院長徒然日記

院長徒然日記

No.204 1+1は3や4にもなる

 子供時代、アリの行列を眺めたことがあると思います。エサのある場所に向かい、そして巣に運び持ち帰る。数えきれないほどのアリが整然と行列をなして効率的な行動をしています。列を邪魔するように小石などを置いた経験もあるでしょう。アリは散り散りとなって乱れますが、暫くすると整然とした列が回復します。研究によると全体に号令をかけるグループのリーダーのようなものは存在しないそうです。アリの群れは、各個体が以下のたった2つを行なう事で、効率的な最短経路を群れ全体として見つけ出すといわれています。すなわち「1:自分が通るときにフェロモンという化学物質を道に落とす 2:仲間のフェロモンが残っている所を通ろうとする」の2つで全体を統制することが出来ます。

 隊列を組んで飛ぶ鳥や魚の大群の行動もリーダーがいなくても同様な理屈で統率ができていると考えられています。このように昆虫、魚や鳥の群れに見られるような、個体間の局所的な簡単なやり取りを通じて、集団として知的な振る舞いを見せる現象は“群知能”と呼ばれています。自然界では相手に譲歩すれば時に命取りになりかねない行動をするのは、自分を含めた群れ全体の効率を上げるため社会のルールが自然に生まれたとみなせます。

 数年前に日本体育大学の一糸乱れぬ集団行動の動画がテレビで放映されたことを思い出します。数十人の部員が複雑に交差する行進をお互いが衝突することなく整然と行う姿に驚嘆したことを覚えています。一人ひとりが基本的なルールを覚えることにより、号令をかけるリーダーがいなくても隊列は見事に動いていました。ところが、号令を伴う方式に変えると覚えるのが大変であったとのコメントも付け加えられていました。

 ここからはわたしなりの考えです。いくらでもご批判は受けます。人には群知能なるものをそもそも備えており、個人として全体像はつかめていないが、それぞれの行動は社会全体にとっては実に合理的な行動をしているのではないか。号令がなくとも個々にとって部分最適であっても、俯瞰すれば全体最適な行動に結びついているのではないか。人と人が相対するのではなく、お互いが譲歩しあいながら合理的な行動に結び付ける、このような能力を人はそもそも備えていると考えます。

 大きな組織では改善活動を常に行っています。中でも現場で問題点を見つけ改善する、いわゆるボトムアップによる改革は長い時間軸で考えると、本当の意味での改善に繋がる要素を備えているといえます。
 1+1は2ではなく、3にも4にもなる所以です。

2021年 1月 26日 姫路赤十字病院 院長 佐藤 四三