院長徒然日記

院長徒然日記

No.105 今だからこそ羅針盤

鵺(ぬえ)は日本で伝承される妖怪あるいは物の怪ですが、暗闇で鳴く鳥とされ、この鳥の寂しげな鳴き声は、平安時代頃は不吉なものとされ、得体のしれないものとして恐れられていました。
トランプ現象のようにアメリカ・ファーストの考え方、フランス大統領選挙の姿を見ると、グローバリズムの行き詰まりがあるのか、将来の方向性が見えず、混沌としており、なんとなく不安な気持ちになります。政治だけでなく、一般の日常生活の中でも同じく不安に包まれているのではと考えるのは私だけではないと思います。
現代は先行きの見通しがなく、まさに鵺がはびこっている状態ではと考えます。今の人々の行動を観察すると、成長欲求を求めるのではなく、退行欲求を求める傾向があり、人との間に壁を作る傾向になっているのではと心配しています。物事を長期的に考えるのではなく、内向きになり短期的な利益を求める傾向にあるのではと危惧されます。
グローバル化に歪みが生じ、格差をつくり、勝ち組、負け組が形成されそこに分断が生じてしまったと人々は考えるようになり、異質なものを排除し、壁をつくり内向きとなってしまったのではと思われます。この状態は決して良い状態ではありません。羅針盤が無くなってしまい、鵺がはびこっています。

15世紀、大航海時代が始まりましたが、羅針盤は大きな役割を果たしていました。星座と並んで羅針盤はなくてはならない道具でありました。大海原に出て目標とするものがほとんどなく、どの方向に進むべきかの拠り所としてその存在感は大きかったであろうと想像します(航海術は全く知りませんので“羅針盤”の言葉から勝手に想像しているだけです)。

医療は住民にとって重要なものです。その一翼を担っているのが私たち医療施設です。医療は少子高齢社会に対応すべく変化が求められ、いま病院は大変な変革期に立たされています。ややもすると方向性を見失いやすい状態におかれています。どのように進むべきかはっきりとした道筋は明らかではありません。単純な道ではありませんが、理念を追求する成長欲求を求め、方向性をしっかりと構え、羅針盤をしっかりと操る事が当面の私の役割と考えています。

2017年 4月 25日 姫路赤十字病院 院長 佐藤 四三