましたが、日本の工業は残念ながら町工場での名人芸的な生産体制であったため 、一定の品質の製品を大量生産する力がありませんでした。品質のばらつきが大きすぎて、不良品が目立ち、日本製品は低品質と言われた所以です。戦後輸出国家を目指した日本は、通産省が中心となり、JIS(日本工業規格)、輸出時の品質検査を厳格にし、これに産業界も協力し品質管理の導入などして、先人たちが長年をかけて、ものづくりの信用を勝ち得て今があると理解しています。

なぜ、いま日本のものづくりの信用を揺るがす事態が生じたのでしょうか。日本経済新聞Opinionの記事をわたしなりに解釈し、紹介します。

日本経済新聞 オピニオン 時論・創論・複眼『ものづくりの信頼、どう回復(複眼)』
平井良典氏/中島茂氏/榊原清則氏 11月7日付

『問題点は2点あり、その一つは消費者目線の欠如であり、二つ目は「契約書は大事」の文化が浸透していないことである。今でも、日本のものづくり現場の真面目さは世界に誇れるものを認めつつも、技術開発が自己目的化しており、消費者が何を重視しているかの視点が欠けている。本来は経営陣が現場の努力の方向性を消費者目線に修正しなくてはならないが、大企業になるほど製造現場と経営陣との対話が機能しなくなっている。この壁を突破することが法令順守にもつながる。経営者が正しい経営哲学を十分に持っていないことだ。』

わたしも500床規模の地域中核病院を預かる身として、今回の不祥事から病院の在り方について改めて考えさせられるところがありました。企業であれ、病院であれ、管理者は、経営哲学の中で「目的」と「目標」の違いを理解することが基本であると考えています。「目的」とは、最終的に行きつくところであり、「存在意義」であります。それに対して「目標」は目的に至る通過点や、目的の達成度合いを表す評価だと言えます。
病院の「目的」は患者や地域社会の健康を最大化することであり、かつ職員を活かし、幸せにすることにあります。すなわち地域住民に対して質の高い医療を提供し、評価してもらうことで社会に貢献することであり、社会の一員である病院も職員を活かし幸せにする義務があると思っています。
必然的に職員を含めて病院が社会に約束している事を守ることにより、地域社会において病院の存在意義がある事を自覚する必要があります。これらのことを行動で示し続けることにより、信用を得ることができ、はじめて存続することが許されます。

今回の不祥事は自己への戒めとして心に刻みたいと思います。


2017年 11月 13日 姫路赤十字病院 院長 佐藤 四三