院長徒然日記

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No.174 がんゲノム医療の取り組み

日本赤十字医学会総会が先日広島市で開催され、「日赤病院が目指すがん医療とは」のセッションでがんゲノム医療の取り組みについての題目で当院副院長が口演をしてくれました。がんゲノム医療は始まったばかりで、わたしなりに理解していることについて述べたいと思います。

いま国内では毎年100万人が新たにがんと診断されています。2人に1人が生涯に1度はがんと言われる時代になっています。そんな中今までとは異なった側面からとらえた治療法が今年6月に公的医療保険の適応になりました。それががんゲノム医療です。患者のがん細胞を分析し、100種類以上の遺伝子の変異を一挙に調べ、一人一人のがん細胞の遺伝子変異に応じて適切な薬を探す個別化治療の一つになります。がん患者にとって新たな選択肢が加わり、大きな力を得ることになります。
しかしまだ始まったばかりで問題点も多々あることも事実です。詳細は省きますが、いくつかの課題について触れたいと思います。医療保険の適応となったのはがん遺伝子パネル検査であり、これに合う薬があるかどうかを調べる検査です。検査の結果遺伝子変異があり、期待できる薬がある場合はすでに保険適応のある薬があればこれにより治療を、そして臨床試験があればこれを受けることになります。しかし期待できる薬がない場合とか、遺伝子変異がない場合にはその他の治療を選択することになります。すなわちすべての患者に期待できる薬が見つかるわけではありません。また遺伝子パネル検査を誰でも受けられるわけではなく、標準治療がない、標準治療を終了したがん患者で新たな薬物療法を希望される方に限られるといった条件も加わります。

今まで述べたことは患者側の条件を主に反映しますが、これ以外に治療を行う施設の問題もあります。がんゲノム医療中核拠点病院、がんゲノム医療拠点病院、そしてがんゲノム医療連携病院の施設に限定されています。どこの病院でも受けられるのではありません。わたしたちの病院は多くの患者に恩恵を届けたい想いで、施設の充実を図りがんゲノム医療連携病院に指定を受けることができました。これらの施設は様々な人材、機能を揃え、組織を作る必要があります。どの施設も始まったばかりでそれぞれの施設では施行錯誤しながらがんゲノム医療の取り組みを図っております。わたしたちの病院の現状は、取り組みを始めて1年余り、関係職員が研修、勉強会などを積み重ねながらどうにか形を作ることができました。今後経験を積み、研鑽を重ねて組織を充実させ、地域住民により良い医療を提供できればと院長はじめ全職員が願っています。

2019年 10月 22日 姫路赤十字病院 院長 佐藤 四三